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【特集】「トランプノミクス相場」が始まった(下)日経平均3万円シナリオの一方で… <株探トップ特集>

ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより

―背中合わせの「暴落」と「暴騰」、ポピュリズム的経済政策の行方は―

※前回から続く

 今月8日の米大統領選で勝利したドナルド・トランプ氏に対しては「アメリカ第一主義」を唱える孤立主義などが警戒され、その勝利を危ぶむ声が多数派だった。しかし選挙後は、経済成長策を評価しNYダウ平均は連日の最高値更新に沸いている。一部には、1980年代の「レーガノミクス」による株高を連想する声もある。ただ、新政権の陣容や具体的な政策は明らかになっていない。市場からは「トランプ政権の行方次第で日経平均株価は3万円にも1万円にもなる」と“激動の時代”を予想する声が挙がる。

●1ドル=109円台に急伸、「株の時代」到来に期待も

 トランプ氏の米大統領選勝利後、NYダウは4日連続で最高値を更新。ドルは1ドル=109円台に急上昇している。長期金利は14日に一時11ヵ月ぶりの2.3%に上昇。市場には「10年強にわたった債券市場の強気相場は終了した」との見方もあり、インフレヘッジに向けた「株の時代が到来する」との観測もある。

 もともとトランプ氏は米国の製造業保護に向けて、ドル安と低金利政策をとると見られていた。しかし、足もとではドル高・金利上昇が進んでいるが、新政権の金融政策はどう見ればいいのか。「トランプ氏はあまり為替には関心がないのかもしれない」と上田ハーローの山内俊哉取締役はいう。「米国景気が拡大し株価が上昇すれば、ドル高でもドル安でもどちらでもいいようにみえる」とし、為替政策もポピュリズム(大衆迎合主義)的とみている。

 また、トランプ氏がイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長に対して「任期(18年2月)いっぱいでクビにする」と発言したことが懸念されているが「イエレン議長が民主党員であることが気に食わなかったのだろう」(市場関係者)との見方もあり、FRB議長の人事は優先事項ではないとの声もある。

●視点は「不動産屋」、規制緩和で金融業界には追い風

 もっとも、「トランプ氏は低金利政策を志向しているだろう」と第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストはいう。「不動産王」と呼ばれたトランプ氏は「考え方の基本は不動産をベースにしているはず。不動産業界は有利子負債が大きい企業が多く、金利上昇は喜ばないだろう」と同氏は指摘する。トランプ氏にとっては「不動産業界に良いことはアメリカに良いこと」との発想に立つというわけだ。

 さらに、規制緩和が促進される見通しであり金融業界に関しては「金融規制改革法(ドッド・フランク法)」の撤廃あるいは見直しが有力視されている。この期待を背景に、日本のメガバンクでは傘下にカリフォルニアの「ユニオン・バンク」を抱える三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> など銀行株が急上昇している。

●移民規制や自由貿易協定見直しに警戒感、IT企業や自動車には逆風も

 しかし、インフラに絡む建機鉄鋼株などオールドエコノミー株が急伸する一方、株価がさえないのがアマゾン・ドット・コムやアップル、フェイスブックといったIT関連株だ。米国のIT業界にはインドや中国からの移民が多く在籍し、トランプ氏の移民規制策は逆風との見方がある。また、アマゾンは傘下に米有力紙「ワシントン・ポスト」を持ち同紙がトランプ批判を展開したことや、アップルはiPhoneのセキュリティー解除で米連邦捜査局(FBI)からの要請を拒否したことなどから、両社のトランプ氏との関係は良くない。

 環太平洋経済連携協定(TPP)からの撤退や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を掲げていることも不安材料だ。特に、カナダとメキシコとの間でNAFTAを再交渉し、メキシコから米国への輸出の条件が依然に比べ悪化した場合、日本の自動車メーカーへの影響も小さくない。例えば、マツダ <7261> はメキシコに工場を持つが、アメリカには生産拠点を持たないことが懸念視されている。

 また、トランプ氏は中国を為替操作国に認定し中国製品の輸入関税を45%に引き上げることを主張している。同氏は、アップルがアメリカではなく中国でiPhoneを大量生産していることも批判している。「トランプ氏は米国が貿易で赤字を記録している国に対して強く出ようとしている。その駆け引きに向け、最初は大きな要求を掲げている」と第一生命経済研究所の桂畑氏はいう。しかし、NAFTAは米国企業にもメリットがあり、中国への関税引き上げは米国にも物価上昇要因となり不利益になりかねない。自由貿易の長所を軽視し、保護貿易主義を強めれば、新政権に対する金融市場からの評価は急速に悪化しそうだ。

●買い戻しで来年1月までに2万円乗せも、暴騰と暴落が背中合わせに

 なかでも、懸念材料視されているのが財政赤字の拡大だ。財政出動や減税の穴埋めには、「経済成長の加速による税収増」や「税金の抜け穴をふさぐこと」などが挙げられるが、これでは足らず「海外在留米軍の駐留費負担増」が挙げられている。この米軍の駐留費問題は、例えば日本にとっては中国の勢力拡張問題とも関係してくることとなり、その交渉次第では世界的な地政学リスクを招きかねない。米金利上昇とともに一部新興国からは資金流出懸念が浮上、インドネシアやブラジル株は下落している。

 では、今後のマーケット動向はどう予想できるのか。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は「足もとの株高は、状況変化を受けた売り方の買い戻しが主力だ」という。ただ、この買い戻しだけでも「新政権が発足する来年1月頃までに日経平均は2万1000円前後まで上昇するだろう」と予想する。その後は「トランプ政権発足後の政策次第。財政拡張政策がうまくいけば、日経平均は3万円も期待できるが、財政拡大に伴うインフレが抑えられない状態となれば1万円への急落もあり得る」とみる。暴騰と暴落が背中合わせの「トランプノミクス」相場の幕は切って落とされた。

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