市場ニュース

戻る
 

【特集】先行株は既に2倍、「バラスト水処理関連」次の候補 <株探トップ特集>

三浦工 <日足> 「株探」多機能チャートより

―条約発効で処理装置市場5000億円規模へ、いまだ動かざる本命株は?―

 今週に入り、バラスト水処理関連がにわかに活気づいている。8日、IMO(国際海事機関)のバラスト水規制管理条約にフィンランドが批准。これにより条約の発効要件が満たされ、17年9月8日に発効することが決まった。これを受けて、バラスト水処理装置の需要拡大期待が高まったことが関連株動意の要因だ。既にタクミナ <6322> [東証2]が今週に入り株価が一時51%高となったほか、内海造船 <7018> [東証2]は2倍強に上昇するなど関連銘柄はにぎわっているが、1年後の発効を控えその注目度はさらに高まりそうだ。

●年30億~50億トンのバラスト水が国際移動

 バラスト水とは、船舶を安定化するために用いる水のこと。貨物船や客船などは総積載重量で設計されており、無積載量で出港する場合には、停泊港の水を重しとして内蔵タンクに積んでバランスをとっている。一方、寄港時に貨物などを積載した場合はこのバラスト水を船外へ排出することでバランスをとっており、往復路で共に貨物を満載していない限り、バラスト水が必要となる。

 IMOによると、船舶によって年間30億トンから50億トンのバラスト水が国際移動していると推定。また、日本海難防止協会の調査では、資源輸入大国である日本には年間約1700万トンのバラスト水が持ち込まれ、約3億トンが持ち出されていると推計されている。

●バラスト水による被害で発電所が停止

 バラスト水に対する規制がなぜ必要かというと、バラスト水に含まれる水生生物や有害なプランクトンが、排出された水域の生態系に影響を与える問題が多発したからだ。1992年には米国に生息し、アンチョビや稚魚を捕食するクシクラゲがバラスト水を介して黒海に侵入、アンチョビ漁獲を急減させる被害が発生。88年にはヨーロッパに生息するゼブラ貝が北米五大湖で異常発生し、発電所の冷却水を取り入れる取水口に密集し、発電所が停止した。

 こうした状況を受けてIMOでは、船舶のバラスト水の移送による海洋生態系への影響を防止するバラスト水規制管理条約を2004年に採択。条約の発効要件を30ヵ国以上の批准、かつ批准国の合計商船船腹量が世界の商船船腹量の35%以上としていたが、前述のフィンランドの批准により、批准国数が52ヵ国、その合計商船船腹量は世界の商船全体の35.14%に到達。これを受け1年後の17年9月8日に発効することになった。

●条約発効を見据え活発化する引き合い

 条約の発効後は、新造船はもちろん、既存船についても5年ごとに義務付けられている定期点検で、バラスト水を排出する際に水生生物を一定基準以下にすることが求められる。

 そのため、フィルターや薬剤、紫外線などでバラスト水を処理する装置の設置が必要となるが、「条約発効が決まりそうだということで、今年に入ってから引き合いが活発になっている」(業界関係者)として、普及はまだ初期段階であることがうかがえる。

 三井住友銀行では、処理装置の市場規模は今後5年程度にわたり年間5000億円を超えて推移するとみており、関連銘柄のビジネスチャンス拡大はこれからといえそうだ。

●処理装置で関連銘柄の本命視される三浦工

 バラスト水処理装置ではIMOの条約のほかにUSCG(米国沿岸警備隊)が定めるAMS規制があるが、双方で承認を取得(16年8月現在)している国内メーカーには、日立プラントテクノロジ―(日立製作所 <6501> )、ジェイ エフ イーホールディングス <5411> 傘下のJFEエンジニアリング、三井造船 <7003> 、クラレ <3405> 、日本油化工業(横浜市中区)、パナソニック環境エンジニアリング(大阪府吹田市)、住友電気工業 <5802> と日立造船 <7004> が出資するエコマリン技術研究組合、栗田工業 <6370> などがある。なかでも関連銘柄で本命視されているのが、三浦工業 <6005> だ。

 同社では、14年3月から大手造船メーカー今治造船(愛媛県今治市)と組んで、バラスト水処理装置市場に参入。主に小・中型船向けのフィルタとUVリアクタによる処理装置を手掛けており、「16年3月期の売上高は4億円程度だったが、19年3月期には新造船向けで年320台、就航船(既存船)向けで年400台の搭載を目指し、売上高を100億円まで引き上げる」(経理部)方針だという。

 このほかにも、処理したバラスト水を水域へ排出する場合の水質基準であるD-2基準を満たした処理装置を手掛ける三菱化工機 <6331> などへの注目度も高まっている。

●処理装置用電源を手掛けるプラズマなども注目

 一方、処理装置本体ではないものの、バラスト水処理装置搭載工事で実績の多い内海造船や名村造船所 <7014> 、バラスト水処理制御装置を手掛けている寺崎電気産業 <6637> [JQ]、バラスト水処理装置向けポンプを製造しているタクミナやイワキポンプ <6237> [東証2]、バラスト水対策用の海水ストレーナーを手掛けるニチダイ <6467> [JQ]なども関連銘柄として名が挙がる。

 さらに、アドテック プラズマ テクノロジー <6668> [東証2]では、子会社IDXの製造するバラスト水処理装置用電源が日本海事協会から認証を受けている。「現在は各メーカーにサンプル出荷している段階で、なるべく早く市場投入したい」(総務経理部)としており、条約発効を契機に需要拡大が期待されている。

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均