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1870 矢作建設工業

東証P
1,463円
前日比
+10
+0.69%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
10.0 0.97 4.10 59.45
時価総額 653億円
比較される銘柄
大成建, 
大林組, 
鹿島
決算発表予定日

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地震大国ニッポン、「首都直下型」「南海トラフ」対策の守護神銘柄を追う <株探トップ特集>


―巨大地震発生への不安増幅、関東大震災から節目の100年で関心も―

 ここ地震が頻発化している。特に5月は顕著で、今後30年以内に70%という大きな確率で発生すると予想される「首都直下型地震」や「南海トラフ地震」など巨大地震との関連も不安視される。また、今年は未曾有(みぞう)の被害を出した関東大震災の発生から100年という節目の年でもあるだけに、「防災」に向けていっそう関心が高まりそうだ。地震対策関連株を点検した。

●5月は震度4以上が17回

 5月5日には、石川県能登地方で震度6強を観測したが、同月には全国で最大震度4以上の地震が計17回発生した。震度3以上となると実に44回に上る。ことさら不安を煽るわけではないが、やはり脳裏をよぎるのが大地震への備えだ。メディアでの専門家のコメントを見ると、現在のところ将来起こり得る大地震とは無関係との意見が大半だが、不安が募るのは幾度となく大地震に翻弄(ほんろう)され続けてきた“地震大国ニッポン”の住人だからなのかもしれない。

 住友生命保険が2月に発表した「スミセイ『わが家の防災』アンケート 2023」でも、最も備えが必要だと思う災害については約8割(76.2%)が「地震」と回答。2016年のアンケート開始以来、8年連続1位となり、2位の「台風」(8.9%)や「大雨・洪水」(7.6%)を大きく引き離しており、地震対策への群を抜く関心の高さを印象付けるものとなった。

 「地震対策」関連銘柄の裾野は広い。免震・耐震補強 、ITを活用した緊急地震速報などの防災システム、建設コンサルから非常食まで多岐にわたる。日本は1923年に発生した関東大震災、1995年の阪神・淡路大震災、そして記憶に新しい2011年の東日本大震災など多くの被害に遭ってきたが、新たな大地震の発生が予測されるなか、さまざまな状況に対応した一層の対策が求められている。

●免震・制震でオイレス

 地震対策といえば、まずは建造物の「免震装置」や「耐震補強」を思い浮かべる人は多いはずだ。これらの対策を施すことで、建造物への被害を最小限に抑えることができるだけに、備えあれば憂いなし。同分野での技術開発も日々進化しており、大規模地震が予想されるなか、生命そして財産を守るという重要な役割を担う。近年では、自然災害などで被害に遭った場合に損害を最小限にとどめることで、中核事業の継続や早期復旧を目指す事業継続計画(BCP)の観点からも注目度が高い。

 この分野では、免震・制震装置で高いシェアを誇るオイレス工業 <6282> [東証P]に注目。構造機器事業で、橋梁向けの耐震補強関連の増加を見込んでおり、23年3月期の営業利益は前の期比13.7%減の50億5600万円になったものの、続く24年3月期は前期比20.6%増の61億円に急回復する見通しだ。なかでも同社の免震橋梁は、阪神・淡路大震災クラスの地震にも対応できるように桁を免震支承により支持することで、地震動の長周期化と減衰効果により地震から免れるもので高い評価を得ている。株価は25日移動平均線をサポートラインに上昇し、21日には2029円まで買われ年初来高値を更新した。きょうは小幅にマイナスも、高値圏で頑強展開。

●矢作建、鹿島、住友理工にも活躍期待

 矢作建設工業 <1870> [東証P]も独自の完全外付耐震補強工法「ピタコラム」をはじめとして、急斜面地の補強などさまざまな防災・減災技術でシェア獲得にまい進している。24年3月期の営業利益は、前期比31.7%増の95億円と大幅増益を見込み、4期ぶりに最高益を更新する見通しだ。不動産事業では過去最大規模の自社開発用地の販売を予定していることなどが牽引するという。株価は年初来高値圏に位置するものの、予想PER8倍台、PBR0.8倍近辺と依然として水準訂正余地は大きいといえそうだ。

 鹿島 <1812> [東証P]は今月6日、制御層制震構造「KaCLASS」を開発したと発表。巨大地震に伴い発生する、長周期地震動による超高層建物全体の揺れを、従来の耐震・制震架構と比べ大幅に低減するだけでなく、自由度の高い開放的な居室空間を実現できるという。KaCLASSについては、既に阪急阪神不動産が事業を進める超高層タワーレジデンス「ジオタワー大阪十三」に初導入しており、巨大地震の発生が予想される状況下で活躍期待が高まる。同社の24年3月期の営業利益は前期比15.0%増の1420億円を計画しているが、国内有力証券では同利益予想を増額し、目標株価も2400円に引き上げている。

 また、住友電工系で自動車用防振ゴム大手の住友理工 <5191> [東証P]は、木造住宅用制震システム「TRCダンパー」を手掛けており、この分野でも注目したい。同制震システムは、建物の中に制震装置を設置し、地震エネルギーを吸収することで揺れを低減する対策。耐震よりも強く、免震よりも手軽に地震対策が可能になるという。業績も好調継続、23年3月期は営業利益が前の期比15倍となる165億6000万円となり、続く24年3月期も前期比15.3%増の191億円を計画している。

●リンクユー、「ゆれしる」成長軌道に乗る

  緊急地震速報など防災ソリューションも、身を守るうえで重要な存在だ。近年では、AI(人工知能)を用いた研究、予測も活発に行われている。また、さまざまな側面から、防災・減災に向けて取り組む企業も増加している。

 Link-U <4446> [東証P]は電子書籍とマンガ配信を展開するが、自社プロダクトである地震予測AIサービス「ゆれしる」も販売チャネルの開拓で成長軌道に乗っており面白い存在だ。ゆれしるでは、想定エリアでマグニチュード6クラス相当の地震が1週間~1ヵ月以内に発生することを予測しているという。業績も成長ロードを走る。14日には23年7月期業績予想の上方修正を発表。売上高を28億9000万円から30億600万円(前期比32.1%増)へ、営業利益を2億5100万円から4億600万円(同3.5倍)へ増額している。集英社と共同運営するマンガアプリ「ゼブラック」に集英社公式書店サービスが統合されたことで規模が拡大した。

●防災ソリューションで活躍領域広げるTOA

 放送・音響システム大手TOA <6809> [東証P]は防災ソリューションにも注力している。長年培ってきた「音の技術」を活用し、減災に取り組むなど活躍領域を広げている。同社の手掛ける緊急地震速報音声報知システムは、全国に配置した地震計(気象庁:約200ヵ所、科学技術研究所:約800ヵ所)を使い、地震の位置、大きさを瞬時に推定し、大きな揺れが来る前に音声で知らせ危険回避行動を促すというもの。同社の24年3月期の営業利益は前期比45.9%増の25億円を見込む。中期経営基本計画(22年3月期~26年3月期)の後半となるフェーズ2がスタート。最終年度となる26年3月期の業績目標は、営業利益で45億円を掲げており意欲的と評価する声も。

●能美防災は「TASKis」でニーズを捉える

 総合防災機器大手の能美防災 <6744> [東証P]は、防災・火災報知設備に強みを持ち、オフィスビルからプラント、トンネル、船舶、住宅、更には文化財など、さまざまな施設で防災システムを手掛けている。火災や地震発生時の緊急対応で力を発揮するクラウド型防災支援ソフト「TASKis」でもニーズを捉える。同ソフトは、火災や緊急地震速報受信装置、水位センサー、工場内の重要設備など、複数棟にまたがって設置された監視設備からの緊急信号を集約し、遠隔での監視と指示が広範囲にできることで、迅速な対応が可能になる。BCP強化が求められるなか、TASKisへの関心も高まりそうだ。23年3月期の営業利益は前の期比29.7%減となったが、24年3月期は前期比12.6%増の100億円となる見通しだ。

 もちろん、民間気象情報大手のウェザーニューズ <4825> [東証P]にも目を配っておきたい。防災気象も展開するなか、個人向け緊急地震速報サービスにも注力。昨年2月からは、TikTokの地震速報通知にウェザーニュースLiVEが連携するなど活躍の場を広げている。23年5月期の営業利益は、前の期比10.2%増の32億円を計画。第3四半期累計(22年6月~23年2月)の同利益は前年同期比18.5%増の25億1000万円で、通期計画に対する進捗率が78.4%となった。ただ、株価は上値の重い展開が続く。決算発表は7月6日に予定している。

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