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【特集】小川英幸氏【どこまで続く“トランプ相場”、世界株高の行方】(2) <相場観特集>

小川英幸氏(光世証券 本店コンサルティンググループ 課長代理)

―「勝ち馬に乗れ」、陶酔の上げ相場とマーケットの鉄則―

 11月8日の米大統領選では市場の予想を大きく覆しドナルド・トランプ氏が勝利を収めた。その後、米国株や日本株をはじめ世界株市場は総じて大幅上昇する展開となったほか、為替市場でもドル高・円安が一気に加速する展開となったことは、二重の驚きとなった。“勝ち馬に乗れ”というのはマーケットの鉄則ながら、今後もこの陶酔状態の上げ相場が続くかどうかは未知数だ。株式市場の見通しに定評のある識者3人に今後の相場展開を聞いた。

●「米国の財政政策で世界の成長率が上昇」

小川英幸氏(光世証券 本店コンサルティンググループ 課長代理)

 米大統領選挙で新大統領がトランプ氏に決定し、相場の流れに変化が表れている。共和党が議会でも多数を占めているため、実行力のある政権となると見られ、また、心配されていた共和党との不協和音も、大統領補佐官に共和党全国委員長のプリーバス氏が起用されたため、不安視し過ぎる必要はないだろう。

 トランプ氏の政策で最も注目されるのはインフラ投資=財政政策だ。これまで世界は金融緩和のみに頼り低成長となっていたが、米国が財政政策を行う方向に向かうことにより、世界の成長率が上昇することが想定される。そして、原材料価格の上昇から、世界的にインフレ局面に突入するだろう。そしてそのインフレは、金融緩和政策が効かないと言われていた日本にも物価上昇をもたらす可能性もある。そして財政政策は自国通貨高を招くため、米ドル高による恩恵も日本企業は受けるだろう。

 近くある日本の注目イベントは12月15日に山口県で行われる日ロ首脳会談が挙げられる。ロシアとのつながりが強いトランプ氏が1月には大統領になることを考えると、日ロともに好都合な状況とも言え、さまざまな点で協力関係が構築できる可能性もあるため、会談前後は関連銘柄への物色が期待できる。

 不安材料は、トランプ政権が排外主義色を強めすぎることだ。もし資源の調達などを米国内で済ましてしまうようなことが宣言されれば、米国金利の上昇により不安定になっている新興国経済が立ち行かなくなり、世界的な不況に陥るかもしれない。一方、そのテール・リスクが起こりさえしなければ、現在進行中のAIなどによる技術革新とともに、世界の成長率が高まる局面に入ると考えている。

(聞き手・加藤智)

<プロフィール>(おがわ・ひでゆき)
1977年滋賀県生まれ、2000年滋賀大学経済学部卒。光世証券入社後、先物オプションや現物の自己売買部門を経て、2015年12月からコンサルティンググループに所属。

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