【特集】セルロースナノファイバー関連株を追う <株探トップ特集>
―実用化加速で高まる注目―
次世代の高機能材料として注目されているセルロースナノファイバー(CNF)の実用化の動きが加速している。菱鉛筆 <7976> が9月に世界で初めてCNFを実用化させたゲルインクボールペンを欧米向けに発売したのに続き、日本紙 <3863> グループの日本製紙クレシアでは、10月1日にCNFを用いた大人用紙おむつを発売した。
経済産業省では2030年に関連市場を1兆円規模に育てる目標を掲げ、産官学連携の動きなどを後押ししており、実用化の進展とともに市場が拡大しそうだ。
●ボールペン、紙おむつなど続々
三菱鉛筆は先月8日、今年3月から北米地域で先行販売していた、CNFをインクの増粘剤に使用した新規ゲルインクボールペン「ユニボール シグノUMN-307」について、欧・米で本格展開すると発表した。
「シグノUMN-307」は、一工薬 <4461> との共同開発で、一工薬の「レオクリスタ」をインクの粘りを増すゲル化剤に採用。一般的なCNFの数十分の一ほどの細かさを実現した「レオクリスタ」をインクに配合したことで、「日本語よりも文字を書く速度が速いアルファベットの筆記体でも、文字がかすれにくく、インクだまりもない」(経営企画室)のが特徴。先行した米国での売れ行きも好調で、欧米での本格販売を決めたという。
また、日本製紙クレシアが今月から発売した、大人用紙おむつの新ブランド「肌ケア アクティ」シリーズは、CNFの表面に金属イオンや金属ナノ粒子を高密度に付着させることが容易であるという特徴を生かし、抗菌・消臭効果のある金属イオンをCNFに大量に保有させたままシート化することに成功。これまでにない、高い消臭機能を持つシートを実現したという。
●製紙各社で増産計画が相次ぐ
セルロースナノファイバーとは、木質パルプなどを原料とし、植物繊維をナノレベルに精製した、軽くて丈夫な植物由来の素材のことをいう。植物細胞の細胞壁・繊維の主成分となるセルロースをナノ(10億分の1)レベルにまで微細化することで得られ、鉄鋼の5分の1の軽さで、強度が同5倍以上あり、熱による変形が小さい(ガラスの50分の1)という特性を持っている。また、植物由来の素材なので、資源が少ない日本でも、原料を輸入に頼らずに生産できることや、環境への負荷が少ないことなどが注目されている。
実用化の加速とともに、量産体制の整備も進んでおり、日本紙では16年度に量産ラインを設ける計画で、生産量も現在の約10倍となる年産300トン以上に引き上げる方針。また、中越パ <3877> では、現在、実証試験用の製造設備がある高岡工場(富山県)などに量産のためのラインを設けて、17年度には量産をスタートさせる方針で、生産能力を現在の年数十トン以下から約10倍ほどに高めるという。
前出の三菱鉛筆のボールペンや、日本紙の紙おむつ以外にも、CNFを使った化粧品や食料品原料を開発中の王子HD <3861> や、食品用の包装材などとして製品化を進めている大王紙 <3880> や花王 <4452> など、製紙各社を中心に実用化・製品化が進んでいる。
●星光PMC、一工薬などに注目
また、将来的には炭素繊維に近い強度と軽さを生かして自動車の車体や部品などへの用途拡大が注目されている。自動車の車体の樹脂部分をCNF強化樹脂(樹脂にCNFを添加したもの)に置き換えることで約20キログラムの軽量化が可能になるとの試算もあり、軽量化につながる素材として期待は大。今後の量産化進展による生産コスト引き下げが進めば、自動車部材への応用開発も拍車がかかりそうだ。
同分野に関しては、京都大学が先行しているが、同大のCNF研究プロジェクトに参加している星光PMC <4963> や、DIC <4631> 、三菱ケミHD <4188> などの今後の開発動向には関心が高まろう。
さらに、自動車用のリチウムイオン二次電池へのCNFの活用に関した事業テーマが環境省の「平成27年度セルロースナノファイバー活用製品の性能評価事業委託業務に係る公募」に採択された一工薬なども注目が必要だ。
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