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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆海外勢の需給、改善の動き◆


〇消えた「上旬の売り」〇

東証発表の投資主体別売買動向(現物と先物合計)で、海外投資家は10月第1週に7659億円、第2週に1774億円の各買い越しとなった。1,2週合計で8月は7115億円、9月は7901億円の各々売り越しだったことと比較して様変わりになりつつある(9月第4週が5306億円の売り越しだったので、前倒しされた可能性は残るが、スケールは小さくなっている)。

売り主体は明確でないが、やはりオイルマネーの影響が大きいと見られた。全体で1-9月累計6.2兆円規模の売り越しだが、どの位を占めたのかは不明。減少思惑の背景は、原油相場が持ち直してきたこと、サウジがソフトバンクとの10兆円ファンド設立や175億ドルの国債発行に踏み切ったこと、既に日本株を相当程度処分したと見られることなど。「財政の懐事情で毎月換金額を決め、上旬に売りが出易い」との見方に一巡感が広がることになった。

20日、ヘッジファンド・リサーチの発表によれば、7-9月に投資家はヘッジファンドから282億ドルの資金を引き揚げた(純流出額)。09年4-6月以降で最大規模、流出は4四半期連続、うち今年1-9月分での純流出額は515億ドルに達した。ブルームバーグによると、手数料の高さと低調なパフォーマンスを批判され、ケンタッキー、イリノイなど州年金基金の引き揚げが目立つと言う。懸念された年末に向けてのヘッジファンドの換金売りだが、相当程度前倒し的に進み、こちらにも一巡感が出ている可能性がある。

「上旬の売り」には、外資系のSQ絡みの売買があった可能性もある。14日時点の裁定買い残は7571億円。5週ぶりの小幅減(4億円)となったが、9月のメジャーSQ後も、一向に増えて来ない(ピーク時は3兆円規模)。米系金融機関の決算動向を見ても債券シフトが顕著で、「東京から外資系金融機関が資金を引き揚げた」ことにも一巡感が出ている可能性がある。

不透明な動きには中国もある。23日付日経新聞は、中国による日本国債購入が1-8月8.9兆円の買い越しになったと伝えた。米国の利上げを見越して米国債からシフトしているとの観測だが、円高狙いなのか、日銀買い入れによる利ザヤ稼ぎなのか、目的はハッキリしない。短期国債中心とされるので、残高が急増しているかどうかも不明だ。日本証券業協会の9月公社債投資家別売買動向で、外国人は2兆7674億円、27カ月連続買い越しとなったので、9月も継続している可能性がある。が、日銀の政策変更は安易な利ザヤ稼ぎを封じ込める目的もあると見られているので、10月以降は変化している可能性が注目される。これと連動して、数年前に話題となった日本株買いがどうなっているのか、既に相当程度処分してしまったのか、気になるところだ。なお、中国国家外為管理局(SAFE)は違法な資金流出を抑えるため、地下銀行活動の取り締まりに動き、外貨資金84.3億ドル相当を押収したと伝えられた。地下銀行は15兆円超の規模があると見られ、内外を移動している公算がある。

売り圧迫一巡で需給動向に落ち着きが出れば、今週から本格化する企業決算動向が反映され易い。第3四半期は、米主要500社が1.1%減益、欧州主要600社が12.9%減益の予想で、日本企業の動向が対比されよう。前年同期対比で大きく円高に振れているので減益はやむを得ないが、当面の為替安定も引き続き評価の条件となろう(18日時点のIMM通貨先物建玉の円ロングは3万6991枚まで減少)。


以上



出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/10/24号)

《WA》

 提供:フィスコ

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