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4588 オンコリス

東証G
706円
前日比
-4
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PTS
700円
23:40 05/02
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
10.10
時価総額 148億円
決算発表予定日

銘柄ニュース

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オンコリス Research Memo(1):テロメライシンは2025年の上市に向けた体制整備を進める


■要約

オンコリスバイオファーマ<4588>は、腫瘍溶解ウイルスによるがん治療薬(テロメライシン)や重症ウイルス感染症治療薬を事業領域とする、2004年に設立されたバイオベンチャーである。ライセンス契約締結による契約金収入・マイルストーン収入や上市後のロイヤリティ収入を得るライセンス型事業モデルと、自社で製造販売承認を得て商用製剤を販売提携先の製薬会社に供給して収入を得る製薬企業型事業モデルを、パイプラインの状況等に応じて選択するハイブリッド型の事業モデルで収益化を目指している。

1. テロメライシンの開発動向
テロメライシンは、国内における食道がんを対象とした第2相臨床試験(放射線併用療法)のトップラインデータを2023年10月に発表できる見通しで、良好な結果であれば2024年内に販売承認申請を行い2025年の上市を目指す。販売開始に向けて必要となる社内の組織体制の構築に着手しているほか、国内販売パートナーとの提携交渉を進めている。食道がんを対象とした国内のテロメライシンの潜在市場規模としては、当初の適応対象である「手術不適な局所進行性食道がん」の患者だけで100億円程度を見込める。CRT(化学放射線療法)との併用など適応拡大すれば、250億円程度まで可能と同社では試算している。一方、米国では胃がん患者の2nd-Line治療として、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法での共同開発体制を米製薬企業と構築することに合意している。まずは、医師主導の第2相臨床試験を2024年に開始し、良好なデータが得られれば企業治験に切り替える予定である。同領域で開発に成功すれば、米国でも数百億円規模の市場規模になることが想定される。

2. その他パイプラインの動向
2020年6月に米Transposon Therapeutics, Inc.(以下、トランスポゾン)と総額3億米ドル以上の独占的ライセンス契約を締結した「OBP-601」については、欧米で神経変性疾患を対象とした前期第2相臨床試験を複数進めている。このうち「進行性核上性麻痺(以下、PSP)※1」、「筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)※2及び前頭側頭型認知症(以下、FTD)※3」については組入れが完了し、PSPについては中間解析の結果を既に受領しているが、トランスポゾンの意向により現在は開示を控える方針としている。有効性データに関しては戦略上非開示としているが、良好な結果が確認されればトランスポゾンがメガファーマと再ライセンス契約を締結し、グローバル治験に進む可能性もあり、今後の動向は要注目となる。新型コロナウイルス感染症治療薬として開発を進めていた「OBP-2011」は、テロメライシンへのリソース集中等の理由から、開発の優先順位を下げ鹿児島大学にて研究を継続することになった。また次世代テロメライシン「OBP-702」は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、AMED)からの助成金が得られれば、岡山大学で医師主導の臨床研究を進める予定である。テロメスキャンはテロメライシンに注力するため優先順位を引き下げているが、CTC自動検査プラットフォームを完成させ、医療機関に展開することを目標としている。

※1 進行性核上性麻痺(PSP:Progressive Supranuclear Palsy)は、脳の神経細胞が減少することにより、転びやすくなったり、しゃべりにくくなったりするなどの症状が見られる疾患。発症は40歳以降で高齢者に多く発症し、平均生存期間は6~7年程度。
※2 筋萎縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic Lateral Sclerosis)は、脳の運動を司る神経が何らかの理由で障害を受け、徐々に機能しなくなることで、四肢や呼吸に必要な筋肉が痩せて力がなくなっていく進行性の疾患。平均生存期間は3年程度。
※3 前頭側頭型認知症(FTD:Frontotemporal Degeneration)は、主として初老期に発症し、大脳の前頭葉や側頭葉を中心とする神経細胞の変性・脱落により、人格変化や行動障害、失語症、認知機能障害、運動障害などが緩徐に進行する神経変性疾患。平均生存期間は9年程度。


3. 業績動向
2023年12月期第2四半期累計(2023年1月~6月)の売上高は前年同期比363百万円減少の63百万円、営業損失は900百万円(前年同期は658百万円の損失)となった。売上高は中外製薬からのテロメライシンに係る開発協力金収入がなくなったことで減収となった。減収による売上総利益の減少に加えて、研究開発費が同51百万円増加したことが営業損失の拡大要因となった。2023年12月期の業績見通しは新規契約締結に伴う契約一時金等が計上される可能性があり、現時点で合理的な数値の算出が困難なことから非開示としている。なお、同社はテロメライシンの上市に向けた製造販売体制の構築並びに事業運営にかかる費用等の資金を調達するため、2023年7月に第三者割当による第19回新株予約権(行使価額修正条項付、下限行使価額313円、潜在発行株数3,460千株、最大希薄化率19.98%)を発行した。同年8月末までに379千株が行使され、約2億円を調達している。

■ Key Points
・テロメライシンは2023年10月に国内臨床試験結果を発表予定、米国では共同開発を開始
・「OBP-601」は前期第2相臨床試験が順調に進捗、POCを取得できれば大型契約に発展する可能性
・2023年12月期は新規契約等の未確定要素があるため非開示とするが、費用は若干増加する見通し
・テロメライシンの2025年上市が収益化に向けた転換点となる見通し

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SO》

 提供:フィスコ

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