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6458 新晃工業

東証P
3,860円
前日比
-55
-1.40%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
18.0 1.66 2.20 8.45
時価総額 1,050億円
比較される銘柄
サンデン, 
西部技研, 
日阪製
決算発表予定日

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新晃工業 Research Memo(8):5つの重点項目に取り組むなかでAHUの市場戦略を展開(1)


■新晃工業<6458>の中期経営計画

3. 中期経営計画「move.2025」の戦略
中期経営計画「move.2025」の前提になっているのがSIMAプロジェクトで、デジタル化・自動化を推進することで、新たなデジタル工場(生産プロセス)の構築と新たな営業スタイルの確立を目指す。こうした新たな製販一体体制を背景に、水AHUの競争優位の維持・向上、ヒートポンプAHUの市場シェア拡大、工事・サービス事業の強化、中国事業の強化、技術深耕・品質向上という5つの重点項目に取り組む計画である。そのなかで水AHUとヒートポンプAHUの市場戦略が成長のカギを握る。また、こうした戦略と並行して、製品を通じた環境負荷低減や人材育成・働き方改革、ガバナンス強化といったESG経営も推進する考えである。

(1) SIMAプロジェクト
中期経営計画達成の前提になっているのがSIMAプロジェクトである。SIMAプロジェクトは、個別受注生産方式をより高度なレベルでデジタル化して原価低減につなげるというプロジェクトで、2019年にスタートした。2023年には増益貢献など一定以上の成果が期待されている。同社の製品は、オーダーメイドで労働集約的なセル生産方式であるため、営業も個別対応となり、生産性を引き上げづらいビジネスとなっていた。そのため、現状のままでは作業員不足や人件費効率の低下などの課題を解消することができなくなる恐れがあった。そこで、SIMAプロジェクトによって営業・設計・積算・製造を一から再定義するとともに、デジタル化・自動化を進めて事業基盤を強化、オーダーメイドでありながら高い生産性のビジネスを目指すことになった。

SIMAプロジェクトでは、製造面においては、BOM(Bill of Materials:部品表や部品構成表のこと)や3DCAD、AIによる工数予測などを導入して、AHUの設計から積算、製造までの作業・工程をデジタル化・自動化し、全作業・全工程をライン生産方式で一気通貫して製造するシステム基盤を持った、新たな工場(生産プロセス)を実現していく考えである。営業面では、高精度の需要予測やBOMを活用することで、図面・見積・納期に関する顧客の疑問に営業現場でリアルタイムに応えることができる、系統化された営業スタイルを確立する方針である。既に同社の需要予測は先行き2年後まで高精度に見通すことができるうえ、AIの画像認識技術を利用した社内の図面検索システムによって、部品を画面上でラフな配置にドラッグ&ドロップするだけで配置に見合った図面を検索することが可能となっている。人口減少やベテランの退職などの影響は将来確実に出ると言われているため、SIMAプロジェクトは同社が社運を賭けたプロジェクトと言える。進捗は順調のようだ。

(2) 5つの重点取組項目
水AHUの強化では、マーケットリーダーとして圧倒的な競争優位を維持・向上させるとともに、成長分野で引き合いの強いデータセンターを深耕する方針である。同社のデータセンター関連売上高は2022年3月期に前期比51%増と高い伸びを示したが、短納期になることが多いことから、SIMAプロジェクトの強みを発揮する方針である。ヒートポンプAHUの強化では、新規参入したチャレンジャーとして知名度の浸透と、ダイキン工業と共同開発したオクージオブランドによるシェア拡大を進めている。従来の顧客に加え地方の設計事務所を中心に新規開拓を推進しており、2022年3月期には売上高が同114%増と大きく伸びた。

工事・サービス事業の強化については、メーカー系の強みを生かし、水AHU中心から空調工事全般へと業容を広げるとともに、技術領域の拡張と利益率の向上を目指している。なかでもヒートポンプAHU周辺技術を強化しており、2022年3月期には売上高が前期比6.2%増と伸び、利益率の改善も進んだ。成長余地の大きい中国事業の強化は、高機能空調機にシフトするなど採算性重視に販売戦略を転換し、利益体質の構築を目指している。徹底した原価管理も進めており、2022年3月期の売上高は同17.3%増となり黒字化も達成したが、2023年3月期は同国のゼロコロナ政策によって苦戦気味となっている(足下は回復傾向のもよう)。一方、同国においてはゼロコロナ政策でPCR検査が日常化していることから、「移動式PCR検査ユニット(月産最大400台)」を製品化した。

技術深耕・品質向上に関しては、技術開発の推進と品質大網への落とし込みを目指している。解析やAI、IoTなどデジタル技術を積極的に活用し、クレームゼロに向けた製品・サービスの品質向上にも注力している。2022年3月期は、高効率ファン・コイルの適用製品の強化、デジタル解析技術・SIMA周辺技術の拡充、エアスタ※やSINKOテクニカルセンターを活用した技術情報の発信を進めた。さらに2024年3月期には、従来の実験設備ではカバーできない高能力の試験が可能となる実験棟を神奈川工場に建設する計画である。なお、2021年9月にリニューアルした神奈川県秦野市にあるSINKOテクニカルセンターでは、製品開発技術やSINKOのものづくり、環境・健康に配慮した最新の製品展示、空調機の騒音や送風機の運転特性の体感など様々なコンテンツを用意している。また岡山工場においても、2022年7月につやま産業支援センター主催の「つやまエリアオープンファクトリー」に参加し、小中学生とその保護者が工場の様子や製品実機を見学できるイベントを実施した。

※エアスタ(SINKO AIR DESIGN STUDIO):大阪府寝屋川市にある空調機のショールーム。建物全体が体験型ショールームとなっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《NS》

 提供:フィスコ

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