【特集】小菅努【コモディティー】秋の相場観特集_04 /原油価格は下値不安後退も、反発は時期尚早
小菅努氏
秋(10~12月)の国際原油相場は1バレル=35~55ドルをコアレンジに、横ばいからやや弱含みの展開を想定している。
原油相場の低迷が続く中、高コストなタイトオイル分野で生産調整が活発化しており、40ドル割れから更に急落するような必要性は薄れている。しかし、過剰供給を解消するための需給リバランスはなお初期段階であり、原油相場のボトム確認に慎重姿勢が求められる状況に変化はない。特に米利上げによってドル高圧力が強まれば、8月に付けた年初来安値(37.75ドル)を下抜く可能性も十分にある。
国際エネルギー機関(IEA)は9月月報において、16年の石油輸出国機構(OPEC)非加盟国の産油量が今年から日量50万バレル減少するとの見通しを示した。米国のシェールオイルを筆頭に、ロシアや北海でも減産圧力が強まるなか、現在の原油価格水準では従来の生産体制を維持することが難しいとの分析である。その意味では、原油価格の安値誘導によってタイトオイルのシェア拡大を阻止する、OPECの戦略は一定の成功を収めたと評価できよう。
しかし、それでも10~12月期は日量100万バレル規模の過剰供給が発生する見通しであり、原油相場の本格反発を許容できる環境にはない。60ドル水準まで価格が上昇すればシェールオイルの増産圧力が強まるのは必至である一方、OPECの積極的な増産政策に変化は見られない。今後はイラン産原油の市場復帰のための増産余地を作り出す必要性もあり、安値膠着気味ながらも戻り売り優勢の地合を想定している。定期市場で、期近限月の下げ渋りに対して期先限月の値下がり傾向が顕著になっていることも、長期低迷リスクの高まりを示している。
<プロフィール>
1976年生まれ。筑波大卒業後、大起産業に入社。同社営業本部、NY事務所駐在等を経て現職。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、穀物、農産物などのコモディティー市場全般、及び金融市場をカバー。需給の循環、マネーフロー分析を重視。
編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ) 【秋の相場観】特集より