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3392 デリカフHD

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デリカフHD Research Memo(4):19/3期は貯蔵機能を持つ物流センターを新設し、連続増収増益を目指す


■今後の見通し

1. 2019年3月期業績見通し
デリカフーズホールディングス<3392>の2019年3月期の連結業績は、売上高が前期比4.7%増の39,000百万円、営業利益が同5.1%増の730百万円、経常利益が同4.9%増の800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同0.2%増の477百万円と増収増益となる見通し。引き続き人手不足を背景としたカット野菜の需要が外食、中食業界向けで拡大する見通しで、カット野菜を中心に売上高の拡大が続くと見られる。

2019年3月期は重点施策として、「貯蔵機能を持つ新物流拠点の開設」「物流インフラの拡充及び受託サービスの展開」「業務提携による協業」に取り組んでいく方針となっている。

(1) 貯蔵機能を持つ新物流拠点の開設
ここ数年、天候不順による野菜収穫量の減少、品質の悪化が業績に影響を与えるケースが多くなってきたことを受け、新たな貯蔵機能を持った物流センターの構築を進めていく。既に、2017年12月に平和島センターを開設したのに続き、2018年5月には西日本エリアの貯蔵機能付き物流センターの中核拠点として中京FSセンター(愛知県弥富市)を開設した。設備投資額は750百万円で、年間売上能力は約30億円の規模となる。

同センターでは青果物を温度別に貯蔵する機能を有している。貯蔵能力は約1万ケース(300パレット、約100トン)となる。レタスを例にすると、10日間程度貯蔵できることになる。天候不順でレタスの収穫量が減少しそうな場合は、同貯蔵センターに備蓄しておき、仮に国内での仕入れが途絶えても貯蔵期間内に海外から調達を進めることで安定供給を実現することが可能となる。現在、輸入に関しては取扱量が少ないこともあり商社経由で行っているが、コスト高という問題があった。今後、輸入量が拡大してくれば直接取引に切り替えることも検討しており、そのために同センターではコンテナトレーラー(40フィート長の大型トレーラー)のドッキングスペースも完備している。1度の調達量が大きくなるため在庫リスクが生じるが、自社物流による幹線便ルートを構築し、東名阪の各拠点に一斉出荷することが可能となったため、その懸念はなくなり直接輸入に切り替えるうえでの問題はなくなっている。貯蔵センター稼働後は天候不順による収益悪化リスクの軽減が図れると同時に、収益性の向上が期待できることになる。

同様に、2018年12月には東日本エリアにおける貯蔵機能付き物流センターの中核拠点となる埼玉FSセンター(埼玉県八潮市)を開設する。設備投資額は1,300百万円で、年間売上能力は約40億円となる。同センターでは最新の在庫管理システムを導入したほか、自動化・省人化・システム化により管理コスト、作業コストの低減を実現した物流拠点となっていることが特徴だ。貯蔵能力としては約1.5万ケース(400パレット、約135トン)となり、温度別貯蔵機能を有しているほか、コンテナトレーラーのドッキングスペースも完備している。

両拠点の開設により、売上能力は70億円程度拡大することになるが、一部事業所を集約することも検討しているため、純増になるわけではない。

その他、カット野菜の需要拡大に対応するため、九州または中国・四国エリアで新工場の候補地を探索しており、2018年12月頃に候補地の確定及び着工に入り、2019年秋頃の稼働開始を予定している。設備投資額としては約30億円、年間売上能力としては35億円程度の規模になると見られる。

(2) 物流インフラの拡充及び受託サービスの展開
農産物の物流インフラに関しては、各地のJA(農協)→市場→小売店というBtoCを基本とした物流網となっており、同社が展開する業務用として活用するには決して効率の良いものとは言えなかった。こうした状況を鑑み、物流網のリスク軽減及び物流コストの効率化を目的として同社は、2014年10月に物流子会社となるエフエスロジスティックスを設立、自社グループ内で物流事業を開始した。2017年末時点で東京エリアの店舗配送の20%を自社物流で賄うまでになっている。

同社では2017年4月に名古屋に営業所を開設し、2018年3月期より東京、名古屋、大阪の幹線便についての運行を開始したほか、2018年4月に神奈川営業所を開設、2019年3月期中に大阪、奈良にも営業所を開設していく予定になっており、各拠点で店舗までの配送を内製化することで、コスト削減を目指していく。

また、物流受託請負サービスについてもニーズに合わせてサービスメニューを拡充している。比較的物量の少ない平日便の空きスペースを利用して店舗まで配送する「平日おねうち便」、東京、名古屋、大阪間の幹線便の空きスペースを利用して各拠点に配送する「幹線あいのり便」、衛生用品等の資材を野菜と一緒に届けることで、宅急便等の費用を削減できる「資材おたすけ便」等だ。同社にとっては追加のコストは掛からないため、売上げが増加すればそのまま利益に貢献することになる。あくまで同事業の補完的なサービスではあるが、収益力の強化につながるサービスとして注目される。

なお、物流業界ではドライバー不足が慢性化しているが、同社においては順調にドライバーの確保が進んでいるようで、従業員数は69名まで拡大している。人材の採用が順調に進んでいる要因は、東証1部上場企業のグループ会社としての安心感があることや、労働条件、賃金体系がしっかりしており、口コミでその評判が広まっていること、また、勤続率を高めるための定期的な表彰制度等、同社独自の創意工夫を凝らしていることも人材の確保が順調に進んでいる要因になっている。

(3) 業務提携による協業
同社は青果物の流通インフラ企業として確固たる地位を確立するため、2017年10月に農総研と業務提携を発表したほか、2018年3月にはJA全農との業務提携も発表した。それぞれ2019年3月期より具体的な協業に取り組んでいく予定になっている。

a) 農業総合研究所との提携
農総研とは「青果物の流通インフラ構築」に向けた協業を進めていく。農総研は、全国約7,200名の生産者と都市部を中心とした約1,000店舗の小売店を繋ぐプラットフォームを提供し、ここ数年成長を続けている企業で、顧客対象等が同社と直接競合せず、シナジーが期待できることから業務提携に至った(契約生産者は同社が大規模生産者、農総研が中小規模生産者、販売先は同社が外食・中食向け、農総研は小売店向け)。

提携の主な内容は、農総研の物流インフラとして同社が全国に展開する物流センターを活用し、調達から集荷、各店配送の物流インフラを提供していくというもの。農総研にとっては同社の物流インフラを活用することで、今まで以上に商品の安心・安全が確保できることになる。また、同社が独自に構築してきた「デリカスコア(抗酸化力などの成分分析による野菜の見える化)」を農総研の契約農家に導入し、農総研が消費者向けに提供する情報に活用していくことも予定している。まずは、同社の物流拠点の活用から進めていく計画で、中京FSセンター、埼玉FSセンターが稼働してから順次スタートする計画になっている。業績に与える影響は軽微だが、シナジー効果も期待できることから中長期的には収益貢献する取り組みとして注目される。

b) JA全農との業務提携
JA全農との業務提携では、主に米作から転作する優良生産者の開拓と育成支援、国内産地におけるGAP※の普及推進による優良生産者の育成、全国に展開するインフラ(物流及び拠点)の相互活用、青果物の価値向上に向けた共同研究及び共同開発、収穫量予測システム及び在庫管理システムの共同開発、協業による販路拡大等に取り組んでいく。

※GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)とは、農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組みのこと。これを多くの生産者や産地が取り入れることにより、結果として持続可能性の確保、競争力の強化、品質の向上、農業経営の改善や効率化に資するとともに、消費者や実需者の信頼の確保が期待される。


JA全農の物流ネットワークは生産者から各市場への配送というBtoC(一般消費者向け)となっており、業務用卸の同社とは競合していない。ただ、青果物の国内需要はBtoCからBtoB(業務用)にシフトしているのが現状で、JA改革が求められる一因ともなっている。具体的には、以前は青果物の国内需要のうち約70%はBtoC向けであったが、現在は外食・中食市場の拡大によりBtoC向けの比率は45%まで低下している。逆に言えば、BtoB向けの市場が年々拡大しているわけだが、こうした環境の変化もあって、JA改革が求められる一因ともなっている。

今回の業務提携によって同社は、JA組合員の中でも業務用への出荷に意欲的な生産者を取り込んでいくことが可能となるほか、物流拠点の相互活用によるコスト低減メリットなども期待できることになる。

また、新たな取り組みとしてAI技術を使った収穫量予測システムの共同開発についても注目される。2018年秋からレタスで実証実験を開始する予定で、2021年の実用化を目指している。予測システムに畑の面積や場所、レタスを植えた日等を入力し、現地の気温等を順次追加していくことで、収穫量が2週間前に把握できるようになる。外食や中食業界では年間を通じた数量、価格を収穫前に決めることが多く、天候不順で収穫量が予定を下回った場合は、卸業者が市場から高値で仕入れて必要量を顧客に販売するため、収益悪化要因となっていた。同システムが実用化されれば、収穫量の減少予測が出た際に(市場で価格が高騰する前に)、事前に市場で安く仕入れて貯蔵施設に備蓄することが可能となるほか、輸入品についても余裕をもって調達できるようになる。結果的に、天候不順による野菜価格の高騰による収益悪化リスクを軽減することが可能となる。同社ではレタスの実験を踏まえて、予測システムを導入する産地や農産物を拡げていく予定にしている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《TN》

 提供:フィスコ

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