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【特集】1ドル110円突入、総力取材“円高&株安”からの反転シナリオ <株探トップ特集>

ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより

―14年秋以来の円高水準、市場に衝撃―

 東京為替市場で円相場が急騰している。17日には1ドル=110円台に突入、1年4カ月ぶりの円高水準をつけた。この円高の背景には、「日銀の異次元緩和の限界論」や「米利上げペースの後退」などがある。市場には、今後100円トビ台への円高が進むとの観測がある。しかし、「リスクオン状態にあり今後も一方的にドル売り・円買いが膨らむ地合いではない」との見方も浮上。一部には円安・株高への反転シナリオも浮上している。

●FOMCはハト派的でドル全面安に

 ドル円相場は17日の海外市場で一時、1ドル=110円67銭をつけた。これは、日銀が追加緩和を実施した14年10月31日以来、約1年4カ月ぶりの円高水準だ。異次元緩和第2弾で、その後の円安の契機となった14年秋の水準に為替レートが戻ったことに市場に衝撃が走った。

 昨年12月実施時点の大企業・製造業の日銀短観の想定為替レートは1ドル=119円40銭。トヨタ自動車の今期1~3月想定レートも115円であり、110円台では大手メーカーは軒並み為替差損を被ることになる格好だ。

 今回のドル安・円高の進行の要因としては、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で今後の利上げ予想回数が従来の4回から2回に下方修正されたことの影響が大きいと見られている。

「FOMCの結果はハト派的であり、これがドル安要因に働いた」と外為オンラインの佐藤正和シニアアナリストは指摘する。「110円は重要なレベルであり、この水準を割り込むようなら105円を意識する円高もあり得る」と同氏は警戒する。

 今回の円高は米国など外部要因に加え、国内では「原油安に伴う貿易赤字の縮小」「日銀の追加緩和に対する限界論」などもドル売り・円買いを促している。

 15年の日本の貿易赤字は2兆8322億円と、前の年に比べ約10兆円減少。原油安が効き、実需のドル買い・円売り要因は小さくなっている。

 また、日銀のゼロ金利政策に関しては「金融機関の収益悪化などが懸念され、一段のゼロ金利拡大は難しくなりつつある」(市場関係者)との見方も少なくない。

 さらに、海外投機筋はドル売り・円買いにポジションを切り替え、一段の円高に備えつつある。市場には「アベノミクス下の円安環境は転機を迎えている」との見方も浮上している。

●リスクオン状態で年初とは状況異なる

 ただ、一方でここからの一段の円高を疑問視する見方も出ている。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、「この円高がずっと続くわけではない」と言う。ポイントは、いまは中国経済への不安が落ち着き、原油価格が反転するリスクオン状態にある点だ。

「リスクオフで円高が進んだ1~2月と今回は状況が異なる。円高が進んでも110円程度がいいところ」と同氏はみる。今後の円安への反転を見越して、輸出株など大型株にも買い余地があると見込んでいる。

●消費増税の延期あれば円安・株高要因に

 外為どっとコム総合研究所の石川久美子シニアFXアナリストも「FOMCも延々とドルを売るネタではなく、勢いで円高が進んだ面は少なくない」と指摘する。110円前後をキープできれば、ドル円相場の反転は期待できるとみている。

 当面、材料は限られるが、先行きの国内での注目イベントをみた場合、4月下旬の日銀金融政策決定会合のほか「大型補正予算策定」、「消費増税の延期表明」などが想定されている。

 特に、「消費増税の延期があれば株高・円安要因に働く」と石川氏はいう。消費増税をにらんでは、5月中旬発表の1~3月国内総生産(GDP)が注目されており、その結果次第で5月下旬の伊勢志摩サミット(G7)を視野に入れ、消費増税延期が表明されるとの観測が市場には流れている。「消費増税の延期などを今後、織り込む展開も期待される」と石川氏はみており、この場合、徐々に円安が進むこともあり得るだろう。


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