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5444 大和工業

東証P
8,049円
前日比
+170
+2.16%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
7.7 0.99 3.73 79.17
時価総額 5,232億円
比較される銘柄
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決算発表予定日

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「トランプノミクス相場」が始まった(上)交錯する期待と不安 <株探トップ特集>


―変わった潮目、復活のオールドエコノミー株―

 8日の米大統領選挙を経て、当初、泡沫候補とみられていた共和党のドナルド・トランプ氏が第45代米国大統領に就任することが決まった。民主党のヒラリー・クリントン氏を下しての勝利にマーケットは大変動した。当初急落した東京市場は一転、急伸したほか、NYダウ平均は最高値を更新している。市場ではインフラ関連株など「トランプ関連株」が乱舞している。しかし、その政策には、不透明感が強く一転暴落の危険性もはらむ。期待と不安が交錯するなかトランプノミクス相場はスタートした。

●評価一変でトランプ氏の経済政策に期待、世界市場の潮目変わる

 米大統領選を機に、世界の金融市場は激変した。いま株式市場で買われているのは、 建機鉄鋼 化学など「オールドエコノミー株」であり、「IT銘柄」の勢いは弱い。世界の金融市場はトランプ氏勝利で、潮目が一気に変わった格好だ。

 その変貌を最も象徴したのが、開票の真っただ中で取引が行われた9日の東京市場だった。トランプ氏勝利が有力となると株価は急落し大幅な円高が進んだ。しかし、10日以降の東京株式市場は一転、急反騰した。

 「トランプ氏の勝利で当初は狼狽売りが出たが、共和党が上下両院でも勝利する見通しになると市場の見方は一変した」(アナリスト)という。数々の暴言で不評を買ったトランプ氏だが、その経済政策には「評価できるものは少なくない」(ファンドマネジャー)。

 トランプ氏は、経済成長率を現在の約2倍となる4%に引き上げることを公約する。なかでも「10年間で1兆ドル(約108兆円)のインフラ整備」と「連邦法人税の35%から15%にへの引き下げ」などを掲げている。法人税の引き下げなどを含め「少なくとも2500万人の雇用を創出する」としている。

●悪評判の揺り戻しのポジティブ・サプライズ、銅など非鉄市況も急伸

 SBI証券の鈴木英之投資調査部長は、「これまでトランプ氏の悪い点ばかり取り上げられており、良い面には全く焦点が当たってこなかった」と指摘する。その分、市場はポジティブ・サプライズで値が大きく動きやすい状況にあるようだ。

 とりわけ、米国でのインフラ投資への期待は強く、米国ではキャタピラーが急伸したほか、日本では競合のコマツ <6301> や日立建機 <6305> が買われた。また、米国電炉ニューコアと現地合弁会社を持つ大和工業 <5444> 、塩化ビニール樹脂で世界最大手の信越化学工業 <4063> 、米国にセメント工場を持つ三菱マテリアル <5711> などが急伸した。非鉄市場では、銅価格などが急伸している。

●米長期金利の急上昇で海外投資家動く、「レーガノミクス」想起の見方も

 同時に、金融市場の注目を一身に集めるのが、米国の長期金利だ。今月初旬に1.7%台だった米10年物国債利回りは15日には一時2.30%とほぼ11ヵ月ぶりの水準に急上昇した。

 「米長期金利が2%台に上昇してきた意味は大きい」と日本アジア証券の清水三津雄ストラテジストはいう。「これまでデフレ対応で債券重視だったポートフォリオをインフレヘッジも意識し、株式重視に変えざるを得ないだろう」とみている。

 トランプ次期大統領の誕生による潮目の変化で、市場にはヘッジファンドが跋扈(ばっこ)しているとの見方に加え「長期筋である年金などの資金もポートフォリオの組み直しに動きつつあるだろう」(清水氏)との観測が出ている。

 足もとの米長期金利上昇は「米国の景気拡大を受けたもの」との見方がある一方、「米国の財政赤字拡大を懸念した動き」との分析もある。ただ、米国金利上昇で日本の長期金利も上昇し始めた。トランプ氏の登場により、世界経済はデフレ基調を脱してインフレ基調へと向かうとの期待もある。

 さらにトランプ氏の政策に対しては、減税のほか社会保障費削減、軍事費拡大、規制緩和が実施されたレーガン政権(1981年~89年)の「レーガノミクス」と類似する効果を期待する向きもあるようだ。レーガン政権下でGDPは1.9倍となり、NYダウも約2.8倍に急伸している。高金利の当時と超低金利の現在とでは世界情勢に異なる点は多いが、「レジームチェンジ」に期待する市場関係者は多い。米国発の脱デフレ策を先取りし、市場には低PBR銘柄に注目する動きも出ている。PBR1倍割れで目立つのは銀行商社鉄鋼海運などのオールドエコノミー株だ。

●スタートは非常に抑制的、当面は失敗なければ株価上昇も

 短期急伸した市場だが、「いまは理想買いの状態であり、目先は行き過ぎの反動も」(SBI証券・鈴木氏)との見方は強い。ただ、第一生命経済研究所の桂畑誠治主任エコノミストは、当選後のここ数日のトランプ氏の姿勢は「非常に抑制されているようにみえる。目立った失敗が出るまで、当面、株価は上昇基調かもしれない」という。

 1月に発足する新政権での、人材登用に関しては、大統領首席補佐官に共和党のプリーバス氏を起用し、党主流派に配慮の姿勢をみせた。また、廃止を主張していた医療保険制度改革法(オバマケア)も修正で対応する動きを見せている。

 しかし、トランプ政権のスタートは来年1月からであり、「北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し」、「移民規制の強化」、「米軍駐留経費の負担増」などの公約はどれも強硬に実施すれば、トランプ新政権に対する信頼を大きく揺るがしかねない性格のものだ。期待の高まる「トランプノミクス相場」だが、今後の人事や発言次第で株価は一転、急落する危険性もはらんでいる。

※「トランプノミクス相場」が始まった(下)に続く。

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