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酒井一氏【反騰一服し次はエヌビディア決算、今後の日本株の展望は?】<相場観特集>


―日経平均は3万8000円近辺で一進一退、米利下げ観測受けた円高など懸念材料も―

 日経平均株価は8月に入り歴史的な急落をみせ、5日に3万1458円まで調整した。その後は反騰局面に入り、過去最高値からの半値戻しを達成。足もとでは3万8000円近辺で落ち着きどころを探る展開となっている。米連邦準備制度理事会(FRB)による9月の利下げが事実上予告されたジャクソンホール会議を経て、目先の注目イベントとして米半導体大手エヌビディア<NVDA>の決算発表が28日に控えている。反騰攻勢が一服した日本株の今後の展望について、水戸証券シニアファンドマネージャーの酒井一氏に話を聞いた。

●「エヌビディア決算後、米景気減速リスク広がれば下押し圧力」

酒井一氏(水戸証券 投資顧問部 シニアファンドマネージャー)

 この先の1ヵ月間の日経平均は3万5000~3万9000円の範囲で推移するとみている。ジャクソンホール会議を無難に通過し、市場の関心は目先のところではエヌビディアの5~7月期決算に集中している。これまで市場の高い期待を上回る決算を発表してきた同社だが、常に「ポジティブサプライズ」を起こせるわけではないだろう。短期の投資家は市場予想対比の着地点を受けて反応することになる半面、数年スパンで運用する中長期の投資主体は下がった局面で果敢に買いに動くことも見込まれる。株式市場のボラティリティが一時的に高まったとしても、時間とともに落ち着きを取り戻していくはずだ。

 9月には米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀の金融政策決定会合が開かれるほか、自民党総裁選の告示と投開票も行われる。米国では直近でネガティブサプライズをもたらすような経済指標の公表が目立つようになった。9月の利下げ実施よりも前のタイミングで公表された経済指標を受け、ソフトランディング(軟着陸)期待ではなく景気減速懸念が強まった場合、企業業績の下振れリスクが意識され、米国株の重荷となりそうだ。FRBによる利下げ観測の拡大とともに一段と為替相場がドル安・円高に振れる格好となれば、日本株は売り直しの流れとなることが警戒される。

 日銀の追加利上げの可能性については、8月上旬のマーケット環境の急変とその後の内田真一副総裁、植田和男総裁の発言を受けて、トーンダウンした印象は否めない。自民党総裁選については現時点では候補者が多く、誰が総裁の座に就くのか不確実性が高い状態だ。総裁選後に衆院解散となった場合、解散から総選挙の間は株高になるといったアノマリーが注目を集めることとなると予想されるが、今後1ヵ月間に限れば、ひとまず総裁選について結果を見極めたいとの姿勢が広がることとなるだろう。もちろん、候補者から日銀の金融政策の正常化を求める声が相次ぐ恐れがあることについては、留意すべきだろう。

 円高リスクが存在するなかで、米国景気が減速するとなれば外需系企業はトップラインを伸ばしにくくなり、業績予想の上方修正は難しいものとなる。9月10日には米大統領選に向けたテレビ討論会が予定されており、短期トレードにより動意づくセクターが現れることが想定されるが、消去法的にディフェンシブ系のセクターが物色対象となるのが基本線と考えており、情報通信株や鉄道株などは底堅い動きを示しそうだ。

(聞き手・長田善行)

<プロフィール>(さかい・はじめ)
2009年水戸証券入社後、リテール営業を経て、11年より投資顧問部にてファンドラップの運用に携わる。24年4月より現職。

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