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【特集】馬渕治好氏【日経平均661円高! 今後の相場を読む】(3) <相場観特集>

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 2日の東京株式市場で、日経平均株価終値は、前日比661円04銭高の1万6746円55銭と大幅続伸した。前日の米株式市場でNYダウ平均株価が前日比348ドル高と急伸したのに加え、外国為替市場で一時、1ドル=114円台前半へと急速に円安・ドル高が進行したことが好感され、輸出関連の主力銘柄を中心に全面高商状となった。株価位置が大きく上昇したことで、株式相場がどう推移するのか、第一線の市場関係者に今後の見通しを聞いた。

●「G20を境に潮目が変わった市場」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 東京株式市場は、目先底入れを確認した2月中旬以降も1万6000円近辺を軸に方向感が定まらず、もみ合いを続けてきたが、G20財務相・中央銀行総裁会議を境に潮目が変わりつつある。日本株はTOPIXの予想PERなど指標面を考慮した場合、全体観として依然として売られ過ぎの水準にあると判断している。今はその修正局面の途上といってよい。

 2日の日経平均の大幅高は、直接的な背景としては米経済指標として雇用統計など他の指標に先駆するISM製造業景況指数が、市場予測を上回る好調な結果だったことが挙げられる。懐疑的な見方が出始めた米経済の先行きに対する不安心理を後退させたことが大きい。今の米国経済は内需の非製造業は堅調だが、製造業の輸出が弱いというコンセンサスがある。しかし今回、この製造業の現状を示す指標が好調だったことは、米国だけでなく東京市場にもサプライズを与えた。

 もっとも、株高の真の立役者は安倍政権による経済政策への期待感であろう。補正予算編成や消費増税の延期に対する思惑が、先物を絡めた売り方の買い戻しを誘発し、日経平均が底値離脱の初動を形成する原動力となった。

 潮目を変えたG20の意義は、各国に財政出動や構造改革などの政策動員を促す共同声明にある。事実、これに呼応するかたちで安倍首相は有識者を集めた「国際金融経済分析会合」の設置を発表、夏の衆参同日選挙を含みとした消費増税の先送りの布石を打っている。また、これに先立ち菅官房長官は前週末26日の記者会見で、税収が減るようであれば増税は本末転倒とする旨のコメントを出しており、一連の動きは政策当局の意思を表したものと理解できる。これまでは、日銀の金融政策に頼り過ぎた嫌いがあったが、先のマイナス金利導入に対する市場の混乱を目の当たりに、安倍政権が財政を伴う対策に舵を切り直したことは株式市場にとっても非常にポジティブだ。

 日経平均は3月末に向けて上値を一直線に指向するということはないだろうが、押し目を入れながらも下値切り上げの動きを次第に明確にしていくだろう。為替動向とも密接に絡むが、米国の景気実勢を反映するかたちで1ドル=117~118円水準まで円安が進めば、期末段階で1万8000円ラインには十分に手が届くとみている。

 今後のリスク要因としては、やはり米大統領選の行方といえよう。スーパーチューズデーの結果は事前に織り込みが進んでいたが、中期的にはトランプ氏の次期大統領に向けた存在感が意識されるほどに日本株には重荷となることが予想され、この点は注意が必要となりそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程終了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。昨年10月2日に近著「ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係」(金融財政事情研究会)発売。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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