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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆20日のトランプ就任式に耳目が集まる◆

NYダウ <日足> 「株探」多機能チャートより

〇対米投資ニュース相次ぐ、トランプ就任演説に関心〇

NYダウはまたしても2万ドルの壁(6日ザラ場高値1万9999.63ドル)に跳ね返されたが、トランプ相場の行き過ぎ警戒が交錯するのは致し方ない。正式就任前にも拘わらず、この週末もトヨタ批判、台湾攻防と波紋は広がってきており、20日の就任演説で何を喋るのか、その後の施策取り組みスピードに関心を高める流れが続こう。

日本企業の対米投資拡大のニュースが相次いでいる。トヨタが5年で100億ドル、武田が54億ドルでアリアド・ファーマシューティカルズ買収、三菱ケミカルが炭素繊維工場買収(数十億円規模)、三菱UFJが「世界のボンドハウス」目指し米債券業務の強化へ2チーム新設など。リーマン危機後の09年、麻生内閣時に「日米産業連携」として対米投資が活発化した時(当時はトヨタの安全バッシング、超円高などで後退)以来の活況が見込まれる。

時期的に「トランプ迎合」と受け取られかねないが、欧州情勢の不透明、中国リスク、安定軌道を確かめたい東南アジア・インドなどを考えると、海外投資の主軸は北米に向かうと見られただけに違和感は無い。「海外比率40%時代」(12/13付虎視眈々参照)から「50%時代」に向かって動き始めたと受け止められる。短期的には為替変動に揺れるが、日本製造業の「着実拡大志向の海外展開」は中長期投資の評価ポイントとなろう(ただし、古くは藤沢薬品(現アステラス製薬)のライフォメッド、最近では東芝のウェスチングハウスなど、投資失敗は個別に出る点に注意)。

週末の米雇用統計でやや持ち直したが、ドル円は115円台で戻って来たことが、連休明けの日本株の重石になろう。IMM通貨先物建玉が3日時点で8万6764枚の円ショート(前週は8万7009枚の円ショートで増加ピッチが止まった)。売り買い交錯場面に移行していることが背景。また、8日のメイ英首相インタビューで「移民流入抑制で欧州単一市場アクセス断念も」と報じられ、英ポンドが急落したこと、米石油掘削リグ稼働基数が529基、2年ぶりに前年水準を上回り、イラクが減産合意を守らないとの懸念で原油相場が5週間ぶりの大幅安(WTIは2.03ドル安の51.96ドル/バレル)となったことが影響したと考えられる。

6日の日経平均は66.36円安。うち110.12円の下落要因となったのは12月月次販売が不振だったファーストリテイリング株で、ホンダ5.22円安、トヨタ4.67円安が続いた。先物主導相場なので致し方ないが、12月12日の19000円乗せ以来、17営業日間、19000円台の値固めの動きにある。一時的に大台割れがあっても、19000~20500円ゾーンの揉み合い圏にあるとの見方を継続する。ただし、台湾問題を中心に米中関係が緊迫、日本が合意を守らない韓国への制裁的動きに出たことで朝鮮半島情勢に不透明感が増しており、ザラ場中の突発的なニュースに注意が要る(8日、ペルシャ湾で米艦艇が急接近のイラン革命防衛隊の高速艇に警告射撃を行った。同様のリスクは東・南シナ海、北朝鮮のミサイル発射で起こり得る)。

なお、トランプ氏の「米国第一」策は、セットメーカー向けに行われている。このまま企業の投資表明が相次げば、早晩、部品・資材の輸入急増懸念に転化する。トランプ氏が部品メーカーや素材メーカににまで言及するか、メキシコ以外に批判の矛先を広げるか、が注目点となろう。メキシコではペソ暴落によるインフレ高進の動きで略奪暴動まで起こっており、不安定化しているが、日本企業はメキシコ生産分を米国以外に向ける潜在力は十分あると考えられる。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/1/10号)

《WA》

 提供:フィスコ

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