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【特集】桂畑誠治氏【10月相場、経済政策本格化で流れ変わるか】(1) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

― 一億総活躍社会実現、TPP早期発効への期待は?―

 26日の東京株式市場は、前週末の米国株安や外国為替市場での1ドル=100円台への円高進行を嫌気して幅広い銘柄に売りが出て、日経平均株価終値は、前週末比209円46銭安の1万6544円56銭となった。こうしたなか、きょうから臨時国会が招集され、安倍政権による「一億総活躍社会」の実現や、環太平洋経済連携協定(TPP)の早期発効と、それに備えた農業改革など喫緊の課題が前進する。こうした経済政策の本格出動を背景に、第一線の市場関係者に10月相場の見通しを聞いた。

●「成長戦略の効果発現が第一義に」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 東京市場は来週に10月相場入りとなるが、米大統領選なども控えて引き続き方向感を見極めにくい不安定な展開が続きそうだ。事業規模28兆円の経済対策については、そのアナウンス効果という点では既に株価に織り込まれた状態。実体経済や個別企業の業績などに効果が出てくるのは、年度内としてもまだ先の話であり、理想買いと現実買いの挟間にある現状では政策関連銘柄の上値余地は限られるだろう。

 前週20~21日に行われた日米の金融政策会合では、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを見送ったが、日銀は長短金利操作付き量的・質的金融緩和というかたちで新たなスキームを打ち出したものの、追加緩和のカードは切らなかった。これは目先のドル安・円高を警戒する動きにつながり、主力輸出株は手掛けにくい環境が続く。

 また、日銀は長期金利をゼロ%に誘導する方針を示し、これが額面通りであれば長短金利差で利ザヤを稼ぐ銀行や保険業界にはメリットが生じるが、債券金利(10年物国債)は足もとで下値を試す展開にあり、マーケットがどこまでこれを許容するかという局面にある。仮に長期金利をゼロ%近辺で押さえたとしても、それによる収益メリットは限定的なものにとどまりそうだ。一方、黒田日銀総裁はマイナス金利の深掘りについて先行きは肯定的であり、銀行にとって逆風環境が解消されたという印象は受けない。

 結局は、銀行が融資するだけの需要創出、経済活性化が重要ということになる。基本的には、安倍政権が直近打ち出した経済対策も成長戦略の効果が発現するまでの時間稼ぎに過ぎない。日本経済のデフレ脱却には成長戦略の推進が第一義であり、それに取って代わるものは存在しないということを改めて認識しておく必要があろう。

 東京市場は当面、自律的な波動形成が見込みづらく、米国株市場と為替の動向次第といえる。米国株市場が好調をキープできるとすれば、自然と東京市場にも浮揚力が働き、日経平均は1万7000円台半ばを目指す展開も十分可能だ。逆に米国株が頭打ちの展開を強いられ、為替も100円台を割り込むような円高に振れた場合は下値模索を余儀なくされるだろう。その場合は1万6000円台割れの公算も大きくなる。全体相場の動きを横にらみに、物色対象としては商品競争力があり、円高デメリットも緩和されやすい電子部品株の押し目に着目したい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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