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4593 ヘリオス

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ヘリオス Research Memo(3):ARDS対象のHLCM051は経営リソースを集中投下し、早期の上市を目指す


■ヘリオス<4593>の開発パイプライン

同社のパイプラインは現在、炎症領域でARDS、脳梗塞急性期、外傷を対象としたHLCM051の開発が進んでいるほか、網膜色素上皮裂孔を対象としたiPSC由来のRPE細胞による新たな治療法(住友ファーマに開発主体が移行)や、eNK細胞による新たながん免疫療法の開発を進めている。なかでも、当面はARDSを対象としたHLCM051の開発に経営リソースを集中投下し、早期の上市を目指す意向である。


ARDS治療薬は米国で第3相試験を実施、国内は条件及び期限付承認申請へ

1. HLCM051(ARDS治療薬)
ARDSは単一の疾患ではなく、重症肺炎や外傷等によって炎症性サイトカインが活性化することで、肺組織である肺胞や毛細血管に傷害を与え、その結果、肺水腫となり重度の呼吸不全に陥る症状のことで、発症後の死亡率は全体の30~58%※と言われており、極めて予後が悪い疾患の1つである。現在、ARDSの根治療薬はなく、集中治療室での人工呼吸管理による対処療法が行われており、症状や生命予後の改善につながる新たな治療法の開発が望まれている。同社決算説明資料によると、年間患者数は日本で2.8万人、米国で26.2万人、欧州で13.3万人、中国で67万人となっており、全世界では110万人超と推計される。

※ 同社ホームページより。出所は「ARDS診療ガイドライン2016」。

HLCM051はARDSを発症した患者に対して静注投与することで、肺に集積した炎症性サイトカインを大幅に減少させるだけでなく、損傷を受けた組織を保護し、修復を促進することで肺機能を改善する効果が見込まれ、人工呼吸器からの早期脱却、死亡率の低下が期待されている。

同社が国内で実施した第2相試験(2019年?2021年:症例数30例、うち実薬20例、プラセボ10例)では、投与後28日間のうち人工呼吸器を装着しなかった日数がプラセボ群の約2倍(実薬20日:プラセボ群11日)となったほか、投与後90日間における死亡率も軽減(同26.3%:42.9%)するなど、良好な結果が得られた。ただ、症例数が30例と少なかったことから、第3相試験を実施する方向で(独)医薬品医療機器総合機構(PDMA)と協議を進めていた。しかしながら、前述のとおりアサシスの経営破綻により海外の治験データや治験薬、開発権利などほぼすべての資産を取得したことで、開発方針の変更を決定した。具体的には、米国で第3相試験(症例数300?550例)を実施し、そのデータを検証データとして活用することを前提に、国内で条件及び期限付製造販売承認申請を行うことになった。アサシスでも米国で第2相試験を実施し、おおむね同様の結果が得られていることから、米国で実施する第3相試験も良好な結果が得られる可能性が高いと弊社では見ている。

米国での第3相試験のデザインについてはFDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬局)と既に合意しており、主要評価項目は日本の第2相試験と同じく、投与後28日間において人工呼吸器を装着しなかった日数をプラセボ群と比較するものとなる。症例数は、300例及び400例の各段階で中間解析を行い、いずれかの時点で主要評価項目において統計学的有意差が得られた場合は、その時点で臨床試験を終了し承認申請することになる。また、臨床試験を継続する場合は最大550例まで実施する。IND(治験計画届)を2025年に申請すべく準備中で、試験期間は2?3年を見込んでいる(治験薬は2024年4月にアサシスから数百例分を取得済み)。順調に臨床試験が進めば2027年に承認申請、2028年に販売が開始される可能性がある。なお、米国では迅速審査・承認が適用されるFast Track及びRMAT指定を受けている。

米国での臨床試験費用は、発行済みの第21回及び第22回新株予約権の行使※1による調達や2025年後半から開始する細胞培養上清を活用した医療用製品の販売収入などで充当する予定だ。不足分が生じる場合には、米子会社または新設する子会社が実施するロイヤリティ投資※2、第三者割当増資などで調達する方針である。

※1 第21回新株予約権の行使価額は174.2円、第22回については180円となっており、すべて行使されれば調達額は約47億円となる。
※2 上市後の販売ロイヤリティを担保として、投資ファンドから資金を事前に調達する手法。

米国で開発に成功した場合のHLCM051のピーク売上は、30?50億ドルになると同社では試算している。前提は薬価が1千万円で患者数26.2万人、使用率10?20%としている。薬価については、HLCM051を投与した場合の人工呼吸器が不要となる日数の短縮(5?9日間)を想定し、患者へのベネフィットと米国の医療費への影響を総合的に考慮した薬剤経済分析に基づき、1千万円程度が実現可能な水準と見ているようだ。

なお、日米以外の地域(欧州、韓国、台湾、中国)については、ライセンス契約を締結して早期収益化を目指す方針であり、既に複数企業と交渉を進めているもようだ。


培養上清を活用した医療材料は、2026年12月期に数十億円の売上規模へ成長

2. AND medical groupとの共同研究契約
同社は2024年4月にAND medical groupと共同研究契約を締結した。具体的には、同社が保有する再生医療等製品の生産過程で産出される培養上清液を原材料とする医療材料を開発し、AND medical groupが運営する美容外科クリニック等※に供給していく。契約一時金(60百万円)と研究の進捗に応じて支払われる対価(マイルストーン)の合計で180百万円を受領する。また、原材料の製造方法及び製造体制が確立し、共同研究の目的が達成された後は、原材料を同社からAND medical groupに供給するための供給契約を締結する予定だ。

※ 2024年9月末時点でAND medical groupブランドの美容皮膚科・美容外科・形成外科・泌尿器科を26拠点展開し、美容領域のクリニックで国内3番手。

契約一時金を2024年4月に受領したほか、研究の進捗に伴う1回目のマイルストーンを達成し、2024年12月期第4四半期に60百万円を受領する。今後はAND medical groupの需要に応じて、2025年内に毎月25リットルの培養上清液の提供を開始し、順次需要に応じて増産する計画である。単価については、多くの市販品が1cc当たり1?3万円で販売されているが、AND medical groupの求める品質を確認しつつ、最終的な販売単価が決定される。

細胞培養上清液は、美容クリニックなどで利用されているほか、化粧品の含有成分にも利用されており、国内の市場規模は数十億円から100億円規模と同社では試算している。市場環境としては韓国からの輸入など競争が激しい分野であるが、厚生労働省が培養上清液についても医薬品並みの製造品質管理基準をクリアするよう求めており、既に同基準を満たしている同社にとっては追い風になると見ている。実際、化粧品メーカーやそのほかの美容クリニックからの引き合いもあるようで、供給先が今後も増える可能性がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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