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【市況】中村潤一の相場スクランブル 「ZMPフィーバーとメガバンク祭り」

株経ONLINE 副編集長 中村潤一

株経ONLINE 副編集長 中村潤一

●トランプ・リスクからトランプ・ラリーへ

 ドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利も、その後の相場上昇も自分が頭に思い描いていたイメージとはまさに真逆の方向に進み、これについては我が不明を恥じるほかありません。事前調査で支持率的には“いい勝負”ではありましたが、実際に蓋を開ければ、黒人層やヒスパニック層、そして女性層などトランプ氏には投票しないという人が多く、安全な距離を保ってヒラリー・クリントン氏が逃げ切ると、確信に近いものを持っていました。

 トランプ氏の強烈な個性は、絶対に票を投じないという人を作る一方、直接討論で下手を打とうが、品性を欠こうが、彼に投票するというコアな支持層を作る。それは理解できますが、あの広大かつ懐が深いアメリカ合衆国の大局を支配することは到底考えづらい。ところが、そうではなかった。「隠れトランプ層」がどこにどれだけいたのか、未だに把握できませんが、「トランプ候補には投票しない層」をクリントン氏が自らの票に反映できなかったことが、番狂わせの本質だったように思います。

 いずれにしても米国の次期大統領トランプ氏を中心軸にして世界が回り始めました。その名刺代わりとなったのが日米株価の同時上昇。日本も米国もともに上値の因縁場をここぞと取り払って株高本番へと突入、銘柄の物色人気の盛り上がり方にもかつてない勢いがあり、「トランプ・リスク」が「トランプ効果」に変わり、さらに活況を呈して「トランプ・ラリー」へと発展している状況にあります。二重の驚きであり、つくづく相場の難しさを見せつけられた気がします。

●潮流が発生した相場は強い

 東京株式市場は日経平均で1万8000円が目前、ここを通過点とする勢いです。外国為替市場ではドル円相場で1ドル=110円という大きなフシ突破が見えています。今の上昇波動は為替の急激な円安進行と合わせて、リスクを取る動きがオーバーシュートしている印象は否めません。早晩、行き過ぎた振り子が戻る瞬間が訪れるはずです。しかし、もう少し長い目で見れば一度回転し始めた重い歯車は止まらない。株式市場にとって最大の上昇エネルギーは“変化”であって、それが仮に中長期的には好ましくない方向に向いていても、刹那的には理屈をつけずに目の前の流れに乗っておくのが正解となるケースが多いようです。

 1年を通じて大半は波の上下動に揺られる往来相場ですが、時に潮流が発生する場面に遭遇します。足もとは潮の流れに乗る“大きな株式投資”を実践する機会が訪れていると理解するべきでしょう。トランプ氏の大統領就任は来年1月20日。ハネムーン100日間まで“理想買い期間”に入れていいかどうかは微妙ですが、当面は「押さば買い」のスタンスで対処。少なくとも就任前に歯車がストップすることはない、と判断できるかどうかが投資戦略としての分かれ目です。

●12月の相場テーマはロシアとZMP関連

 12月相場の展望を考えた場合、スケジュール的に重要視されるテーマはロシア関連とZMP <7316> 関連でしょう。

 まず、 ロシア関連では、12月15日にロシアのプーチン大統領が来日し、安倍首相の地元である山口県で首脳会談を行う予定にあります。暗礁に乗り上げていた北方領土問題の進展に加え、日ロ間の経済協力を巡っての協議進捗が期待され、関連銘柄は本来であればもうひと相場が期待されるところ。ただ、トランプ氏が作り出した潮目の変化は日ロ間交渉にとってはネガティブ。米ロ間のパワーバランスを調整する要衝としての日本の価値が、漸減傾向にある現状では深追いしにくいテーマとなっています。リンコーコーポレーション <9355> [東証2]、東海運 <9380> 、川上塗料 <4616> [東証2]などの小型材料株については個別に値運びが軽いものの、総合商社やプラント関連は風向きの悪さが意識されそうです。

 一方、ロボットベンチャーで自動運転技術の草分けであるZMPが、12月19日に東証マザーズに上場することが決まりました。今年のIPOの目玉のひとつとして2月上場説も流れていたぐらいですから、満を持しての登場という形になります。期待先行で待たされた分、蓄積されたシコリ玉もあり、関連銘柄には既に反動売りの洗礼を浴びている銘柄も散見されます。ただ、 自動運転というテーマ自体はアベノミクスが掲げる「インダストリー4.0(第4次産業革命)」の中軸を担うテーマのひとつであり、決して色褪せることはありません。ZMPフィーバーは“静かなる熱狂”で幕を開けそうですが、上場が新たなスタート地点となって、自動運転分野が再度テーマ性を強める可能性は十分にあると思います。

●明暗を分けた関連企業の株価

 ZMP関連では同社に出資している企業の含み益が一つの買い材料とみられていました。特に自動運転分野での技術力融合に期待して、資本・業務提携する企業へのマーケットの関心は高いようです。出資企業として注目されるのはソニー <6758> 、コマツ <6301> が有名ですが、それ以外にジャフコ <8595> 、ドリームインキュベータ <4310> 、JVCケンウッド <6632> 、マクニカ・富士エレホールディングス <3132> 、ディー・エヌ・エー <2432> 、フューチャーベンチャーキャピタル <8462> [JQ]、テクノスジャパン <3666> 、加賀電子 <8154> などがあります。

 これらの銘柄の株価はZMPの上場が決まった直後の15日も、銘柄によって人気化するもの、売られるものが錯綜しました。単純に考えれば保有株比率の高い企業ほど評価の対象となるのが道理ですが、それ以外にも、株価位置や株式需給関係との兼ね合いで明暗を分けています。

●出資企業ではなくビジネスパートナーで本命探し

 上記銘柄のなかでZMPの株式保有比率が一番高いのはファンド合算で約10%を握るジャフコですが、株価は高値圏にあり利益確定売りにさらされました。また、傘下のファンドを通じてZMPへ投資しているフューチャーベンチャーキャピタルは、保有比率は正味2.9%ですが、15日はストップ高に買われる強烈人気となっています。逆に出資比率が1%以下だったドリームインキュベータがストップ安に売り叩かれるなど、偏った値動きがみられました。ただ、いずれにせよ、出資企業の含み益はZMP関連銘柄の急所とはいえません。株価上昇は自動運転分野でのビジネス連携に伴う成長期待が投影されたものが最強のシナリオです。

 その意味では、昨年来の自動運転関連のツートップ銘柄であるアイサンテクノロジー <4667> [JQ]とアートスパークホールディングス <3663> [東証2]のほか、コア <2359> 、ドーン <2303> [JQ]、ベリサーブ <3724> 、JIG-SAW <3914> [東証M]などは注目といえるでしょう。また、前述のZMPとロボットタクシーを合弁で展開するディー・エヌ・エーは中長期的にも展望が開けており、一線を画します。やや時間を要しても上場来高値更新から青空圏が見えてくると考えています。オールドカンパニーに属しますが、自動運転分野を深耕するパイオニア <6773> やクラリオン <6796> などの見直し人気も予想されるところです。

●メガバンクの恐るべき戻り足も割安修正の途上

 目先の株式市場では、何よりも メガバンクの大相場が光り輝いています。株価の上昇はもとより商いも高水準。三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> 、三井住友フィナンシャルグループ <8316> 、みずほフィナンシャルグループ <8411> の3銘柄が連日で東証1部上場企業の売買代金上位3傑を独占するという状況で、輝くというよりは地響きを上げて突き進むという感じです。ただ、これは今まで異常な安値圏にあった反動。例えば三菱UFJのPERは10倍前後、PBRはわずかに0.6倍に過ぎません。バリュエーション面で考えれば、まだ水準訂正の5合目という見方もでき、さらなる上値余地が期待できるとみています。

(11月16日記、隔週水曜日掲載)

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