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7976 三菱鉛筆

東証P
2,503円
前日比
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PTS
2,493円
14:59 03/19
業績
単位
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時価総額 1,584億円
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セルロースナノファイバー、実用化加速“元年”へ <株探トップ特集>


―ポスト炭素繊維、登場待つ新製品の最前線―

 セルロースナノファイバー(CNF)の実用化が加速している。2014年ごろにポスト炭素繊維素材として産学官連携プロジェクト発足などで注目されて以来、幅広い分野で実用化に向けた取り組みがなされてきた。17年は実用実験から数多くの新たな製品が生まれてくる可能性が高くなってきた。

●素材メーカーがしのぎを削る

 CNFとは、木質パルプなどを原料とし、植物繊維をナノレベルに精製した鋼鉄などよりも軽くて丈夫な植物由来の素材のことを指す。植物細胞の細胞壁・繊維の主成分となるセルロースをナノ(10億分の1)レベルにまで微細化することで得られ、鉄鋼の5分の1の軽さで、強度が同5倍以上あり、熱による変形が小さい(ガラスの50分の1)という優れた特性をもっている。これらを生かしてヘルスケア商品などが実用化されているほか、自動車部品などでも開発研究が進められている。

 再生可能な新素材であるCNFは、環境への負荷が小さいことも注目すべき点の1つだ。昨年末に開催された「エコプロ2016 環境とエネルギーの未来展」内で、日本初の「ナノセルロース展」が行われた。「ナノセルロース展が同時に開催されていたこともあり、弊社のCNF素材についての問い合わせが多くあった。例年以上に注目されている」と話すのは日本製紙 <3863> の新素材販売部の担当者。同社は、ポリプロピレンやポリエチレン、ナイロンなどの樹脂にCNFを混錬して得られるCNF強化樹脂の実用化を目指して富士工場に実証生産設備を設置すると発表している。通常のCNFに樹脂を添加することで、より軽量、高強度で熱による寸法変化を抑えることが可能になる。同社では実用化は未定としながらも、今後は自動車メーカーと部材で連携を図っていく。工場の稼働は6月の予定。

 このCNF強化樹脂を自動車向けに従来の素材から置き換えることができると、車体の重量を20キログラムほど軽量化することが可能となる。京都大学がこの分野の研究で先行しており、王子ホールディングス <3861> や星光PMC <4963> 、三菱ケミカルホールディングス <4188> なども研究プロジェクトに参加している。製品の実用化や生産コストの低減が課題となっているが、これが実現すると政府が目標としている地球温暖化対策の新しい国際ルール「パリ協定」の達成も夢物語ではなくなってきそうだ。

●セルロースの研究は65年以上、今後の成長に期待がかかる

 工業用薬剤首位の第一工業製薬 <4461> は、セルロースを65年以上研究してきた実績がある。15年に三菱鉛筆 <7976> が発売したゲルインクボールペンのインクに同社が生産したCNFが増粘剤として使用され、初の実用化に成功した。同社のIR担当者によると、「三菱鉛筆のボールペンインクに使われており、それが伊勢志摩サミットの応援アイテムに採用されたことで注目度が高まった。サンプルなどの引き合いが増えている」と話す。同社のCNFは、通常よりも繊維がとても細かいセルロースシングルナノファイバー(レオクリスタ)として開発された。「今後も企業のニッチなニーズに応えて、化粧品や塗料の分野で17年中に製品化を目指している」(同)。

 この化粧品分野では日本製紙も負けてはいない。化粧品・食品分野で量産化を目指して島根工場で増産を計画している。CNFの分散の安定性を利用した日焼け止めや、乳化の安定性から乳液、さらに食品では粉末ココアなどへの応用を予定。しばらくは年30トンの生産を目標にしているが、将来的には年100トンの量産を目指しており、各企業で応用開発が進められている。

●既に実用化された商品

 三菱鉛筆が販売している世界初CNF配合のゲルインクボールペン「ユニボールシグノUMN-307」は昨年10月末時点で世界累計2000万本以上売り上げている。これまでの0.5ミリメートル径と0.7ミリメートル径の2種類のボール径に加えて、日本向けに極細の0.38ミリメートル径を発売。画数が多く、細字を好む人たちからは「かすれないことや、なめらかな書き味がよい」(同社経営企画室)との評判をもらっているようだ。

 他には日本製紙のグループ会社の日本製紙クレシアが販売している大人向けおむつ「肌ケア アクティ」がある。CNFには、銀などの金属イオンを高密度に付着させることを容易とする特徴がある。おむつの繊維にCNFを含むことで、抗菌・消臭効果のある金属イオンを大量に保有したシートの実用化に成功している。今年はCNFの量産工場が設置されるなど素材メーカーの動きは活発であり、今後は実用化された製品を見る機会が増えそうだ。

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