【特集】「日銀金融政策、今後の展開は?」アムンディ・ジャパン、吉野晶雄チーフエコノミストに聞く!<直撃Q&A>
吉野晶雄氏(アムンディ・ジャパン チーフエコノミスト)
Q1 日銀は金融政策の現状維持を決定しました
吉野 現状維持は予想通りであり、マーケットも非常に落ち着いた動きとなった。日銀は従来の「サプライズ型」から「事前調整型」ともいえる金融政策にスタンスを変更しており、これが相場の動きに表れたとも思う。ただ、同時に発表された展望レポートでは18年度の消費者物価指数(CPI)の上昇率の中央値を1.7%としている。7月時点の1.9%上昇より引き下げられたが、現状を考慮すれば非常に難しい数字のままだ。
Q2 9月の日銀会合では「量」から「金利」を目安にするなど新政策が導入されました。今後の日銀の政策はどう予想しますか?
吉野 今後の日銀の政策をみるうえでは、18年3月に訪れる黒田総裁の任期は無視できない。2期目をやっても問題ないが、慣例的には退任の可能性を意識せざるを得ない。展望レポートのCPI見通しが高めの水準に置かれていることも、黒田総裁が任期中に2%の物価上昇のメドをつけておきたい面があるようにみえる。こうしたなか、今後の日銀の金融政策は何事もなければ、現状のままの状態が続くこともあり得るとみている。
ユーロ圏の10月CPIは前年比0.5%上昇し、英国や米国のGDPも好調だ。追加金融緩和の時期が話題になるが、欧州も利下げの状況から脱してきている。市場で欧州中央銀行(ECB)のテーパリング(量的緩和の縮小)の観測が浮上するのも、この市場環境の変化が背景にある。世界的な情勢の変化のなか、日本も銀行の反対の多いマイナス金利の深掘りは考えにくい。また、10年債金利をゼロ%程度に操作する政策も生保の経営や年金の運用に悪影響が予想されるなか、積極的には手掛けにくい。量的緩和は国債の流通量などの点で買い入れは限界に近づいている。
Q3 世界の経済環境には変化がみえ、中央銀行の政策も変わるはずだと
吉野 世界全体の金利は持ち直してきており、追加金融緩和はやらなくてよい状況となっている。日本も景気が良くなった場合、国債の流通量の問題にも絡みテーパリングが議論となることもあり得る。その際は、欧州はいち早く実施しているだろうし、前向きなテーパリングとも受け止められるかもしれない。当面の為替相場は、あまり動かないとみている。米国は12月に利上げを行うだろうが、その次の利上げはしばらくないかもしれない。このため、若干の円高基調となることも予想される。
(聞き手・岡里英幸)
出所:株経ONLINE(株式会社みんかぶ)