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4年で0.7億→3.2億円、原動力は急落から急反転も「安心せず反省」
すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 志水雅己さんの場合-第1回
■志水雅己さん(仮名・50代・男性)のプロフィール:
専業投資家。日米株式と投資信託で3億2000万円を運用している。メーンは日本の個別株。配当を安定的に出している大型株や国策テーマの関連銘柄を長期保有している。長らくITエンジニアとして勤務した経験から、先端技術に関する事業領域への関心が強い。投資を本格的に始めたのは2018年。「株探-個人投資家大調査-2024」の回答者で、投資スタイルは「テーマ重視」、日本株投資の腕前は「初級者」となる。
・「本コラム」の記事一覧を見る
8月初旬の急落から平静を取り戻してきた株式市場。一連のドタバタから教訓を得て、自らのレベルアップにつなげる投資家はどんな人か。
その参考になりそうなのが、今回紹介する専業投資家の志水雅己さん(仮名)だ。当初は投資信託などで運用していたが、2018年に日本株の個別株投資を開始すると、当時から元手を5倍以上に膨らますことに成功した。
志水さんはピンチを成長のチャンスに変えてきた人だ。転機となったのは、20年春のコロナショック。それまで1億円あった運用額を、7000万円までに減少させてしまったのだ。
当時はこれといった軸を持たず投資していたことも影響して、コロナの感染拡大がこの先、経済や投資にどう影響するのか分からず途方に暮れていた。
しかし、先が見えない中で「資産を手堅く増やすには、今何をすべきなのか」を考え続けた結果、たどり着いたのが、配当そして国策テーマに注目して銘柄を選別する方法だった。
その決断は吉と出て、7000万円の資産は、足元ではアメ株や投信を含み3億2000万円にまで拡大することに成功。それでも自身の投資の腕前は「初級者」と回答しているように慢心を戒め、この8月初旬に起きた相場の変調を今後に生かそうと、ポートフォリオの改良に取り組み続けている。
市場の急変を進化の好機としてきた志水さんの手法と成功の経緯、今後の戦略などを2回にわたり紹介していく。
■金融資産(3億2000万円)のポートフォリオ
配当狙いのトップ3は、日立、レゾナック、富士フイルム
志水さんの足元のポートフォリオを見ると、配当狙いと国策テーマの日本株が65%を占める(上の円グラフ)。運用額にして2億円超となる。
配当狙いで運用額の大きいトップ3の銘柄は、
・日立製作所<6501>、
・レゾナック・ホールディングス(旧・昭和電工)<4004>、
・富士フイルムホールディングス<4901>
――の順になる(下の表)。いずれも2020年に取得を開始し、株価は取得月末から2~5倍台に上昇している。
■配当重視の3銘柄の保有状況
注:8月28日終値時点。時価評価額は概算
これら3社を選んだ一番の理由は、業界を代表する大企業であることだ。
コロナ危機によって保守的な姿勢を強めていた志水さんは、人類の営みに不可欠な製品・サービスを提供している大企業であれば、企業価値は容易に激変しないと考え、それらに該当すると思われる企業をピックアップした。
保有候補の配当利回りは原則3%以上としているが、配当の安定性、継続性が高いと判断した場合は3%未満でも候補としている。
QUICK・ファクトセットのデータによれば、3銘柄の購入時の予想配当利回り(月次ベース)は、日立が2.9%、レゾナックが4.0%だったが、富士フイルムは1.8%と目安よりは低い水準だった。
ただし、富士フイルムは2019年以降、実質増配を続けており、コロナ後も増配路線を維持している。この点で、志水さんの保有基準に合致した格好となっている。
■『株探プレミアム』で確認できる富士フイルムの修正配当の長期推移
日立は、「ノルウェー政府」の大株主浮上を安心材料に
志水さんは、この3銘柄を今後もポートフォリオの中核に据える方針だ。事業成長への期待から、業績や株価が安定的に伸びると見込んでいるからだ。
日立<6501>は、2023年に事業ポートフォリオ改革を完遂し、ITプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」を活用してインフラ系の技術サービスの提案力を高めている。経営効率が上がり、業績の安定性が高まると見る。
また日立の場合、22年9月中間決算時点で大株主の中に、ノルウェー政府が浮上したことも注目している。年金基金という公的セクターの存在は「大きな安心材料となっている」(本人)という。
■『株探プレミアム』で確認できる日立の大株主情報の長期履歴
レゾナックと富士フイルムは、半導体材料のテーマ性で注目
日立の次に保有額が多いレゾナック<4004>は、半導体・電子材料を成長ドライバーとする事業ポートフォリオへの転換を進めている点を評価している。
半導体製造の後工程の各種材料で世界トップクラスのシェアがあるのが強みで、志水さんは同社の稼ぐ力がどれだけ高まるかに注目している。
前期(23年12月期)は半導体市況の低迷を受けて38億円の営業赤字を計上したが、今期は黒字に転換し、610億円の営業利益を見込む。レゾナックは20年、21年、23年と最終赤字を計上したが、1株当たり配当金は65円を維持し、今期も据え置きを計画している。
3番目の富士フイルム<4901>も、半導体材料を成長領域としている点を評価して本人は保有している。
半導体材料の売上高について、同社は、2024年度から30年度にかけて2400億円から5000億円へと倍増させる計画だ。同事業が成長を牽引する存在となることや、「半導体関連」というテーマそのものに、志水さんは期待している。
国策テーマでは、AIや半導体開発で強みを持つソフトや材料などに注目
配当と共にもう1つの軸としている国策関連では、次世代半導体やGX(グリーントランスフォーメーション)など先端技術に関するテーマに注目している。
志水さんが先端技術にこだわるのは、その技術が普及した未来を想像するとワクワクするからだ。また、長年ITエンジニアとして働いた経験から、技術に対する関心が強いことも理由の1つになる。
銘柄選別のポイントは、事業成長や株価上昇のストーリーを自分なりにイメージできるかどうかになる。では、国策テーマ枠での足元の運用額トップ3は、どのような顔ぶれなのか。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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取材・文/真弓重孝、高山英聖
イラスト:福島由恵
専業投資家。日米株式と投資信託で3億2000万円を運用している。メーンは日本の個別株。配当を安定的に出している大型株や国策テーマの関連銘柄を長期保有している。長らくITエンジニアとして勤務した経験から、先端技術に関する事業領域への関心が強い。投資を本格的に始めたのは2018年。「株探-個人投資家大調査-2024」の回答者で、投資スタイルは「テーマ重視」、日本株投資の腕前は「初級者」となる。
・「本コラム」の記事一覧を見る
8月初旬の急落から平静を取り戻してきた株式市場。一連のドタバタから教訓を得て、自らのレベルアップにつなげる投資家はどんな人か。
その参考になりそうなのが、今回紹介する専業投資家の志水雅己さん(仮名)だ。当初は投資信託などで運用していたが、2018年に日本株の個別株投資を開始すると、当時から元手を5倍以上に膨らますことに成功した。
志水さんはピンチを成長のチャンスに変えてきた人だ。転機となったのは、20年春のコロナショック。それまで1億円あった運用額を、7000万円までに減少させてしまったのだ。
当時はこれといった軸を持たず投資していたことも影響して、コロナの感染拡大がこの先、経済や投資にどう影響するのか分からず途方に暮れていた。
しかし、先が見えない中で「資産を手堅く増やすには、今何をすべきなのか」を考え続けた結果、たどり着いたのが、配当そして国策テーマに注目して銘柄を選別する方法だった。
その決断は吉と出て、7000万円の資産は、足元ではアメ株や投信を含み3億2000万円にまで拡大することに成功。それでも自身の投資の腕前は「初級者」と回答しているように慢心を戒め、この8月初旬に起きた相場の変調を今後に生かそうと、ポートフォリオの改良に取り組み続けている。
市場の急変を進化の好機としてきた志水さんの手法と成功の経緯、今後の戦略などを2回にわたり紹介していく。
■金融資産(3億2000万円)のポートフォリオ
配当狙いのトップ3は、日立、レゾナック、富士フイルム
志水さんの足元のポートフォリオを見ると、配当狙いと国策テーマの日本株が65%を占める(上の円グラフ)。運用額にして2億円超となる。
配当狙いで運用額の大きいトップ3の銘柄は、
・日立製作所<6501>、
・レゾナック・ホールディングス(旧・昭和電工)<4004>、
・富士フイルムホールディングス<4901>
――の順になる(下の表)。いずれも2020年に取得を開始し、株価は取得月末から2~5倍台に上昇している。
■配当重視の3銘柄の保有状況
銘柄名<コード> | 取得開始 | 株数 | 時価評価額 |
日立<6501> | 2020年3月 | 6500株 | 2250万円 |
レゾナック<4004> | 2020年10月 | 4000株 | 1400万円 |
富士フイルム<4901> | 2020年10月 | 3000株 | 1150万円 |
注:8月28日終値時点。時価評価額は概算
これら3社を選んだ一番の理由は、業界を代表する大企業であることだ。
コロナ危機によって保守的な姿勢を強めていた志水さんは、人類の営みに不可欠な製品・サービスを提供している大企業であれば、企業価値は容易に激変しないと考え、それらに該当すると思われる企業をピックアップした。
保有候補の配当利回りは原則3%以上としているが、配当の安定性、継続性が高いと判断した場合は3%未満でも候補としている。
QUICK・ファクトセットのデータによれば、3銘柄の購入時の予想配当利回り(月次ベース)は、日立が2.9%、レゾナックが4.0%だったが、富士フイルムは1.8%と目安よりは低い水準だった。
ただし、富士フイルムは2019年以降、実質増配を続けており、コロナ後も増配路線を維持している。この点で、志水さんの保有基準に合致した格好となっている。
■『株探プレミアム』で確認できる富士フイルムの修正配当の長期推移
日立は、「ノルウェー政府」の大株主浮上を安心材料に
志水さんは、この3銘柄を今後もポートフォリオの中核に据える方針だ。事業成長への期待から、業績や株価が安定的に伸びると見込んでいるからだ。
日立<6501>は、2023年に事業ポートフォリオ改革を完遂し、ITプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」を活用してインフラ系の技術サービスの提案力を高めている。経営効率が上がり、業績の安定性が高まると見る。
また日立の場合、22年9月中間決算時点で大株主の中に、ノルウェー政府が浮上したことも注目している。年金基金という公的セクターの存在は「大きな安心材料となっている」(本人)という。
■『株探プレミアム』で確認できる日立の大株主情報の長期履歴
レゾナックと富士フイルムは、半導体材料のテーマ性で注目
日立の次に保有額が多いレゾナック<4004>は、半導体・電子材料を成長ドライバーとする事業ポートフォリオへの転換を進めている点を評価している。
半導体製造の後工程の各種材料で世界トップクラスのシェアがあるのが強みで、志水さんは同社の稼ぐ力がどれだけ高まるかに注目している。
前期(23年12月期)は半導体市況の低迷を受けて38億円の営業赤字を計上したが、今期は黒字に転換し、610億円の営業利益を見込む。レゾナックは20年、21年、23年と最終赤字を計上したが、1株当たり配当金は65円を維持し、今期も据え置きを計画している。
3番目の富士フイルム<4901>も、半導体材料を成長領域としている点を評価して本人は保有している。
半導体材料の売上高について、同社は、2024年度から30年度にかけて2400億円から5000億円へと倍増させる計画だ。同事業が成長を牽引する存在となることや、「半導体関連」というテーマそのものに、志水さんは期待している。
国策テーマでは、AIや半導体開発で強みを持つソフトや材料などに注目
配当と共にもう1つの軸としている国策関連では、次世代半導体やGX(グリーントランスフォーメーション)など先端技術に関するテーマに注目している。
志水さんが先端技術にこだわるのは、その技術が普及した未来を想像するとワクワクするからだ。また、長年ITエンジニアとして働いた経験から、技術に対する関心が強いことも理由の1つになる。
銘柄選別のポイントは、事業成長や株価上昇のストーリーを自分なりにイメージできるかどうかになる。では、国策テーマ枠での足元の運用額トップ3は、どのような顔ぶれなのか。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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