カンロ Research Memo(4):2024年12月期上期におけるグミの売上高が、初めて飴の売上高を上回る
■カンロ<2216>の業績動向
1. 2024年12月期第2四半期の業績概要
2024年12月期第2四半期の業績は、売上高が15,563百万円(前年同期比8.9%増)、営業利益は2,343百万円(同32.2%増)、経常利益は2,355百万円(同31.5%増)、中間純利益は1,767百万円(同42.9%増)と増収増益となり、売上・利益ともに上期過去最高となった。
(1) 業績概況
キャンディ市場は、価格改定の浸透もあり、各カテゴリー並びに市場全体でも販売金額は前年を上回って推移している。同社の主要ドメインについては、飴カテゴリーは、セルフケアの高まり継続によりのど飴が堅調に推移し、グミカテゴリーは、ハード系商品が牽引し高い成長を続けている。そのような事業環境において、同社は飴・グミ共に増収を実現し、利益面では、原材料価格の上昇傾向が円安と共に続いているが、一部商品の価格改定や内容量の変更を行うことで対応している。また、グミを中心とした販売と生産の増加によって限界利益が増加し、売上総利益も前年同期と比べて大幅に増加した。営業利益については、事業拡大に伴う人件費や一般費用の増加に対して、施策のタイミングのズレにより広告宣伝費が減少した結果、前年同期と比べて大幅に増益となった。経常利益も同様に、前年同期と比べて大幅に増益となった。さらに、四半期純利益は、政策保有株式の縮減による特別利益の計上もあり、前年同期と比べて大幅に増益となった。総じて、この業績から、同社が適切な施策を講じて収益性を向上させていることが伺える。今後も市場の動向や内部施策に注力することにより、さらなる成長が期待できる。
(2) カテゴリー別の売上高
2024年12月期第2四半期のカテゴリー別の売上高を見ると、飴カテゴリーでは、商品アイテムの絞り込みと生産体制の強化により、のど飴需要の高まりに対応し、前年同期比1.4%増の7,449百万円となった。製品別では、休売・終売商品の減少を、のど飴群と、2月から価格改定を実施している「金のミルクキャンディ」シリーズが補った。グミカテゴリーでは、同16.9%増の7,774百万円となり、上期として初めて飴の売上高を上回った。製品別では、「マロッシュ」の伸び悩みや輸入商品の販売減少があったものの、主力ブランドである「ピュレグミ」シリーズが「ピュレグミプレミアム」の成長やテレビCMのプロモーション効果、3月からの価格改定と相まって大きく販売を伸ばした。また、直営店舗ヒトツブカンロ(4月に東急プラザ原宿「ハラカド」に2店舗目の常設店をオープン)やデジタルプラットフォーム「Kanro POCKeT」での高付加価値商品「グミッツェル」も好評を博している。素材菓子カテゴリーでは、同13.9%増の331百万円となった。
2. 財務状況
(1) 財務状況
2024年12月期第2四半期末の資産合計は、前期末比43百万円減の25,796百万円となった。これは、現金及び預金が512百万円、有形固定資産が817百万円増加したが、売掛金が1,030百万円、繰延税金資産が274百万円減少したことによる。負債合計は、同1,352百万円減の9,952百万円となった。これは、未払費用が317百万円増加した一方で、買掛金が175百万円、未払金が290百万円、未払法人税等が358百万円、賞与引当金が540百万円減少したことによる。純資産合計は、同1,309百万円増の15,843百万円となった。これは、四半期純利益の1,767百万円計上と配当金の支払い546百万円によるものである。
この財務状況を見ると、流動資産は若干の減少が見られる。しかし、現金及び預金は増加しており、これは流動資産全体の減少を部分的に補っている。固定資産は増加し、資産合計はわずかに減少しているものの、その減少幅は小さい。一方で、流動負債は減少し、固定負債も減少している。これにより、負債合計が1,352百万円減少したことは、財務の安定性を示しており、企業の健全性が向上していることを示唆している。純資産合計は1,309百万円増加しており、同社の財務基盤の強化が伺える。総じて、資産合計のわずかな減少にもかかわらず、現金及び預金の増加や負債の減少、純資産の増加は同社の財務状況がさらに改善していることを示している。財務の安定性と資本効率の向上が見られ、今後も持続的な成長が期待される。
(2) キャッシュ・フローの状況
2024年12月期第2四半期末の現金及び現金同等物の中間期末残高は、前期末比205百万円増の4,274百万円となった。営業活動によるキャッシュ・フローは、2,450百万円の資金増加となった。前年同期の資金の増加は2,307百万円であった。これは、法人税等の支払などがあったものの、営業収入などにより資金が増加したことによる。投資活動によるキャッシュ・フローは、1,454百万円の資金減少となった。前年同期の資金減少は720百万円であった。これは、設備投資などの支出によるものである。財務活動によるキャッシュ・フローは、483百万円の資金減少となった。前年同期の資金増加は230百万円であった。これは、配当金の支払いなどによるものである。
営業活動によるキャッシュ・フローが安定している一方で、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローの動きが変動している。しかし、現金及び現金同等物の中間期末残高の増加は同社の流動性が良好であり、将来的な投資や支出に対する備えがあることを示している。同社の財務基盤は引き続き強固であり、今後の成長と安定した運営が期待される。
同社は、2022年12月期から2024年12月期までの3ヶ年キャッシュ・フロー計画のなかで、コア事業から創出した営業キャッシュ・フロー(約80億円)を設備投資(約70億円)及び新たな事業領域であるデジタルコマース事業、グローバル事業、フューチャーデザイン事業を含めた成長投資と株主還元(10億円以上)の拡充に割り当てるとしている。
(3) ROIC経営の進捗状況
同社の2023年12月期のPBR(株価純資産倍率)は、1.99倍で2019年の1.06倍から約2倍上昇した。加えて、2023年12月期のROICは18.2%で、2019年の5.7%から約3倍以上上昇した。2024年12月期のROICは、2024年6月の修正予想により、期初予想の16.2%から18.0%へ上方修正した。
同社は、ROIC経営を標榜・実践しており、この戦略の下で様々な施策を展開している。具体的には、KanROICツリーを用いたKPI(重要業績評価指標)の管理、バランスシートの管理を通じた政策保有株式の削減、資本コストを基準とした投資採算基準の運用、そして事業ポートフォリオの効率的な管理を実施している。これらの取り組みの結果、ROICは資本コストを上回る目標値7.5%以上で推移している。今後、同社はROIC経営をさらに推進し、規律ある成長投資を実行する方針だ。2024年度を最終年度とする現行の中期経営計画では、2030年に向けた成長ストーリーが発表され、経済価値と社会価値の両立を目指すことが強調されている。加えて、株主や投資家とのコミュニケーションを一層強化し、情報開示を拡充することで、透明性の高い経営を目指している。これらの取り組みを通じて、持続可能な成長と株主価値の向上を追求していく予定である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
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提供:フィスコ