【市況】富田隆弥の【CHART CLUB】 「過剰期待で高まるハードル」
株式評論家 富田隆弥
◆政策期待の高まりと107円台に戻した円安もあり、日経平均株価は21日に高値1万6938円を付けてきた。この2週間の上昇は1832円幅(12.1%)という勢いで、チャートも節目の75日移動平均線や一目均衡表の「雲」、26週線などを突破し、5月末高値1万7251円や200日線1万7322円を目指す構えにある。
◆ジャスダックやマザーズなどの小型株がもたついていることから、ここでの上昇は日経平均採用の値がさ株主導であり、それには7月8日時点で5772億円まで整理を進めていた裁定買い残の反転(裁定買い)があり、その背景には過去最高値を更新しているNYダウ平均と、それに伴う外国人買い(ショートカバー)がある。
◆そうなると、ここからの日本株は「NY次第」とも言える。そのNYダウは20日現在9連騰と最高値を順調に更新中だが、6月にチャートは一旦「陰転」しており、そこから一気に高値更新という動きは「買い戻し」と「新規買い」が重なっていることを意味する。つまり、買いが集中しての高値更新は「快晴」であり、勢いが止まると「雲が出やすくなる」局面でもある。
◆今週はFOMC(27日)、日銀金融政策決定会合(29日)と日米で注目イベントがある。日本では日銀の追加緩和(ヘリコプターマネー、国債の永久債化)、8月上旬にまとまる政府の大規模な景気対策などに期待を膨らませているが、事前に株価が急伸しているだけに政策のハードルは高くなっている。また、FOMCではNYなど株価が高値を更新していることから「利上げ観測」が再燃しかねず、バカンスシーズンとあって利食い売りが出やすくなっているなど、注意を要すタイミングに来ていることも承知しておくべきだろう。
◆皆が強気に傾いた夏相場。「任天堂」への一極集中の商いは注意信号だし、日経平均は7月8日安値から日足9本の変化日(満月の翌日)に高値を付けてきた。NYダウも無限に上昇が続くことはなく、ここからは日米とも、どのような調整を迎えるのか注視したい。スピード調整で済ませるか、それとも調整に転じるか。
(7月21日 記、毎週土曜日10時に更新)
情報提供:富田隆弥のチャートクラブ
株探ニュース