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【経済】NYの視点:ECBはさらなる資金供給へ、出口政策からほど遠い


欧州中央銀行(ECB)は定例理事会で主要金利(0.00%)、預金金利(?0.4%)、限界貸出金利(+0.25%)をそれぞれ現行で据え置くことを決定した。また、注目となっていた資産購入プログラムに関しては、現行2017年3月から 2017年12月まで9か月間延長する一方で、規模は4月から現行の各月800億ユーロから600億ユーロに減額することを発表。同時に、必要に応じて買い入れ規模や期間を拡大する方針を示し、QEプログラムに柔軟性を持たせた。

また、購入の対象となる債券の条件も緩和した。ECBは今まで、利回りが中銀預金金利(?0.4%)を上回る債券を購入対象としていたが、この水準を下回る債券の購入も可能とする。ドラギ総裁が会見で明らかにした。ただ、「必ずしも購入するわけではない」とし、あくまでも選択肢を広げただけであることを強調した。しかし、債券が不足するため、テーパリングに動くとの思惑を後退させ、好感材料となる。

市場では資産購入規模の縮小で、ECBが出口戦略も視野に入れたとの思惑が一時強まった。しかし、ドラギ総裁は会見で2019年のインフレ見通しが目標水準に達せず、刺激策を終了するには程遠いと警告。新たに発表されたインフレ見通しで、2019年のインフレ率見通しが1.7%にとどまり、2.0%を下回った。域内経済の成長リスクも依然下方に傾斜していると言及。資産購入額をゼロにしていく潜在的なテーパリングは選択肢にはなく、協議もしなかったと市場の思惑を否定した。今会合のメッセージは、「QEはある意味無期限、無制限」で、「ECBが更なる資金をより長期にわたり供給していくことだ」とした。政治的な不透明性や各国政府の改革が不十分であることなどから、2.3兆ユーロ規模の資産購入計画でも十分でない可能性があるとした。

市場はQEで、4月以降も現行と同じく各月800億ユーロ規模の購入で6か月間延長することを想定していた。合計では4800億ユーロの追加。これに対し、ECBが決定した600億ユーロ規模の資産購入を9ヶ月間延長することで、新たに5400億ユーロの資金を市場に供給することになる。自動的に来年予定されているドイツやフランスなど欧州主要国の総選挙を乗り切る公算。結果的には市場の予想以上の規模の緩和策の供給となる。

一部市場関係者はECBの利上げは2019年以降になると見ている。ユーロ・ドルが1.00ドルに達する可能性は残る。


■ドラギECB総裁会見のキーポイント

*インフレ見通し
「2019年インフレ見通し1.7%で、2.0%を下回る、目標達成水準ではない」
「持続的にECBの支援が長期にわたり存続することが本日のメッセージに」

*政治的な不透明性
9ヶ月間のQE延長で自動的に来年予定されているドイツやフランスなど欧州主要国の総選挙を乗り切る公算。

*各国政府の改革が不十分

*テーパリング
「市場が理解しているテーパリングではない、資産購入をゼロにすることは選択肢にない」「協議もしていない」
「QEはある意味無期限」

*イタリア金融システム
「イタリア政府が対処すると信頼」

*資産購入の条件変更
「預金金利(?0.4%)以下の資産購入は必ずしも実施するわけではない、ただ、オプションに」

*域内成長リスク
「ユーロ圏の成長リスクは依然下方に傾斜」

《NO》

 提供:フィスコ

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