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【特集】“トランプ大統領”誕生リスク最新情勢、見えた! 選挙後「大幅高」観測 <株探トップ特集>

迫る米大統領選、当選は行方、そして選挙後のマーケットの動きは?

―トランプ勝利なら円高進行も株価急落場面は買い場の声―

 11月8日に予定されている米大統領選挙が、あと1ヵ月に迫ってきた。民主党のヒラリー・クリントン候補と共和党のドナルド・トランプ候補は、大接戦を繰り広げるなか、わずかにクリントン氏が優勢の情勢だ。ただ、異色の候補、トランプ氏を相手にした選挙の行方は「結果を確かめるまで分からない」との声も少なくない。トランプ氏が当選した場合、「株式市場は暴落し、急激な円高が進む」との見方がある一方、「金融市場が波乱となれば絶好の拾い場」との声も出ている。

●クリントン氏やや優勢も「蓋を開けるまで分からず」

 米大統領選を巡る最新の支持率は、クリントン氏が48%、トランプ氏が42%前後(リアルクリアポリティクス調べ)となり、足もとではややクリントン氏がリードしている。第1回テレビ討論はクリントン勝利との見方が優勢なほか、トランプ氏の脱税疑惑も浮上した。ブックメーカー各社の賭け率から計算される「トランプ勝率」は20%前後との見方もある。

 ただ、テレビ討論は9日、19日と2回が残されている。当初、泡沫候補と見なされ、不法移民対策のため「メキシコとの国境への壁建設」などを主張し賛否の声を巻き起こしながらも共和党の大統領候補に上り詰めた同氏は、過去の例からみても異色の存在。脱税疑惑も「さほど大きな打撃にはなっていない」(アナリスト)ともいう。それだけに「結果は、蓋を開けるまでは分からない」(同)との見方がもっぱらだ。クリントン氏がやや有利な情勢のなか、トランプ大統領誕生のリスクを市場はまだ織り込んでいない。市場には、トランプ氏が勝利した場合、「金融市場の波乱は避けられない」との見方が多い。

●円とメキシコペソが「市場のカナリヤ」に

 こうしたなか、いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は「米大統領選までは様子見を余儀なくされる」という。特に、トランプ氏が勝利した場合、為替はドル安・円高が進むことが予想されるが、「その水準が読みづらい」とみている。「アメリカ第一主義」を標榜するトランプ氏は、ドル安を指向しているとみられ、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長を18年の任期満了時に交代させる意向も示している。市場では、トランプ氏勝利の場合、日本円が急伸する一方、メキシコペソが急落すると見られ、円とメキシコペソが「市場のカナリヤ役を果たす」との声も出ている。

 もっとも、「日本や韓国は米軍駐留経費を全て負担すべきだ」などの発言が物議をかもすトランプ氏だが、その経済政策には「意外に評価できるものも少なくない」(アナリスト)との声が出ている。

●「米共和党は株安政策を許さず」との声も

 トランプ氏は「平均3.5%の経済成長を実現し、2500万人の雇用を作る」ことを公約に掲げる。また、10年間の減税額は4.4兆ドルで、連邦法人税を35%から15%に下げ、個人所得税の最高税率を39.6%から33%に見直すほか、相続税の廃止や一定の所得以下の世帯への所得税を免除する。さらに、総額1兆ドルのインフラ投資も掲げる。

 第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは「トランプ氏の政策は、市場が好感するものが含まれている。同氏の勝利直後は株安となるかもしれないが、その後は買い直される可能性がある」という。前出の秋野氏も同様に「株価急落があれば、絶好の拾い場になるかもしれない」とみている。

 また、SBI証券の鈴木英之投資調査部長は「特に選挙直前はトヨタ自動車 <7203> のような米国との取引関係の強い銘柄は手掛けにくくなり、内需株に物色のホコ先が向かいそうだ」という。ただ、「トランプ氏の発言は選挙中の受けを狙ったものも少なくないはず。もし勝利すれば発言は修正されるだろう」ともみている。

 アムンディ・ジャパンの吉野晶雄チーフエコノミストは「トランプ氏がTPP(環太平洋経済連携協定)とともにNAFTA(北米自由貿易協定)など過去の自由貿易協定の再交渉も示唆していることは、通商政策面での不安要因として残る」と指摘する。ただ、「米共和党は株安を招く政策をそのまま受け入れるとは思えない」ともみている。

●どちらが勝ってもインフラ関連株は「買い」

 一方、クリントン氏勝利の場合、概ねはオバマ政権の路線を踏襲すると予想されており、安定性はあるが、大きな変化はさほどないと見られる。同氏はTPPに関して反対しているほか、医薬品の値下げを要請しており、薬品株には逆風となるとの見方もある。

 一般的に言えば、市場では「トランプ勝利なら米国の不動産、金融、国防、エネルギー銘柄には追い風。クリントン勝利なら、電気自動車のような環境関連やIT・ハイテク関連が評価される」(桂畑氏)ともみられる。

 また、見逃せないのはクリントン氏も5年で2750億ドルのインフラ投資の実施を掲げていることだ。インフラ関連銘柄はトランプ、クリントン両氏のどちらが勝っても注目されそうだ。こうしたなか、日本のインフラ関連企業にも再評価機運が強まっており、コマツ <6301> や日立建機 <6305> 、タダノ <6395> 、酒井重工業 <6358> 、竹内製作所 <6432> 、大林組 <1802> 、太平洋セメント <5233> などに活躍期待が膨らんでいる。

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