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6165 パンチ工業

東証S
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時価総額 109億円
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パンチ Research Memo(5):製販一体企業としての優位性を活かした高収益企業を目指す


■新・中期経営計画「バリュークリエーション2020」

パンチ工業<6165>は2016年3月に新・中期経営計画「バリュークリエーション2020」を発表した。前中期経営計画(2013?2015年度)で取り組んできた「グローバル化」「新市場の開拓」「高収益事業モデルへの転換」をさらに深化させ、グローバル企業として金型部品業界でのトップブランドを確立し、製販一体企業としての優位性を活かした高収益企業を目指していく。

(1)基本戦略

中期計画の基本戦略として、「販売5極体制」「お客様サービスの向上」「高収益事業の推進とR&D強化」「働き方改革」の4つのテーマに取り組んでいく方針だ。

a)販売5極体制
同社の売上高は日本と中国で約90%を占めており、その他アジアや欧米市場に関しては約10%と低水準となっている。とりわけ、欧米市場は現地の代理店経由での販売にとどまっている。グローバル企業として成長していくためには、欧米市場でも大手企業を顧客として獲得し、売上規模の拡大を図ることが今後の経営課題と考えている。

こうしたことから、同社では欧米市場開拓の第1弾として、米国イリノイ州に販売子会社を設立し、2017年4月より営業を開始すると発表した。当面の顧客ターゲットとしては競争の激しい自動車業界ではなく、医療機器業界の開拓に注力していく方針となっている。注射針やカテーテル製造用の金型部品については、同社が得意とする高精度な技術が要求されること、また、ディスポーザブル機器であるため生産数量が大きく、金型部品の需要も安定して見込めるためだ。既に、代理店経由では若干ながら取引実績があるが、今後直販体制を構築していくことで取引規模を大きくしていきたい考えだ。現状、北米向け売上高は年間2?4億円程度にとどまっているが、直販体制を構築することで中期的に10?20億円の売上規模を目指していく。

b)お客様サービスの向上
顧客サービスの向上として、2つの取り組みを進めている。第1に、グローバルソーシング(最適調達)による顧客満足度の向上だ。前述したように今期からマレーシア子会社に専門部署を設け、既に欧州向けで売上拡大の効果が出始めている。また、第2には前述したリバースエンジニアリング事業が挙げられる。顧客サービスの向上を進めていくことで、顧客とのパイプをより太くし、Win-Winの関係を構築していく考えだ。

c)高収益事業の推進とR&Dの強化
ベトナム工場を起点としたグループ生産体制の最適化を図り、高収益化を実現していく。最初の3年間は先行投資期間と位置付け、ベトナム工場の立ち上げ及び原価改善、中国生産拠点内からの生産移管を進めていく。残り2年間でベトナム工場の生産能力強化と国内生産拠点からの一部工程の生産移管を行い、中国と日本では空いたラインで特注品や高付加価値製品の生産を強化する。

また、R&Dの強化として食品・飲料、医療機器、航空宇宙産業関連への研究開発投資や設備投資、関連する認証取得などに取り組んでいく。これら3つの業界については、景気変動の影響を受けにくい業界であると同時に、将来の成長も見込まれる。既に、食品・飲料や医療関連では規模は小さいながらも売上高が増え始めている。

航空宇宙産業分野では世界標準の品質マネジメントシステムであるAS9100認証を、中国子会社で2015年1月に取得し、また、2016年3月には、同子会社が航空宇宙産業における特殊工程である「熱処理工程」においてNadcap※の認証も取得した。ただ、この分野は非常に高い安全性と信頼性が要求されるため参入障壁は高い。このため、今回の中期経営計画では顧客と商談ができるレベルまでの関係構築を目標としており、業績面で寄与するのは早くても2021年度以降となる。

※航空宇宙産業における特殊工程や製品に対する国際的な認証制度のことで、米国のPRI (Performance Review Institute)が審査機関として運営している。世界の航空宇宙関連企業である機体、エンジン及び搭載機器のプライムメーカー各社がサプライヤーに発注する製品に特殊工程が含まれる場合に、製造委託する条件としてNadcapの認証取得を義務付けている場合が多い。

d)働き方改革
社員重視の経営による組織力の強化を進めていく。創業から40年を経て、改めて「ものづくり」や「売り方」「働き方」などに対する考え方を見直し、社員の意識改革を図っていくほか、「人事制度」についてもグローバル企業として成長していくのに適した人事制度の構築を目指す。

(2)経営目標値

具体的な経営目標値として、2段階に分けて設定している。第1段階目は最初の3年間に当たり、ベトナム工場の立ち上げなど投資による助走期間となる。業績目標値としては2019年3月期に売上高420億円以上、営業利益25億円以上、当期純利益17億円以上とした。その後、2年間はグループ新生産体制の本格始動による収益性向上を見込み、最終年度となる2021年3月期に売上高470億円以上、営業利益33億円以上、当期純利益23億円以上を目標として掲げた。

また、今後5年間の総投資額は140億円を予定している。過去4年間の総投資額が41億円であったことからすると、年間では3倍弱の投資規模となる。ベトナム工場への投資のほか高付加価値品を強化するためのR&D設備への投資、また、国内や中国で老朽化した設備の更新投資などが含まれる。更新に当たっては、生産性が向上する自動化ラインに置き換えていく予定だ。設備投資資金はキャッシュフローの範囲内に収まる見込みだが、不足すれば借入金等で賄う可能性もある。

営業利益率は2016年3月期の5.4%から2019年3月期は6.0%、2021年3月期は7.0%を見込んでいる。最初の3年間は先行投資期間に当たるため収益性もほとんど変わらないが、後半の2年間では投資効果が顕在化し、収益性の向上が進むと見込んでいる。収益性向上の要因としては、グループ生産の最適化に伴う原価低減と高付加価値品の売上構成比上昇による。また、ROEは2016年3月期の8.9%から2021年3月期は11.0%となる見通しだ。

同社は世界の金型用部品の市場規模は2016年で約5,100億円規模と見ており、今後も年率数%の緩やかな成長が続く見通し。現在、同社の市場シェアは7%程度だが、精密金型用部品に絞ったシェアで見ればもう少し高くなる。それでも同社が開拓できる領域は世界で見ればまだ多く残されており、成長ポテンシャルは大きい。特注品と標準製品の両方の顧客ニーズに対応できる開発力やサポート力を強みに、新規顧客の開拓や既存顧客での取引シェア拡大を進めていくことで、更なる業績成長が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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