波乱をチャンスに変える、好実態の「連続増配&高配当」7銘柄精選 <株探トップ特集>
―日経平均急落局面で魅力高まる、株主還元に積極姿勢の高配当株リストアップ―
米国の景気後退懸念や日銀の追加利上げに伴う円安修正の動きに対する警戒感が高まるなか、東京株式市場は不安定な相場が続いている。週明け9日の日経平均株価は前営業日比175円安の3万6215円と5日続落。下げ幅は一時1100円を超える場面があった。先行き不透明感は強く下落基調が長引くことが懸念される一方、中長期的な視点から見ると、急ピッチな株価下落局面は配当や株主優待といったインカムゲインを狙うには拾い場となる可能性が高い。今回は相場急落で上昇している配当利回りに着目し、業績動向や配当実績なども踏まえながら、株主還元に積極的な姿勢をみせる高配当株を探った。
●荒れ相場で妙味高まる高配当株に注目
日経平均が史上最高値を記録した7月11日以降、日本株市場は波乱含みの展開が続いている。日経平均は8月初めの歴史的な下落から急速に持ち直しをみせていたが、9月に入って再び大きく値を崩し、9日は一時3万5247円まで売られ、およそ1ヵ月ぶりの安値をつけた。一方、高値圏から急落した高配当株は利回りが一段と上昇しており、投資妙味が増している。例えば、全体相場が短期的に大きく下落した際に、配当利回り3%台の銘柄を5%安で拾えた場合、株価が元の位置に戻れば都合8%の利ザヤを取れるということになる。高配当株投資の観点からは相場急落は押し目を拾う好機になり得るのだ。
ただし、利回りの高さだけで銘柄を選ぶのは大きなリスクをはらむ。ここでは配当利回りが高水準な銘柄のうち、「連続増配株」に照準を合わせた。配当を増やし続ける企業は、安定した財務基盤を備え、かつ中期的に業績を伸ばしているものが多くグロース株の側面も持つ。また、継続的に配当を増やすのは、企業の財務力や業績成長に対する経営者の自信の表れであり、持続的な利益成長と株主還元が期待できる有力株といえるだろう。
以下では、(1)本決算月にかかわらず、今期に7期以上連続の増配を計画している、(2)今期予想ベースの配当利回りが3%を超える、(3)今期業績が営業利益段階で増益を見込む、といった条件を満たす7銘柄をリストアップした。
※配当利回りは9月9日終値ベースで算出。
【タマホーム <1419> [東証P]】 配当利回り4.94%
タマホームは低価格を強みとする注文住宅メーカー。前期業績は長引く市況低迷で注文住宅の販売が減少し8期ぶりの営業減益を強いられたが、25年5月期は高付加価値商品の強化などによる利益率の改善を通じて、2期ぶりに過去最高益を更新する見通しだ。配当は195円(前期比5円増)と9期連続の増配を予定している。同社はQUOカードを贈呈する株主優待制度も実施しており、配当と株主優待を合計した利回りは5.2%(保有期間3年未満の場合)に上る。株価は決算内容が評価され7月23日に戻り高値4610円をつけたが、その後は3800円台まで値を下げており、押し目買い候補としてマークしたい。
【みずほリース <8425> [東証P]】 配当利回り3.96%
みずほリースは上場企業のなかでも指折りの連続増配株として知られる。25年3月期の配当は20期連続の増配となる40円(中間期、期末各20円)を実施する計画だ。前期は株主優待制度を廃止する一方、配当を増額する形で192円(前の期比45円増)と大幅に増やした。今期は3月末割り当ての株式5分割を考慮した実質ベースで4.2%の増配となる。業績は22年3月期にコロナ禍に伴う航空機業界の低迷や半導体不足の影響を受けて30%超の大幅営業減益となったが、すぐに切り返し今期は営業利益470億円(前期比19.0%増)と3期連続の最高益更新を見込む。最低投資金額が10万円前後で購入しやすいことも注目ポイントだ。
【エクシオグループ <1951> [東証P] 】 配当利回り3.92%
エクシオGはNTT <9432> [東証P]向けを主軸とする電気通信工事大手。安定した収益・財務基盤を有し、前期まで実に19期にわたって配当を減らしたことがない高配当優良株だ。13年3月期から増配を続けており、25年3月期は前期比実質2円増の62円を予定している。配当利回りが4%近いことに加え、自社株取得と消却を定期的に実施するなど、株主還元の切り口からの魅力は高い。今期業績は大規模データセンター構築や新築ビル・工場などの電気工事の受注が好調に推移するほか、グローバルビジネスの回復でシステム関連も拡大し、営業利益360億円(前期比5.5%増)と2期連続の増益を見込んでいる。
【稲畑産業 <8098> [東証P]】 配当利回り3.84%
化学専門商社の稲畑産は中期経営計画で累進配当と総還元性向50%程度の目標を掲げており、25年3月期の配当は125円(前期比5円増)と7期連続の増配を見込む。自社株買いにも積極的で今期はすでに120万株(発行済み株式数の2.15%)を取得し、取得株をすべて消却している。足もと4-6月期(第1四半期)業績は情報電子事業や合成樹脂事業の伸長に円安効果が加わり、営業利益は前年同期比3割を超える大幅増益を達成した。通期ベースで5期連続の最高益更新に向けて好スタートを切っている。なお、9月は中間配当(60円)に加え、株主優待(保有株数と保有期間に応じてQUOカード500~5000円分)の権利確定月でもある。
【東京建物 <8804> [東証P]】 配当利回り3.45%
東建物はマンション分譲とオフィスビルなどの賃貸を主力とする大手不動産会社。24年12月期中間期(1-6月)業績はマンションの引き渡しが集中したほか、投資家向け物件の売却も膨らみ、営業利益段階で512億3600万円(前年同期比42.1%増)と大きな伸びを示した。好調な業績を踏まえ、通期の同利益を775億円(前期比9.9%増)に上方修正すると発表。従来の4期連続最高益予想を更に上乗せし、配当も80円(前期比7円増)に増額修正した。増収増益基調が続くなか、株主還元も積極的に推進しており、増配は今期で11期連続になる。
【東陽テクニカ <8151> [東証P]】 配当利回り4.21%
東陽テクの足もと24年9月期第3四半期累計(23年10月-24年6月)の業績は、物性/エネルギー事業で次世代電池やEV(電気自動車)などの研究開発の活況が追い風となったほか、機械制御/振動騒音事業では米国と国内の自動運転・ADAS(先進運転支援システム)開発向け大型案件を計上し、営業利益29億7200万円(前年同期比2.6倍)と業績高変化を遂げた。あわせて、今期配当を67円(前期比13円増、7期連続増配)へ増額修正するとともに、15億円規模の自社株買いを実施することも明らかにした。株価は8月5日安値1270円から1600円近辺まで値を戻したが、予想PER14倍、配当利回り4.2%と指標面からは見直し余地が依然として大きい。同社は電子計測器の輸入商社で円高メリット株としても要注目だ。
【ファルコホールディングス <4671> [東証S]】 配当利回り5.17%
ファルコHDは臨床検査受託大手で、調剤薬局の運営との2本柱で事業を展開している。今年2月に株主還元方針の変更を発表し、25年3月期からはDOE(連結純資産配当率)5%を目標に設定。今期配当は120円(前期比5円増)と13期連続の増配計画を示し、配当利回りは5%台で推移している。8月初めの急落場面では3営業日で株価が17%超下落したが、高水準な配当利回りが意識される形でその後は早い戻りをみせた。ただ、足もとでは再び下落に転じ、中長期トレンドの分水嶺である75日移動平均線を割り込んでおり、反発力が試される局面にある。
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