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【特集】「爆買い」ネットで拡大中 <株探トップ特集>

花王の週足チャート 「株探」多機能チャートより

―18年「越境EC」2兆8000億円の衝撃―

 国境をまたぐ電子商取引である「越境EC(電子商取引)」への関心が高まっている。特に今年に入ってからは各地でフェスティバルやセミナーが相次ぎ、集客も上々という。企業サイドも少子高齢化が進む日本市場への依存度低下や、新興国でのECの普及、経済発展に伴う消費意欲の向上などを受けて「越境EC」に取り組む企業が増えており、市場も拡大している。株式市場でも今後、話題に上ることが増えるとみられ、関連銘柄に注目したい。

●花王は天猫国際に出店

 花王 <4452> は今月から、海外企業向けショッピングモールサイトの「天猫国際(Tモール・グローバル)」に出店した。「天猫国際」は、中国EC最大手のアリババ集団が手掛けるサイトで、日本で生産した紙おむつ「メリーズ」などが販売されている。「メリーズ」は既に中国内の「天猫Tmall」でも販売しているが、「天猫国際」を活用することで、安定的に日本製「メリーズ」を購入できるようにした。中国では日本製の衛生用品への信頼が高いことから、今後、品目を増やす方針だ。

 花王が出店する「天猫国際」は、越境ECと呼ばれるサイトだ。越境ECとはインターネットを使った国際的な通信販売のこと。ネットには国境がないことから、これまでも日本語のサイトに海外から注文が入ることはあったが、越境ECでは、外国語のサイトを設け、積極的に海外の消費者に販売するのが特徴だ。

●中国からの購入額は3年後2.3倍へ

 この分野での中国の市場拡大は著しく、越境ECは「海淘(ハイタオ)」と呼ばれ、積極的に越境ECを利用する人たちを「海淘族」と称しているという。訪日観光客の「爆買い」にも見られるように、中間層の拡大で、価格の安さよりも安心できる商品を求めるようになったことが背景にあり、円安がさらに拍車をかけている。

 経済産業省が5月にまとめた報告書でも、中国の消費者が日本のECサイトや、中国系ECサイトの日系出店企業から購入した金額は2013年に3902億円、14年には6064億円に上り、18年には1兆3943億円と14年比2.3倍に拡大する見通し。米国からの購入額を合わせると、18年の中国越境EC購入額は2兆8406億円になると推計されている。一方、日本が米国・中国から購入する額は18年に2923億円と見込まれ、この結果、18年の中国の越境EC市場は、日本の約10倍になると予想されている。

●BEENOSなどにも活躍期待

 市場拡大が予想されるだけに、花王のように越境ECに力を入れる企業も増えている。化粧品の口コミサイト「アットコスメ」を運営するアイスタイル <3660> では、中国の女性向け越境ECアプリ「小紅書」に仮想店舗を開設した。国内の口コミで人気のアイライナーや化粧落としなどをラインアップ。アプリに先駆け、「天猫」にも出店している。

 また、BEENOS <3328> [東証M]では、海外転送(商品発送代行) や代理購入サービス事業を展開する子会社tensoの15年の流通総額が前年比2.1倍の168億円に急拡大した。同社では日本のネットオークションやECサイトの代理入札・代理購入サイト「Buyee(バイイー)」の運営も行っているが、Eストアー <4304> [JQ]ではこの「Buyee」をネットショップ運営システム「ショップサーブ」のオプション機能として導入し、簡単に越境ECを始められるサービスを行っている。

●ラクーン、輸出販売サービスが急成長

 一方、ラクーン <3031> [東証M]は、日本製品を海外の小売店や企業に輸出販売する「SD export」を8月に開設した。衣類や生活雑貨から工芸品などまで幅広く扱っているが、「出展商品のアイテム数はオープン時の7万アイテムから現在では12万アイテムに拡大した」(社長室)と急成長している。同サイトの物流業務はDMS <9782> [JQ]が受託しているが、流通量の拡大による恩恵も期待できそうだ。

 このほか、中国で越境ECを展開するタイ最大級の財閥であるチャロン・ポカパングループから出資を受けたジェネパ <3195> [東証M]、韓国市場向けの越境ECサイト「goodsbuy(グッズバイ)」を手掛けるトランスコス <9715> 、海外と国内のEC業務の一元管理で越境ECをサポートするHamee <3134> [東証M]などにも注目したい。

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