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9324 安田倉庫

東証P
1,383円
前日比
-13
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PTS
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業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
18.6 0.45 1.95 6.65
時価総額 420億円
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決算発表予定日

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安田倉庫 Research Memo(7):変わらず、変える。YASDA Next Challenge 2024(2)


■新中期経営計画

4. 新中期経営計画の基本戦略
安田倉庫<9324>は基本目標を達成するために、事業ごとに基本戦略を掲げている。物流事業は基本戦略として、付加価値の高いサービスの提供に向けたソリューションの強化とネットワークの拡充を掲げている。具体的には、ソリューション提案型営業の深化、メディカル物流拠点の拡充と体制の強化、IT機器ライフサイクルマネジメント業務体制の拡充、EC物流サービスの拡充、ワークスタイルの変化に適応したオフィスサポートの事業転換、国内外の輸配送ネットワーク拡充、新しい物流技術とDX活用による新サービスの開発が挙げられる。

不動産事業は基本戦略として、保有不動産の維持管理と価値向上施策を通じた事業拡大を掲げている。具体的には、芝浦地区と横浜地区の保有不動産再開発、顧客ニーズに応じた施設の適切なメンテナンスと機能向上である。特に保有不動産の再開発においては、時代と立地に合わせた再開発を進める方針だ。

経営インフラは基本戦略として、「YASDA Value」に磨きをかける経営インフラの高度化を掲げている。具体的には、多様な人材活用と専門人材育成、働きやすい環境の更なる整備、DXの基盤としての情報システム高度化、グループ連携の強化、ステークホルダーの持続可能な発展に貢献するサステナビリティの取り組み推進、コンプライアンス及びリスク管理の徹底とガバナンス強化、サービス品質の維持・向上に向けた品質管理体制と現場力強化、事業基盤の災害強靭化と防災徹底、規律ある財務運営と成長投資の両立、「YASDA Next Challenge(新規事業・新規施策)」を挙げている。

基本戦略は従来の考えの延長にあるが、業績への寄与が見込める基本戦略を以下に紹介する。

(1) メディカル物流拠点の拡充と体制の強化
同社のメディカル物流サービスには定評があり、引き続き高付加価値サービスに対するニーズが強い。このため、メディカル物流サービスのキャパシティ向上に向け、積極的に投資を行っている。「東雲営業所(東京メディカルロジスティクスセンター)」及び「東雲営業所 辰巳倉庫(東京メディカルロジスティクスセンターII)」に加え、東京都大田区昭和島に取得した土地(1,272坪)に、医療機器に関わるすべての物流サービスを提供できる「(仮称)羽田営業所(羽田メディカルロジスティクスセンター)」の開設を2023年8月に予定している。上記2施設と同様に都心や東京港、羽田空港などへのアクセスに優れ、メディカル物流に最適な立地となっている。また2024年3月には、埼玉県加須市に大型の物流倉庫(敷地面積6,400坪、延床面積12,600坪)を開設する計画である。東北自動車道加須IC至近にあるため、首都圏全域から東北地域にアクセスする拠点として一般の物流サービスの機能を強化するとともに、医薬品の保管・管理に対応した設備を導入することでメディカル物流のサービス拡大も目指している。

(2) IT機器物流サービスの拡充
IT機器物流サービスの更なる事業拡大に向けて、2021年3月に「リテールテックJAPAN2021」に初出展し、PCのライフサイクルマネジメントや各種IT機器のキッティング実績を紹介した。なかでもPCのライフサイクルマネジメントは、リモートワークが推進されていることもあり順調に成長しているようで、新中期経営計画の期間中に本格的にサービス展開を開始する予定である。このほか、文部科学省による「GIGAスクール構想※」の実現に向けた整備事業を受託するなど、首都圏を中心に各地でサービスを提供している。

※「GIGAスクール構想」のGIGAとはGlobal and Innovation Gateway for Allの略。児童・生徒へ1人1台のPCまたはタブレットを配布し、全国の学校に高速大容量の通信ネットワークを整備するプロジェクト。


(3) EC物流サービスの拡充
世界的にECの成長が続いているが、日本でECを利用した事業展開を開始する場合は、主な販路として顧客認知の強いAmazonや家電量販店大手のECサイトなどに限定されることが多い。しかし、手数料が割高であることから自社ECサイトで販売したいというニーズが一定数あり、同社の顧客にもこうした要望が少なくなかったようだ。同社は総合物流企業としてこのような顧客の要望に応えるとともに、物流サービスの高付加価値化に向け、EC物流サービスの拡充を掲げている。EC出荷の要望がある顧客に対しては、従来から贈答用ギフトやメッセージカードなど流通加工的な作業を個別対応で請け負っていたので、これを拡充することでビジネスとして育てていく計画だ。既に前中期経営計画期間中にEC物流サービスの準備を進め、2022年4月に「大黒営業所」内にECセンターを開設し、稼働を開始した。まず、海外で製造された高級家電や精密機械をECで直販する既存顧客に対し、流通加工と物流機能を代行するサービスとしてスタートする。ただし、既存顧客・既存商材以外のニーズも強いようで、中期経営計画期間中に事業として拡張していく方針である。

(4) 新サービスの開発
同社は物流事業に関するDX推進を主業務とする「DX事業推進室」を2021年2月に新設した。同社の物流サービスやビジネスモデルの変革・進化を促進することを目的としており、最先端テクノロジー・デジタル技術の活用に向けた検討や実証実験を実施し、効果の見込める技術やシステムについては随時導入を進めている。一例を挙げると、RPA(Robotic Process Automation)活用によるPC上の定型作業自動化、クラウド型配送案件管理システム導入による配車業務の省力化、AI画像解析技術を用いた検品業務自動化・省力化などで、顧客への提案に活用している。このほか、電子(RFID)タグ読取時の位置情報特定において特許技術を持つRFルーカス(株)への出資により、ドライバーをはじめとする人手不足やEC市場拡大による荷量急増への対応など、物流業界の諸課題の解決につなげている。このほかにも、ピースソーター(自動仕分け)システムやスタッカークレーン(自動倉庫)などを導入することで、倉庫の自動化の推進だけでなく、単純作業の省人化と人の手によるきめ細かなサービスとの両立を図っている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《YM》

 提供:フィスコ

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