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2016年11月14日18時00分

【特集】「ドイツ銀問題の真相は?」マネックス証券・大槻奈那チーフ・アナリストに聞く!<直撃Q&A>

 世界の金融マーケットでドイツ銀行への関心が高まっている。近年、同行の経営に対する不安がくすぶるなか、米国司法当局が米住宅ローン担保証券(MBS)の不正販売に対して140億ドル(約1.4兆円)もの制裁金の支払いを請求したことを受け、同行への懸念がさらに強まっている。「ドイツ最大の銀行」であるドイツ銀行の今後の展開はどう予想できるのか。マネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストに聞いた。

Q1 欧州の有力銀行として知られるドイツ銀への懸念が高まっています。同行の何が問題となっているのでしょうか?

大槻 米国の司法当局から140億ドの制裁金が請求される可能性があることが懸念されています。これは54億ドル前後(約5700億円)に抑えられるとの報道もありますが、まだ確定していません。たとえ金額が抑制されても他の訴訟を抱えている可能性もあり、不透明感が残ります。

 第3四半期の当期利益は黒字転換しました。しかし、決算の中身をみると債券のトレード益で稼いでおり、コア利益の減少は止まっていません。市場では、懸念はやや後退したとの見方もありますが、状況はほとんど変わっていないと思います。また、同行が発行したCoCo債(偶発転換社債)のクーポンの支払いへの懸念が出ています。次の大口の支払いは来年4月に予定されており、12月期の決算が発表される来年1月末頃にその内容が注目されそうです。また、11月末に英国の銀行のストレステストがあり、欧州の銀行をみるうえで関心を集めそうです。

Q2 ドイツ銀は、かつて「欧州最強の銀行」と呼ばれていました。どうして、経営が懸念される状況になったのですか?

大槻 もともとドイツは銀行の数が多く、日本を上回る過当競争の状態にあります。ドイツ銀は、ドイツの有力企業を融資先に持っていました。しかし、その有力企業は優良だった分、直接金融での調達が可能であり銀行離れが進みました。一方、ドイツ銀は80年代以降、海外展開を進めましたが、管理が行き届かなかったのか、法務関係費用が急激に膨らんでいます。欧州の銀行はマイナス金利でコアの収益が上がらなくなっています。収益力と財務力が問題と言えそうです。

Q3 ドイツ銀の状況は、どの程度深刻なのでしょうか?

大槻 ドイツ銀が破綻するとか危機的状況にあるというわけではないと思います。法務関連費用が日本円で1.4兆円前後の水準となったとしても、他の大手行に比べ相対的に低い資本比率が一段と低位となりますが、危機というほどではないと思います。08年のリーマンブラザーズの破綻時とは状況は異なりますし、不良債権問題に苦しんだ90年代の日本の大手銀行とも違います。もっとも、デリバティブなどを含め同行に対する不透明感はありますし、株価面などでの世界への影響という点では90年代の日本の銀行より大きいとも言えます。

Q4 ドイツ銀の状況が悪化した場合、日本の銀行株への影響は予想されますか?

大槻 ドイツ銀がCoCo債のクーポン支払いを見送ったような際には同債や劣後債のマーケットに影響が出ることで、株価が動揺することは予想されます。銀行セクターはインターバンクで巨額の資金をやり取りしているほか、ある一行の調達コストの上昇は他行に波及することで、リスクが伝播しやすいという傾向があります。この点がメーカーなどと比べた際の銀行株の特徴とも言えます。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(おおつき・なな)
 東京大学文学部卒、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチなどの金融機関でリサーチ業務に従事。各種メディアで高い評価を得てきた。16年1月からマネックス証券執行役員、チーフ・アナリストとして国内外の金融市場や海外の株式市場などを分析する。現在、名古屋商科大学経済学部教授を兼務。東京都公金管理運用アドバイザリーボード委員。

出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)

最終更新日:2016年11月16日 14時21分

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