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【特集】備えあれば憂いなし、防災シーズン突入で「水害対策」関連株を総点検 <株探トップ特集>

梅雨の訪れは、まさに災害シーズン突入の合図ともいえる。激甚化・頻発化する水害に立ち向かう銘柄群への関心が高まりやすい季節だ。

―秋の台風だけじゃない、激甚化+頻発化する自然災害に備える銘柄群はこれだ―

 日本列島は梅雨を迎えているが、今年もまた激甚化に加え頻発化する豪雨災害に警戒が必要だ。気象庁の3ヵ月予報(6-8月)では、6月の降水量は「平年並みまたは多い」とし、大雨への注意を呼び掛けている。また、昨年7月に発生した静岡県熱海市の大雨による土砂災害などを始め、近年では同月に大きな自然災害の発生が増加している。備えあれば憂いなし、「水害対策」関連株を総点検した。

●鬼門の7月、万全の態勢で災害対応へ

 大雨などによる甚大な被害は、9~10月にかけての台風シーズンに発生する傾向が強いが、近年では梅雨入りから7月にかけても大きな豪雨災害が発生している。昨年の7月には、東海地方・関東地方南部を中心に大雨が降り、静岡県熱海市で土石流が発生し大きな被害を出したことは記憶に新しい。また、一昨年も7月には九州で記録的な大雨となり、熊本県の球磨川などで氾濫が相次ぎ多くの死者・行方不明者を出している。岸田文雄首相も17日、中央防災会議において「各地で梅雨入りが発表され、災害が激甚化・頻発化するなかである」とし、万全の態勢で災害対応に臨むよう指示を出した。

 もちろん、台風シーズンの秋口での被害も大きい。2019年の9月には、台風15号が関東に上陸し、社会生活に大きな影響を及ぼした。千葉県や神奈川県を中心に大規模停電が発生し、電気や水道の供給がストップしたことで大規模な混乱を招いた。更に、同年には19号が猛威を振るい河川の氾濫、決壊、土砂災害が各地で発生。続く21号も記録的な豪雨となり、傷の癒えぬ被災地を幾度となく襲っている。

●「5ヵ年加速化対策」は事業規模15兆円

 大規模な水害により都市の脆弱性が露呈するなか、株式市場では「電線地中化」関連「建設コンサルタント」関連などさまざまな銘柄が動意してきた経緯がある。また、21年度からスタートした「防災・減災、国土強靱化のための5ヵ年加速化対策」は、事業規模約15兆円と巨額である点も、投資家の関心を関連銘柄へと向かわせる。激甚化する風水害に加え、巨大地震などへの対策を柱とするが、梅雨入りから秋にまで及ぶ長期にわたる“水害シーズン”へ突入しただけに、「大雨」や「治水」へ向けての取り組みにも改めて関心が集まりそうだ。

 防災関連としては、まず建設コンサルに注目したい。 国土強靱化を背景にコロナ禍にあっても業績が堅調な銘柄が多く、前述の5ヵ年加速化対策でも15兆円という巨額の事業を建設コンサルが縁の下で支える。また、行政や官公庁に絡む仕事が多いこともあり、年度末における“予算消化”の観点から下期偏重の業績であることも大きなポイントといえそうだ。

●「建設コンサル」でオオバ、人・夢・技術、日工営

 オオバ <9765> [東証P]は4月13日、22年5月期業績予想の増額修正を発表。営業利益を14億円から15億円(前の期比12.4%増)に見直したほか、純利益は9億5000万円から10億円(同17.3%増)に増額した。建設コンサル業務の官庁受注及び民間受注がともに順調に推移したことが業績に寄与している。同社は、18年に東電タウンプランニング(東京都港区)と「無電柱化推進事業等を中心とする建設コンサルタント業務の共同事業展開」について業務提携基本合意書を締結しており、電線地中化関連としても注目度が高い。

 昨年10月、単独株式移転により長大の完全親会社として設立された人・夢・技術グループ <9248> [東証P]も、旺盛な国内公共事業を背景に活躍領域を広げている。業績は、単独株式移転により設立されたため対前期増減率はないものの、22年9月期通期の営業利益は26億7000万円を計画。5月12日に発表した上期の同利益は37億7700万円で着地しており通期計画を上回った。なお、従来見通しは据え置いている。

 日本工営 <1954> [東証P]は総合建設コンサルの最大手だが、海外展開で群を抜く。5月13日には、22年6月期の業績予想について、営業利益を77億円から90億円(前期比26.3%増)へ上方修正し、過去最高益を更新する見通しだ。主力のコンサル事業において海外部門の現地作業が好調に進捗していることに加えて、円安も業績を後押ししている。昨年7月には、世界的な大型スポーツ施設の設計を手掛ける英建築設計会社を傘下に収め、同年12月には英最大級の「大規模蓄電プロジェクト建設に日系企業4社とともに着手」しており、ウィズコロナが常態化するなかグローバル展開を強めている。

 そのほかの建設コンサル関連では、航空測量大手で建設コンサルも手掛けるアジア航測 <9233> [東証S]、地質調査業最大手で建設コンサルも行う応用地質 <9755> [東証P]など。加えて、昨年7月に共同株式移転の方式により大日本コンサルタント及びダイヤコンサルタントの完全親会社として設立されたDNホールディングス <7377> [東証S]にも注目したい。

●「電線地中化」感応度高いベルテクス、イトヨーギョ

 電柱地中化関連も、折に触れて物色の矛先が向かう。前述の台風15号が関東に上陸した際には、電線や電柱が壊滅的な状態となり、千葉県を中心とする大規模停電を発生させたことで、「電線地中化」関連株に投資家の視線が集まった。

 共同溝などコンクリート2次製品を主力とするベルテクスコーポレーション <5290> [東証S]は、電線地中化への感応度が高い銘柄だ。豪雨による2次災害を引き起こしやすい電柱の撤去が急務であるという思惑が、時として株価を浮上させる。さまざまな浸水対策事業にも注力している点も見逃せない。22年3月期の営業利益は前の期比16.1%増の61億4300万円となり、続く23年3月期も微増ながらも前期比0.9%増の62億円と増益を確保し、過去最高益を更新する見通しだ。

 そのほかでは、イトーヨーギョー <5287> [東証S]にも注目しておきたい。同社は、コンクリート製品を手掛け、無電柱化に向けた多くの製品にも注力。電線地中化関連として、急動意習性を持ち、特に個人投資家の視線を集めやすい銘柄の一つだ。また、タイガースポリマー <4231> [東証S]は地中埋設用ケーブル防護管「タイレックス」を扱い関連株の一角を担う。

●思惑向かいやすいフジクラなど“電線御三家”

 電線地中化では、古河電気工業 <5801> [東証P]、住友電気工業 <5802> [東証P]、フジクラ <5803> [東証P]の“電線御三家”や、古河電工グループで情報・通信ケーブルを扱う東京特殊電線 <5807> [東証S]にも思惑が向かいやすい。

 このなかフジクラの22年3月期決算は、営業利益が前の期比56.8%増の382億8800万円と高変化を示した。続く23年3月期は前期比9.7%増の420億円を計画し、06年3月期以来17期ぶりの過去最高利益更新が見込まれている。データセンター向けなど情報通信分野が好調で全体業績を押し上げた。今月8日には876円まで買われ年初来高値を更新。現在は全体地合いの悪化もあり上昇一服、700円台後半で頑強展開となっている。また、古河電の23年3月期は営業利益段階で前期比96.9%増の225億円、住友電は同30.9%増の1600億円をそれぞれ計画している。

●技研製、不動テトラ、ライト

 杭圧入引抜機のトップ企業で「インプラント堤防」を展開する技研製作所 <6289> [東証P]は、河川氾濫対策関連として投資家からの関心が高い。海外展開にも注力しており、5月には、シンガポールのグループ会社が、インドの建設会社に技研製の杭圧入引抜機を納入したと発表。巨大市場インドへ本格参入を果たしたことも追い風に、中期経営計画に掲げた長期ビジョン「海外売上比率7割」と「10年後の売上高1000億円」を目指す。22年8月期は、営業利益段階で前期比12.6%増の45億円を計画。防災・減災、国土強靱化施策を中心にインプラント工法の適用範囲の拡大に取り組み、工法採用は順調に増加している。株価は年初来安値圏で下値模索の展開が続くが、じわり値ごろ感も。

 また、地盤改良と消波ブロックで首位級の不動テトラ <1813> [東証P]も関連銘柄の一角として矛先が向かいやすい存在だ。海上土木で高い実績を持つが、エネルギー価格が高騰し再生可能エネルギーに関心が集まるなか、洋上風力発電設備に係る洗掘防止対策工法の一つ「袋型根固め材」で袋型根固め工用袋材を共同開発しており、同発電分野でも活躍のステージが広がりそうだ。23年3月期業績は売上高が前期比18.3%増の790億円、営業利益が同19.5%増の39億4000万円と2ケタ増収増益を予想している。PER9倍台でPBR0.8倍前後と株価指標面からも割安感が顕著だ。

 そのほかでは、斜面・のり面対策で強みを発揮するライト工業 <1926> [東証P]、特殊土木大手の日特建設 <1929> [東証P]も防災分野で活躍期待が高まる。また、集中豪雨が頻発化するなか雨水貯水施設を手掛ける大豊建設 <1822> [東証P]、河川護岸材を扱う前田工繊 <7821> [東証P]、民間気象情報で世界トップクラスのウェザーニューズ <4825> [東証P]などにも目を配っておきたい。

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