【特集】小売り業界に変革の号砲! <株探トップ特集>
―オムニチャネル化で販売増を狙う―
小売り各社が積極的な取り組みをみせる新たなマーケティング「オムニチャネル」に再び関心が高まっている。業界に大きな変革をもたらす可能性が指摘されるなか、セブン&アイ <3382> は11月から本格的に展開すると発表。新時代の到来を告げる号砲が鳴った。
●成否が業績を左右するカギに
オムニチャネルとは、Omni(すべての)とChannel(経路)から成り立つ言葉で、実店舗やカタログ、オンラインストアなどあらゆるチャネルを使って販売機会を増やして売り上げを上げるという考え方を指す。例えば、店舗とオンラインストアをまたいで在庫を把握し、店舗にない商品は最短の配送ルートで取り寄せ、顧客は身近にあるコンビニエンスストアで受け取るといったことができる。EC(電子商取引)業界では「O2O(オンライン・トゥ・オフライン)」と呼ばれるネットから実店舗へ顧客を導く販促活動があるが、これもオムニチャネルの取り組みのひとつといえる。
スマートフォンなどモバイル端末の普及に伴い、いつでもどこでも買い物ができるようになったことで、企業は「どこで何を売るか」よりも「どうやって買ってもらうか」がマーケティングの重要なテーマになり、オムニチャネルを成功させることができるかどうかが今後の業績を大きく左右することになりそうだ。
●セブン&アイ、11月から本格スタート
セブン&アイは、かねてより準備を進めてきた実店舗とネットを融合した「omni7(オムニ セブン)」を11月1日にグランドオープンする。オリジナル商品を中心に幅広い商品・サービスを提供するとともに、全国に約1万8000店を展開するセブン-イレブンで商品の受け取りや返品・返金などのサービスを実施。2018年度には品ぞろえを約600万品目まで増やし、売上高1兆円を目指す。
また、同社は8月にファストリ <9983> と複数の分野で業務提携に向けた話し合いを進めていることを明らかにしているが、これもオムニチャネル化を加速させる施策のひとつとの見方がある。
●イオンは「デジタルシフト」掲げる
一方、国内総合小売り最大手のイオン <8267> は中期経営計画(14~16年度)のなかで、グループ戦略として「デジタルシフト」を掲げる。一例として、店頭にタブレット端末を設置して顧客自身で商品の取り寄せや自宅配送ができるサービスを展開中で、「実施店舗数を現在の約100店からさらに広げたい」(コーポレートコミュニケーション部)としている。加えて、ネットスーパー事業の強化策では受け取りの多様化に向けた取り組みを進めており、「手始めに現在、イオン九州で準備中」(同)だという。
このほかでは、マツキヨHD <3088> が7月から、オンラインストアを基盤としたオムニチャネル化に向けた取り組みと新サービスを実施。同じく7月には楽天 <4755> とヤマトHD <9064> が業務連携の強化に動いた。
8月にはパルコ <8251> が、アパレル・ファッション業界に特化した国内専門店事業成長支援サービスのアパレルウェブ(東京都中央区)と資本業務提携。ICT(情報通信技術)を活用したオムニチャネル販売の促進などを狙う。
9月に入ると、ファストリと総合コンサルティングのアクセンチュア(東京都港区)がデジタルイノベーション推進の新会社を設立したほか、オンワード <8016> と高島屋 <8233> はオムニチャネル戦略を推進するための共同プロジェクトを実施することを明らかにした。
●パイプドHDやエイジア、SIにも注目
オムニチャネル化が進むなかで見逃せないのが、コンサルティングやシステム開発、運用サポートを手掛ける企業だ。
パイプドHD <3919> は7月23日から、「スパイラル オムニチャネルソリューション」の提供を開始。顧客情報の統一管理のほか、今後の購買予測に活用できる。
エイジア <2352> [東証M] は9月11日、同社のメール配信システムとSI <3826> のオムニチャネルサービスを連携させ、小売り業の売り上げ拡大のためのプッシュ型メールソリューションを展開すると発表した。
また、オプトHD <2389> 、ネットイヤー <3622> [東証M] 、ビットアイル <3811> 、ITFOR <4743> 、理経 <8226> [東証2] 、トランスコス <9715> なども関連サービスを提供しており、ビジネス機会が広がりそうだ。
株探ニュース