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【特集】極洋 Research Memo(4):2017年3月期第2四半期は増益で着地

極洋 <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

(1) 2017年3月期第2四半期累計の業績

●損益状況
極洋<1301>の2017年3月期第2四半期累計(2016年4月?2016年9月)は売上高で109,570百万円(前年同期比1.0%増)、営業利益で1,171百万円(同4.0%増)、経常利益で1,004百万円(同28.6%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益で1,186百万円(同30.3%増)となり、期初の予想を若干下回る結果となった。セグメント別の売上高は、冷凍食品及び冷蔵運搬船事業からの撤退を決定した物流サービスが減収となったが、それ以外は増収を確保した。営業利益は前年同期比で増益となった。

しかし経常利益は前年同期比で減益となったが、これは主に前年同期に営業外収益として計上した貸倒引当金の戻入額(271百万円)がなくなったことに加え、為替差損(242百万円)が発生したためである。一方で特別利益として固定資産(主に冷蔵運搬船)処分益608百万円を計上したことから親会社株主に帰属する四半期純利益は大幅増益となった。

各部門別の状況は以下のようであった。

a)水産商事事業
水産商事事業の業績は、セグメント別売上高で53,377百万円(前年同期比4.8%増)、営業利益で1,183百万円(同34.7%増)となった。鮭鱒の市況が堅調に推移したことに加え、赤魚やカラスガレイなどの凍魚加工品や定塩サケ製品、むきエビなど付加価値製品の販売が伸長した。さらにアメリカ国内の販売も順調に推移したことからセグメント売上高は増収となり、特別のコストアップ要因もなかったことから利益も増加した。

b)冷凍食品事業
冷凍食品事業の業績は、セグメント別売上高で32,364百万円(前年同期比3.7%減)、営業利益で165百万円(前年同期は50百万円の損失)となり、減収ながら増益を確保した。生食商品(寿司種商品が中心)は全体的には引き続き好調であったがホタテは約500百万円の減収となった。さらに2013年7月に発売した業務用商品「だんどり上手」シリーズが事業所給食向け及び高齢者施設向けに順調に伸びたものの、タイでの工場取引が減少したことなどからセグメント売上高は減収となった。しかし利益面では、前期に足を引っ張った海外工場(タイ)の収益性が改善したこと、刺身類や加熱用製品のマージンが改善したことなどからセグメント利益は増益となった。また2014年1月に参入した家庭用冷凍食品は、まだ売上規模は小さいものの、販売はイトーヨーカ堂、イオンなどの大手量販店も含めて順調に伸びている。

c)常温食品事業
常温食品事業の業績は、セグメント別売上高で9,216百万円(前年同期比0.1%増)、営業利益で195百万円(同5.9%減)と増収を確保したものの減益となった。サバやイワシなどの水産缶詰が順調に拡大したことに加え、珍味類も大手コンビニ向け製品を中心に順調に推移したことから増収を確保したが、珍味原料のイカの価格が高騰し利益を圧迫し、前年同期比では減益となった。

d)物流サービス事業
物流サービス事業の業績は、セグメント別売上高で1,113百万円(前年同期比28.0%減)、営業利益で16百万円(同88.6%減)となった。

冷蔵倉庫事業では、入庫貨物の確保を図り営業力を強化したことに加え、2014年末に稼動を開始した城南島事業所がその後も順調に稼動していることなどから好調に推移した。しかし一方で冷蔵運搬船事業は、海運市況の低迷により採算は一段と悪化したことから事業の見直しを行い、運航する3隻すべてを売却して事業からの徹退を決定した。この結果、セグメント全体では大幅な減収・減益となった。

e)鰹・鮪事業
鰹・鮪事業の業績は、セグメント別売上高で13,317百万円(前年同期比2.7%増)、営業利益で100百万円(同57.3%減)と増収減益となった。

海外まき網事業では、水揚重量は17千トンと前年同期比横ばいであったが、魚価(平均単価)が191円/kg(同+11円/kg)と回復したことから、水揚金額は32億円(同2億円増)となった。ただし利益面では、パプアニューギニアでの合弁事業の解消による利益減や養殖事業での稚魚の斃死による減耗損の発生などから、前年同期比で大幅な減益となった。

養殖事業は上半期に苦戦しているが、引き続き種苗の新規仕入れルートの開拓及び歩留まりの維持向上を図っている。完全養殖クロマグロの出荷量拡大に向けて沖出し尾数は順調に増加しており、中長期的には今後の展開が期待できる分野である。

●財政状況
2017年3月期第2四半期末の財政状況は以下のようになった。流動資産は82,275百万円(前期末比11,848百万円増)となったが、主に増収に伴い受取手形及び売掛金が5,542百万円増、年末商戦に向けて棚卸資産が7,497百万円増となったことが要因である。一方で、固定資産は24,278百万円(同97百万円増)とほぼ横ばいとなった。この結果、総資産は106,554百万円(同11,945百万円増)となった。

負債合計は82,953百万円(同11,410百万円増)となったが、主に支払手形及び買掛金の増加2,435百万円、短期借入金の増加9,029百万円による。純資産は、主に利益剰余金の増加661百万円等により、23,600百万円(同535百万円増)となった。この結果、自己資本比率は21.8%(前期末比2.1ポイント減)となった。

●キャッシュ・フローの状況
2017年3月期第2四半期のキャッシュ・フローは以下のようになった。営業活動によるキャッシュ・フローは8,171百万円の支出(前年同期は8,983百万円の支出)となった。主な収入は税金等調整前四半期純利益1,597百万円、減価償却費902百万円、仕入債務の増加2,848百万円、主な支出は売上債権の増加5,930百万円、棚卸資産の増加7,785百万円などであった。在庫管理を重要な課題として掲げているが、棚卸資産の増加は前年同期の9,240百万円よりは改善している。

投資活動によるキャッシュ・フローは43百万円の支出(同1,776百万円の支出)となった。塩釜工場への投資が一段落したことから少額の支出となった。

財務活動によるキャッシュ・フローは8,244百万円の収入(同10,552百万円の収入)となった。主な増減要因としては長期・短期借入金の増加による収入9,216百万円、配当金の支払による支出525百万円などである。

この結果、現金及び現金同等物は前期末に比べて86百万円減少し、期末の同残高は3,944百万円となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《FA》

 提供:フィスコ

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