トレンダーズ Research Memo(5):2024年3月期は美容カテゴリが貢献(1)
■業績動向
1. 2024年3月期業績の概要
トレンダーズ<6069>の2024年3月期の業績は、売上高5,673百万円(前期比37.6%減)、営業利益788百万円(同22.0%減)、経常利益773百万円(同24.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益479百万円(同32.3%減)となった。マーケティング事業の一部取引について契約内容の変更を行い、グロス計上からネット計上になったため、売上高は表面的には大幅に減少した。なお、計上方法の変更は利益面には影響しない。ネット計上で算出した2023年3月期の売上高は5,471百万円となり、実質的には同3.7%の増収となっている。業績予想比では、売上高は8.7%減、営業利益は31.4%減、経常利益は32.7%減、親会社株主に帰属する当期純利益は38.5%減となった。
2024年3月期よりマーケティング事業において選択と集中を行い、美容カテゴリへ戦略的に注力した結果、美容カテゴリの売上高(ネット)は前期比23.7%の増収となった。一方で、食品・飲料など美容以外のカテゴリは想定を下回る着地で減収となった。ただし、美容カテゴリの貢献により、同事業全体では同16.9%の増収となった。美容以外のカテゴリの既存顧客に対しては、美容以外の担当チームを編成し取引を継続しており、新規受注があれば受けるが、同社から積極的な営業は行わないスタンスだ。粗利構成比は美容カテゴリが86%(同18ポイント上昇)を占めた。インベストメント事業は、前期にあった営業投資有価証券の売却収益と同様の収益計上がなく、同82.3%の減収となった。売上総利益は同16.8%増の3,061百万円となった。マーケティング事業は美容カテゴリ以外で減益となったものの、SNS分析やコンサルティングなど利益率の高い案件の増加、インフルエンサーマーケティング及びMimiTVの成長により、美容カテゴリが同27.9%増と伸び、同事業全体では同23.0%増となった。インベストメント事業は同61.7%減となった。販管費は2,273百万円と同41.3%増加した。美容マーケティング領域で人件費増加188百万円、MimiTVの認知拡大に向けたTVCMなどの大型プロモーション実施による広告宣伝費増加153百万円、メディカルマーケティング領域のコスト増加202百万円等が主な要因である。その結果、営業利益以下各段階利益は前期比で大幅な減益となったが、同社は中期経営計画目標の達成に向けた投資期と位置付けており、販管費については想定の範囲内にあるとしている。
2. 事業別業績
(1) マーケティング事業
売上高は5,544百万円(前期比33.7%減)、売上総利益は2,988百万円(同23.0%増)、セグメント利益は848百万円(同9.6%減)となった。売上高についてはネット計上で比較すると同16.9%の増収となる。注力領域である美容カテゴリは、インフルエンサーマーケティングの推進とMimiTVの認知拡大に注力した結果、売上高(ネット)は同23.7%増、粗利は同27.9%増と大きな成長を遂げた。1ブランド当たりの受注額が同8%増加したほか、取引ブランド数は同13%増加した。美容マーケティング領域のサービス別粗利は、インフルエンサーマーケティングが同21.5%増、MimiTVが同33.7%増となった。
インフルエンサーマーケティングでは、「LIN」を活用して、TikTokなどあらゆるSNSプラットフォームを網羅した、商材やターゲット特性に応じた最適なソリューションを提供することで業績が向上した。MimiTVは各SNS特性に合わせて最新の美容情報を発信しており、公式アカウントの総フォロワー数は2024年4月時点で約581万人に達した。特に主力プラットフォームのXや、注力プラットフォームのInstagramでフォロワー数が順調に増加したことが業績に寄与したと考えられる。MimiTVの大型プロモーション施策では、同社の認知度が高いSNS利用者以外の顧客企業や消費者に対する認知拡大に成功したようだ。TV広告の結果、広告実施期間中の受注売上額が前年同期比で約1.5倍になったほか、アイスタイルなどとの提携や協業につなるなど、一定の効果があったと同社では判断している。人材投資については、今後の事業拡大に向けて企画提案力のある人材の採用や、社員のマーケティングやブランディングに関するスキルの強化、及び組織拡大に伴うマネジメント力のある人材の育成といった点に注力しており、今後も引き続き推進する。
メディカルマーケティング領域は毛髪再生と医療アートメイクに特化する方針で、2026年3月期の収益化を目指して投資を積極化している。2024年3月期は、美容内科「MAISONtheBEAUTY CLINIC」やアートメイククリニック「ars clinic TOKYO/GINZAMaison」に対するSNS広告運用やWebサイト開発、オンライン予約システムの導入などのマーケティング・運営DX支援により、粗利が71百万円増加した。
セグメント利益の減少については、美容カテゴリ及びメディカルマーケティング領域以外の粗利が減少したほか、美容マーケティング領域の事業成長のための人件費及び広告宣伝費の増加や、メディカルマーケティング領域のコスト増加が主因である。
(2) インベストメント事業
売上高は129百万円(前期比82.3%減)、売上総利益は72百万円(同61.7%減)、セグメント利益は70百万円(同62.3%減)となった。前期は営業投資有価証券の売却が2件あった一方で、2024年3月期は1件にとどまったこと、及び保有する営業投資有価証券の評価損失(50百万円)を計上したことにより減収減益となった。主にマーケティング事業向け投資原資獲得のための利益創出を目的としているため、社債については期間のリスクを考慮し、事業の資金需要に応じて柔軟に対応可能な半年程度で償還期日を迎えるものを中心に運用する。このほか、投資事業有限責任組合の持分投資やスタートアップ企業への投資を実施している。いずれも同社が詳しい業界や、協業が期待できる企業を対象に運用を行っている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
《HN》
提供:フィスコ