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【特集】馬渕治好氏【ムード好転の東京市場、上値のメドは?】(1) <相場観特集>

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

―日経平均1ヵ月ぶり大台回復、今後の相場展開を聞く―

 11日の東京株式市場は、日経平均株価が終値で前週末比164円67銭高の1万7024円76銭と反発した。終値では9月7日以来約1ヵ月ぶりの1万7000円台回復。11月の米大統領選に向け、民主党のヒラリー・クリントン候補が優勢と伝えられたことや、原油価格上昇を追い風に、前日の米株式市場でダウ平均株価が大幅反発し、外国為替市場で1ドル=104円近辺へと円安・ドル高が進行したことが好感された。日経平均株価1万7000円台回復後の相場展開について第一線の市場関係者に聞いた。

●「11月上旬に向け下値を探る展開に」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 日経平均は1万7000円大台を回復し、テクニカル的にも意気の上がるところではあるが、実際ここからの一段の上値追いには困難が伴う。いったん日経平均は下値を探る展開に移行し、年末にかけて出直ってくる波動を予想する。

 大統領選はヒラリー・クリントン氏の優勢が伝わっているが、直近ではEU離脱の国民投票で、ブレグジットが世界にネガティブサプライズを与えたケースもあり油断はできない。大統領選当日の11月8日にかけて、積極的に買い上がっていくことにリスクを感じる投資家は多いと思われる。

 また、今の日本株上昇の原動力のひとつとなっているドル高・円安についても一筋縄ではいかないだろう。これから米財務省による半期に1度の為替報告書が(おそらくは10月中に)開示される。4月の時点では、日本、中国、韓国、台湾、ドイツを監視リストに指定していた。現在は、ドルがどの国の通貨に対しても強く、ドル高牽制論が強まる可能性があり、おのずと目先は円安に対する圧力がかかりそうだ。これもマイナス材料といえる。

 今月下旬から4~9月の企業決算発表が本格化することも全体地合いを警戒モードに導く。2月決算でひと足先に中間決算発表が相次いだ小売セクターは、厳しい内容で、株価も軟調を余儀なくされているものが多い。輸出企業についても上期は円高の影響が大きいとはいえ、下方修正が相次いだ場合、「相場はすべて織り込み済みです」とはなりそうもない。

 11日に日経平均は1万7000円台に乗せて引けたが、上昇しているのは原油市況高を背景に、鉱業や石油、海運、非鉄など市況関連に偏っており、“危うい上昇”で芯の入った戻り相場という印象は受けにくい。

 諸処の条件を総合しても当面日経平均は下方圧力が働きやすい環境にあり、11月初旬にかけて1万6000円前後、ともすれば1万5500円近辺までの調整もあり得ると考えている。ただし、そこは売り場ではない。年末にかけてはV字型の戻り相場を演じる可能性が高いとみている。年末の日経平均は下に“往って来い”となり今と同じ1万7000円前後で着地するのではないかという青写真を描いている。

 四半期ベースでみた場合、企業収益は7~9月が最も暗く、10~12月は改善色をみせるだろう。米景気の強さも揺るぎなく、日米金利差を背景とした中期的な米株高とドル高・円安基調が再確認されることになりそうだ。その流れのなかで、来年前半には日経平均はさらなる上値を期待してよいと考えている。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程終了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「勝率9割の投資セオリーは存在するか」(東洋経済新報社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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