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【特集】菊川弘之【コモディティー】秋の相場観特集_05 /「陰の極み」接近の金の秋相場は分散買いが有利

菊川弘之氏
日本ユニコム・調査部主席アナリスト 菊川弘之氏

 長く続いた世界的株高と実体経済との異常乖離が、株価下落の流れで修正されていく流れに伴い、商品市場もリスク回避で秋相場は始まりそうだ。米国の利上げ観測や、中国発世界同時株安に加えて、独フォルクスワーゲン(VW)の不正問題や、スイスの資源商社グレンコアの株価暴落で、リスク回避の流れが高まり、非鉄・白金中心に商品売りも加速した。スイス当局が貴金属の価格操作に関与した容疑でトレーダーの調査を開始したことも貴金属の上値を抑えている一因だ。

 NY原油相場も月足終値ベースで98年安値を起点とした長期上昇トレンドを割り込み、2000年以降の商品市場の上昇の一因であったオイルマネーの引き揚げも出始めている。原油安に伴う財政赤字を抑えるため、サウジアラビア通貨庁(SAMA)は過去6カ月で500億~700億ドルを資産運用会社から引き揚げた模様だ。ただし、米国の内向き姿勢やイランの核開発協議合意で、サウジがロシア製原発を導入するなど中東のパワーバランスに変化が出ており、中・長期的には中東地区の供給リスクが高まる可能性には注意したい。

 リーマン・ショックの時と同じく、金もいったんはリスク回避の流れの中で、売られる可能性はあるものの、その後の戻りは最も早く、幅も大きなものとなるだろう。過去の季節傾向では10月は金にとって年間で最も弱気の月だが、11月・12月の月足陽線確率は高い。過去の米利上げ局面でも、実際の利上げが開始されてからは、金は下値を切り上げているパターンが確認できる。大底確認はできていないものの、「陰の極み」に接近しつつある金の秋相場は、分散しての買い仕込みが有利な時間帯となるだろう。

<プロフィール>

NYU留学後、商品投資顧問・証券会社の調査部・ディーリング部長などを経て現職。日経新聞、時事通信などにマーケットコメント・解説を寄稿。TV・ラジオなど多数メディアに出演中。中国・台湾でも現地取引所主催セミナー講師として講演。

編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ)   【秋の相場観】特集より

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