21世紀の産業革命、新サービスで成長ロード爆走する「生成AI関連」 <株探トップ特集>
―急拡大するマーケット、驚異的なスピードで“シンギュラリティ”が視野に―
画像や動画、そしてチャットボットをはじめ、生成AIを用いた革新的なサービスが、あらゆる分野で急速に拡大している。米国の新興企業オープンAIが2022年11月にリリースした「Chat(チャット)GPT」は世界に強烈な衝撃を与えた。そして、翌年1月のマイクロソフト<MSFT>によるオープンAIへの追加投資をキッカケに高らかに鳴り響いた“生成AI狂騒曲”だが、スターダムに乗る関連銘柄を相次ぎ輩出している。ここにきては産業構造に大きな変革の波をもたらしており、まさに生成AIによる21世紀の産業革命が到来している。新たなサービスで攻勢をかける「生成AI関連株」を追った。
●30年には市場規模20倍へ
生成AIを利用した、さまざまなソリューションが社会生活に大きな変化を及ぼしている。変革の時代はスタートを切ったばかりだが、生成AIによる新サービスは枚挙にいとまがない。まさに黎明期の技術といえるが、進化のスピードはあまりにも早く、いずれAIに人間が凌駕されるのではないかという、いわゆるシンギュラリティも現実性を増すほどだ。ニーズに合わせたスピーチの作成から、詐欺対策、そして営業活動のサポートまで活躍領域は拡大の一途をみせている。
新たなサービスへの活用が進むなか、市場規模の急拡大も予想される。電子情報技術産業協会が昨年12月に発表した「生成AI市場の世界需要額見通し」によると、世界需要額は「年平均53.3%で成長、30年には2110億ドルに達し、23年の約20倍となる」と見込んでおり、驚異的なスピードで成長ロードを爆走することを予想する。日本市場においても、現在の約15倍となる1兆7774億円に成長する見通しなだけに、多くの関連企業が注力姿勢を強める状況だ。特に伸長が著しいとみているのが、製造現場における業務支援や製品開発支援の分野で、そのほかでは金融や公共、通信・放送分野などにおいて、作業の効率化や創作活動の拡大などで利活用が広がると分析している。
●最高値圏を快走する日立
大手では日立製作所 <6501> [東証P]がこの分野で攻勢をかけている。同社は今年3月、生成AIによるデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速を目指し、エヌビディア<NVDA>と協業を開始。今月には、生成AIの本格的な業務活用に向け、「専門的な業務に適したLLM(大規模言語モデル)構築・運用サービス」と「生成AI業務適用サービス」をスタート。第1弾として、専門性の高い金融業務や、コンタクトセンターの複雑な問い合わせ対応などの業務向けに提供を開始したが、今後は製造業や交通インフラなど同社が深い専門知識を有する制御・運用技術領域へも拡大していく方針だ。同社株は最高値圏を快走するが、生成AIに加えクラウド利用の普及に伴うデータインフラ需要や、DXに関連する需要が事業の追い風となっており、更なる上値追いにも期待がかかる。
こうした流れを受け、生成AIに絡む銘柄は株式市場でもひと際注目を集めてきた。言うまでもないが、相場には浮き沈みがあり、生成AI関連株もその例外ではない。ここから本格的な決算発表シーズンに突入するが、全体相場が波乱局面にあるなか、成長スピードの加速が確実視される分野に、中期的視点で目を配っておくことは重要なポイントになりそうだ。
●ユーザーロカは業績好調+話題性十分
ユーザーローカル <3984> [東証P]は、ここ生成AIを活用した無料のサービスを相次ぎ発表している。8月にLLMで性格診断する「ユーザーローカルXポスト性格診断」と、結婚式のスピーチ文を自動執筆する「結婚式スピーチ生成AI」の提供を始めた。スピーチは、新郎新婦との関係を入力するだけで原稿を約15秒で生成してくれる。9月にも、画像データからインスタグラムのハッシュタグ・投稿文案を自動生成する「ユーザーローカルInstagramハッシュタグ生成AI」を提供開始するなど話題性も十分だ。25年6月期の営業利益(非連結)は、前期比6.7%増の18億4400万円を予想しており、10期連続で過去最高益を更新する見通し。同社は、ビッグデータ解析やAI技術を使った業務支援ツールの開発及び提供を主力とし、AIチャットボットなどにも傾注しており、時代を先駆けるニーズの取り込みに懸命だ。
●トレンド、詐欺チェック機能搭載
法人用ウイルス対策ソフトで国内トップクラスのトレンドマイクロ <4704> [東証P]も、得意とするサイバーセキュリティー分野で生成AIを活用し新サービスに乗り出している。今月から、生成AI利用の詐欺チェック機能を搭載した、スマートフォン向け詐欺対策専用アプリを販売開始した。詐欺の可能性のある電話をブロックするほか、メール、広告、Webページの詐欺判定やディープフェイクを用いたビデオ通話の検出など、詐欺に対するさまざまな機能を搭載している。また、8月には生成AIサービスへのサイバー攻撃や、情報漏えいを防ぐソリューションも提供を開始するなど、まさに本領発揮だ。24年12月期の連結営業利益は前期比62.3%増の529億円を計画する。
●在宅医療分野でニーズ捉えるeWeLL
eWeLL <5038> [東証G]は、訪問看護用の電子カルテシステム「iBow(アイボウ)」などを手掛けるが、今月からは訪問看護報告書を生成AIの活用によりワンクリックで自動作成する、国内初の新機能「AI訪問看護報告」の提供を開始した。訪問看護師は、患者ケアに加え報告書作成などの書類業務を抱えており、文書作成は大きな負担となっていた。少子高齢化が急速に進行するなか、在宅医療分野におけるクラウドサービスでニーズを捉えており、業績成長力が際立つ存在といえる。営業利益(非連結)段階では、23年12月期の31.2%増益に続き、24年12月期も前期比22.3%増の11億1100万円と大幅最高益更新が続く見通しだ。
●エニマインド、クリエイター向け成長支援事業が伸長
ここ新サービスを次々と発表しているのがAnyMind Group <5027> [東証G]だ。同社は、ブランド企業向けマーケティング支援やクリエイター向け収益化支援を展開するが、9月にはインフルエンサーマーケティングプラットフォーム「AnyTag」とクリエイターグロースプラットフォーム「AnyCreator」が、生成AIを活用し業務効率とコンテンツの品質向上を可能にする新機能の提供を開始。また、多言語対応可能な生成AIライブコマースプラットフォーム「AnyLive」の提供も開始した。今月23日には、ECマネジメントプラットフォーム「AnyX」に、生成AIを活用したレビュー分析機能を追加したと発表するなど、勢いが止まらない。24年12月期の連結営業利益は、前期比2.6倍の19億5000万円を見込む。クリエイター向け成長支援事業が大きく伸長している。株価は下値模索の展開が続くが、年初来安値圏接近でじわり値ごろ感も。
●フューチャー、NEDO公募に採択
フューチャー <4722> [東証P]は今月10日、経済産業省が実施する国内生成AIの開発力強化プロジェクト「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)」で、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発(助成)」に採択されたと発表。同採択事業でフューチャーは、「日本語とソフトウェア開発に特化した基盤モデルの構築」を実施し、日本語のソフトウェア開発に強い言語モデルの構築を目指す。24年12月期の連結営業利益は前期比6.9%増の146億5000万円を予想し、過去最高益を更新する見込み。株価は、きょう1891円まで買われ年初来高値を更新。まずは、2000円大台奪回に期待がかかる。
●FIXER、ジーネクストにも注目
また、生成AI分野において豊富な実績があるFIXER <5129> [東証G]にも注目したい。今月16日に、さくらインターネット <3778> [東証P]とFIXERが提供する生成AIサービス「GaiXer(ガイザー)」を、「さくらのクラウド」上で稼働する「GaiXer on さくらのクラウド」の提供に向けた基本合意を締結したと発表。高まるAI需要に対応し、より信頼性の高い生成AIサービスを提供する方針だ。FIXERは、これまで省庁や自治体、大手企業向けに文章作成支援や翻訳業務、カスタマーサポートの最適化などに携わっており、今回の基本合意により更なる活躍期待が高まっている。
顧客対応業務に特化したソフトを手掛けるジーネクスト <4179> [東証G]は、今月11日に顧客対応における自動化支援ソリューション「Discoveriez Automation」β版の提供を開始すると発表。来年から順次機能を強化し、実証実験を重ねることで、サービスの本格提供を予定している。また1日には、大手飲料・食品事業会社と生成AIを活用し、顧客対応における作業負担の軽減・業務効率化及びVOC(要望など顧客の声)活用を支援する新サービス「Discoveriez AI」の実証実験をスタートしている。
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