【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】─決算は自動車がポイント、NEXT GIGA関連にも妙味
「決算は自動車がポイント、NEXT GIGA関連にも妙味」
●上値は限定的も、1株利益の切り上がりに期待
8月の東京株式市場は、国内企業の決算発表をにらみつつ模様眺め気分の強い展開となりそうだ。日米ともに夏休みシーズンで例年参加者が減少傾向なうえ、トランプ米政権の関税率縮小を除けば手掛かり材料に欠ける。PER(株価収益率)面では買い余地が乏しい一方で、外国人投資家の買いや企業の自社株買いが継続しており、需給面での下支え要因となる。
日経平均株価の予想レンジは3万8500円~4万2000円。
主なスケジュールは、米国で1日に雇用統計、ISM製造業景況指数、12日に消費者物価指数、15日に小売売上高、21日にジャクソンホール経済シンポジウム(~23日)など。下旬にAI(人工知能)半導体大手・エヌビディア<NVDA>の5-7月期決算。国内は8日にオプションSQ(特別清算指数)算出日、15日に4-6月期GDP(国内総生産)、22日に消費者物価指数などが予定されている。中旬にかけて4-6月期決算発表のピークを迎える。
なお、8月はFOMC(米連邦公開市場委員会)、日銀金融政策決定会合ともになく、次回のFOMCは9月16日~17日、日銀金融政策決定会合は9月18日~19日の開催予定となっている。
7月30日時点の日経平均株価の1株利益は2500円で、PERは16.3倍。アベノミクス相場以降のPERがおおむね14倍~16倍であったことを踏まえると、上値は限定的とみられる。ただ、4月の本決算発表時はトランプ米大統領による相互関税が発表された直後で、26年3月期の業績予想は慎重になった公算が大きい。依然として不透明要因は強いものの、楽観的にみられる企業がどの程度あるか。序盤戦の決算はさえないものが多い印象ながら、1株利益の切り上がりには期待したい。
●エヌビディア決算で半導体関連への関心高まるか
決算では特に自動車メーカーがポイントか。米国による自動車関税がそれまでの27.5%から15%に下がる。トヨタ自動車 <7203> [東証P](決算発表予定8月7日)は本決算発表時に4~5月で米関税政策による減益影響として1800億円のみを予想に反映、ホンダ <7267> [東証P](同6日)は関税影響を6500億円としていた。本決算で業績予想を開示しなかったSUBARU <7270> [東証P](同7日)、マツダ <7261> [東証P](同5日)は予想を出すか。
また、米コーニング<GLW>の好決算を背景に、データセンター関連が人気となっている。この面からはいずれも7日発表予定のフジクラ <5803> [東証P]、古河電気工業 <5801> [東証P]、ソフトバンクグループ <9984> [東証P]の決算発表も関心が高い。
第4週発表と推測されるエヌビディアの決算が市場予想を上回れば、半導体関連株への関心が高まることが予想される。先端半導体「ブラックウェル」の普及により特に複雑化する後工程で、切断・研削・研磨装置を手掛けるディスコ <6146> [東証P]、テスターのアドバンテスト <6857> [東証P]、成膜装置のKOKUSAI ELECTRIC <6525> [東証P]などに再度関心が集まりそうだ。
9月は3・9月決算期企業の配当取りの動きが出ることが予想される。8月にも先回りの投資家が増加するとみられ、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]などメガバンクのほか、利回りが高水準でPBR(株価純資産倍率)が低めな日本製鉄 <5401> [東証P]、ホンダ、三井化学 <4183> [東証P]、オリックス <8591> [東証P]、三菱HCキャピタル <8593> [東証P]などの押し目は妙味がありそうだ。
決算関連ではNEXT GIGA関連にも妙味があるか。NEXT GIGAとは、文部科学省が推進するGIGAスクール構想の第2期を示すプロジェクト名でセカンド・ギガとも呼ばれ、2024年度から順次開始されている。第1期では①児童生徒向け1人1台の端末普及、②高速大容量の通信ネットワーク整備の2つを一体的に整備した。第2期については23年度(令和5年度)に閣議決定された総合経済対策で補正予算として文部科学省が2643億円を計上し、各都道府県に基金を設置している。パソコンやタブレット端末の更新、ネットワークの整備、 セキュリティの充実などが既に進み始めている。
学校備品・システムなどを手掛ける内田洋行 <8057> [東証P]は、6月に25年7月期業績予想を上方修正している。関連としては端末の更新需要では大塚商会 <4768> [東証P]、ダイワボウホールディングス <3107> [東証P]などで、このほか安全なウェブサイトやメールのみに接続できるフィルタリング技術に強みがあるデジタルアーツ <2326> [東証P]、学校教育向けICT事業が主力のチエル <3933> [東証S]、パソコンなど小型家電の回収やEC型リユースを軸とするリネットジャパングループ <3556> [東証G]、セキュリティ対策ソフトとシステム構築のソリトンシステムズ <3040> [東証P]などが挙げられる。
(2025年8月1日 記/次回は8月31日 配信予定)
株探ニュース

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