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【特集】トヨタも導入、「在宅勤務」普及で注目の株 <株探トップ特集>

ソリトン <日足> 「株探」多機能チャートより

―「テレワーク」拡大で期待の関連銘柄を探る―

 新しい働き方として、在宅勤務(テレワーク)が注目を浴び始めている。以前は、大手外資系企業だけで導入されているイメージがあったテレワークだが、ここ数年、国内企業でも拡大しつつある。先月には「トヨタ自動車はほぼすべての総合職社員を対象とした在宅勤務制度を8月にも導入する」ことが明らかになり、市場の関心も高まることから、関連銘柄に注目が集まりそうだ。

●トヨタが事技職約1.3万人を対象にテレワークを導入へ

 トヨタ自動車 <7203> では、事技職(総合職)を対象とするテレワークを導入する。「生産性向上の一環として、ある一定の資格を有する事技職約1万3000人を対象にテレワークを導入する方向で、現在、労働組合と協議している」(広報部)としており、8月にも開始する予定だ。

 同社はこれまでにも、子育て中の社員を対象に、出社時間を1日4時間として、残りは在宅で働ける制度や、1歳未満の子どもがいる社員を対象に、週1回2時間だけ出社すれば良い仕組みなどを導入している。今回、テレワークの枠を大幅に拡大するのは、育児や介護を後押しする側面もあるようだ。

 そもそもテレワークとは、ICT技術(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと。パソコンなどの端末があれば、会社に出勤しなくても、仕事ができる環境を構築することが可能になったことで実現した新しい働き方だ。

●政府の後押しもありテレワーカー数は巡航速度で拡大へ

 テレワークを導入する国内企業は、トヨタだけではない。最近でも三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> 傘下の三菱東京UFJ銀行やリコー <7752> 、日本マイクロソフト(東京都港区)などがテレワークの導入を決定した。また、インフォテリア <3853> [東証M]では昨年8月から、最高気温が35℃以上が予想される日にテレワークを推奨する「猛暑テレワーク」や都心部での降雪で在宅勤務を喚起する「降雪テレワーク」といった取り組みを行い、話題を呼んだのは記憶に新しい。

 もっとも、テレワーク人口そのものは直近で伸び悩んでいる。国土交通省の「テレワーク人口実態調査」によると、在宅テレワーカー(テレワークで働く人、自営型を除く)の数は2008年には270万人だったが、東日本大震災翌年の12年には710万人に拡大。しかし、同年をピークに減少に転じ、14年には480万人となった。

 震災をきっかけに、BCP(事業継続計画)の一環として、一気に導入が広がったことがこの背景にある。ただ、14年のテレワーカー数は10年比で85%増となっており、現在は巡航速度での拡大が続いているといえる。さらに、産業界のリーダーともいえるトヨタのテレワーク導入が、他社に同様の取り組みを促す刺激材料にもなる。政府が「1億総活躍社会」の実現に向けて、テレワークを新規導入する中小企業に対する補助制度を設けたことも、普及を後押ししよう。

●関連銘柄の代表格はセキュリティー分野のソリトンか

 テレワーク関連銘柄といえば、アプリケーションやデータをサーバーで一括管理し、処理の大半をサーバー側で行う「シンクライアント」と呼ばれる技術が必要であることから、NEC <6701> や富士通 <6702> 、NTTデータ <9613> 、日本ユニシス <8056> などの大手ITベンダーに活躍の場が広がるが、これを可能にするセキュリティーの分野では中小の企業にも出番が到来しそうだ。

 テレワーク関連の代表格といわれるソリトンシステムズ <3040> [JQ]は、セキュリティーと使いやすさを兼ね備えたリモートデスクトップ「Soliton SecureDesktop」を展開。独自の画面転送方式により、社内パソコン(PC)の画面だけを圧縮・暗号化して転送し、手元のタブレットやPCから遠隔操作するというもので、手元の端末にはデータが残らず、情報漏洩の心配は不要な点が特徴。このため、テレワークの普及拡大で需要増が期待される。

●総務省の「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に採択されたDデザイン

 また、ジャパンシステム <9758> [JQ]では、専用のUSB認証キーを利用して、オフィスのPCやサーバーへセキュアなリモートアクセスを可能にするリモートアクセスソリューション「PlatformV System」を展開。専用のUSB認証キーをPCに挿すだけで、社内にあるPCやサーバヘセキュアにリモートアクセスが実現できるため、場所を選ばず会社にいるのと同じように仕事ができるようになる。

 さらに、デジタルデザイン <4764> [JQG]のクラウド型デジタル化サービス「BizIT」では、クラウドを介して手書きのドキュメントや名刺などの文字情報のデジタル変換を高精度で行うため、高度なシステムの準備がなくても入力作業を簡単に行うことができる。総務省が地方創生の一環として実施する「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」の委託先にも採択されている。

 このほか、オフィスと同等に仕事を行える「場(ワークプレース)」と「場所を問わずにアクセスできるネットワーク」を整備し、自社の在宅勤務制度でも利用しているサイボウズ <4776> や、クラウドによる端末一括管理サービスのオプティム <3694> 、Web会議などのコミュニケーションサービスを提供するブイキューブ <3681> などにも注目したい。


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