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7974 任天堂

東証P
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09:08 12/12
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時価総額 119,064億円
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安田秀樹【生成AIでカタリストが続出……10年後に大きく成長する電子部品3社とは?】<名物アナリストの“無忖度”銘柄診断>


●半導体とともに成長を続ける電子部品「積層セラミックコンデンサ」

 今回は電子部品業界についてお話したい。筆者は電子部品すべてをカバーしているわけではないが、積層セラミックコンデンサなどの受動部品とゲーム関連の半導体をリサーチしているので、今回は電子部品の話を進めたい。

 まず受動部品について簡単に説明したい。受動部品とは、供給される電力を消費したり、蓄積したり、放出したりといった受動的な動きをする電子部品で、抵抗器、変圧器、コンデンサなどがある。受動部品の中でも積層セラミックコンデンサは、半導体とセットで欠かせない部品で、一個当たりの単価は低いものの、搭載される機器一台当たりの付加価値自体は高く、デジタル化の進展で半導体の用途が拡大するとともに、継続的に成長している分野なのだ。

 昭和の時代にも電話機、券売機、炊飯器、洗濯機、自動車に半導体が使われることはあったが、あってもごく少量であった。しかし令和の現代ではビジネス、家庭、インフラと、あらゆる場所に多数の半導体が使われており、さらに自動車の分野では、かつては想像もできなかったような利用方法が増えた。

 具体的にはテスラ<TSLA>が米国で展開している完全自動運転支援ソフトウェア、「FSD(フルセルフドライビング)」がある。最新バージョンの「12.4.1」ではついに運転者がハンドルを握る必要がなくなった(前方注意義務などの運転者の責任は依然として存在しているが)。いわゆる人工知能(AI)の分野で、AI半導体を大量に使用することでFSDを実現していて、その大量の半導体とともに日本製の積層セラミックコンデンサが大活躍している。自動車一台に搭載される積層セラミックコンデンサは、ハイエンド車では2万個程度と、過去10年間で倍以上に増えているのだ。

 かつては夢物語だったことが実現しつつあるのは、半導体とソフトウェア、そして受動部品の進歩の賜物である。そして、受動部品の中で日本企業の貢献が大きいのが積層セラミックコンデンサで、特に村田製作所 <6981>、TDK <6762> 、太陽誘電 <6976>の3社が有望な銘柄と考えている。

●10年後に大きな成長が期待できる電子部品大手3社

 村田製作所は業界最大手の電子部品会社であり、扱っている製品も積層セラミックコンデンサからモジュール、二次電池と幅広い。積層セラミックコンデンサも安価な汎用品から高機能品まで幅広い製品で、30~40%の高シェアを誇っている。

 これは、同社が、①非常に高い生産能力を持ち、②高性能品を製造できる高い技術力を有しているからこそ可能になっている。ゲーム機などの一般的なビジネスでもそうだが、高いシェアというのは高い製造能力が源泉になるのである。村田製作所の強力な製造能力が世界の行動変容の原動力の一つになっている。

 TDKも受動部品大手だが、主力事業はリチウムイオン二次電池である。この点は後述するとして、積層セラミックコンデンサは自動車用途向けが売上高の大半を占めるため、村田製作所や太陽誘電と違って自動車産業の影響を受けやすいという特徴がある。中国市場を震源地とした電気自動車(EV)の価格競争が起こった結果であるのだが、自動車用の積層セラミックコンデンサは価格が下落している。その影響で同社の受動部品事業は成長が鈍化している。

 一方、主力のリチウムイオン二次電池は好調である。あまり知られていないが、民生機器向けの小型リチウムイオン二次電池では15%以上の利益率を誇りシェアも高い。日系メーカーはこの分野では中国、韓国勢にことごとく敗退した印象だが、同社は勝ち組である。昨年はシリコンを負極材とした新型リチウムイオン二次電池を発表したほか、全固体電池についてもプレスリリースが出ており、株価は上昇傾向が続いている。

 この全固体電池自体がすぐに業績に寄与するわけではないが、株式市場ではニュースで期待が形成されるので、2022年4月に就任した齋藤昇社長の積極的な行動が評価されているとも言えるだろう。

 最後に太陽誘電である。優良な会社なのだが、いかんせん知名度が低いことが問題である。同社の製品は村田製作所に引けを取らない品質なのだが、一般の認識としては、CD-Rを世界で初めて開発した企業でありながら、2015年にそれらを含む追記型光ディスク事業で撤退に追い込まれた企業、と知られているぐらいなのではないだろうか。

 だが実は、同社は積層セラミックコンデンサではハイエンド品のシェアも高く、最近はこれまで弱かった自動車向けでもシェアを上げている優良企業である。積層セラミックコンデンサとチップインダクタ(電磁気を利用した受動部品)では村田製作所に次ぐ高いシェアを持っている、隠れた高技術企業であることを強調しておきたい。

 これら3社は2023年の株価のパフォーマンスはいま一つだったが、私が所属する東洋証券がリサーチのポリシーとして掲げている「10年後に大きくなる会社を探す」という考えには合致する会社で投資妙味があると考えている。なぜ、10年後に成長しているのか? その牽引分野を2つほど紹介しよう。

●広がる生成AIの用途……ゲーム分野も関連銘柄に

 まずは生成AI用データセンターだ。生成AI関連銘柄と言えばエヌビディア<NVDA>やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ<AMD>といった半導体や、グーグル(アルファベット<GOOG>)、マイクロソフト<MSFT>、アマゾン<AMZN>などのビッグテックが思い浮かぶ。こうした生成AI向けのパブリックデータセンター(ビッグテックなどが運営する巨大なサーバー群のこと)に使われるサーバー1台当たりでは、従来のインテル・アーキテクチャータイプサーバーの2倍から3倍の積層セラミックコンデンサが使われている(各社によってコメントが違うため幅がある)。

 生成AIはすそ野が広く、日本ではソフトバンク <9434>、KDDI <9433>といった通信事業者が先を争うようにデータセンター投資を行っている。特にソフトバンクは1000億円以上の投資を発表しており、シャープ <6753> の本社に隣接する液晶工場跡の一部をデータセンター化する独占交渉権を得た。ここでエヌビディアのチップを大量に投入し、生成AI分野に活用するわけだが、この背景には関西電力 <9503> の電気料金が安いこともあるようだ。

 上記の通信事業者に加え、生成AIはゲーム分野のビジネスでも使われていくだろう。ゲーム分野では、すでにインディペンデントで生成AIを活用したゲームも登場していて、まさかと思われるような生成AIの使われ方が、一般ユーザーの目に触れることも増えてきている。

 もちろん、今後は任天堂 <7974>やカプコン <9697>、スクウェア・エニックス・ホールディングス <9684> 、コーエーテクモホールディングス <3635> 、セガサミーホールディングス <6460>などのゲーム会社もターゲットに入ってくるだろう。特に任天堂はエヌビディアと協業している大事なパートナーであり、「Switch」の後継機ではAI技術を活用する可能性が高い。こうしてAIの用途が広がれば、それに合わせて積層セラミックコンデンサの用途も広がるのだ。

●自動運転の普及でも高成長を期待

 さらに大きな期待が持てるのが自動車の電装化である。最近、電気自動車市場の変調がよく報道されているが、積層セラミックコンデンサの利用という観点では、電気自動車もハイブリッド車(HV)もあまり大きな差がない。自動車一台当たりの積層セラミックコンデンサ搭載数は、今や1万個から2万個レベルまで増加しているが、今後もさらに増加すると考えており、2030年頃までには2.5万個のレベルに達すると予測している。

 自動車の電装化が進めば、積層セラミックコンデンサの搭載数量も増える。中でも日本の自動車メーカーに期待が持てるだろう。運転支援ソフトウェアは、マニュアルトランスミッション(MT)よりオートマティックトランスミッション(AT)の方が相性はいいが、欧州では依然としてMTが主流だからだ。今後は、前述のFSDのみならず、日系の自動車メーカーでも自動運転レベル2クラスの運転支援機能が一般化すると考えている。

 そして、レベル2クラスとなれば、高成長が期待できるソニーグループ <6758> のCMOSセンサーや、パナソニック ホールディングス <6752> 、三菱電機 <6503>などが手掛けるミリ波レーダーといったセンサー類やパワー半導体は必須なので、ここでも受動部品の用途は拡大する。また、エヌビディアのチップはサイズが大きく、チップ単体だけで100個単位の積層セラミックコンデンサが必要になると言われている。したがって高度なAIを搭載した自動運転車となると、AI用半導体はもちろん、それ以上に莫大な積層セラミックコンデンサが必要になるのだ。

 受動部品の需要は、この製品がこの世に誕生して以来、ひたすら拡大し続けている。こうした電子部品によって、人間はより創造的で付加価値の高い仕事に取り組むことが可能になったからだ。それは今後も変わらないはずだし、だからこそ、受動部品の代表格でもある積層セラミックコンデンサに強みを持つ企業は長期的に投資できる対象だと考えるのである。

【著者】
安田秀樹〈やすだ・ひでき〉
東洋証券アナリスト 

1972年生まれ。96年4月にテクニカル・アナリストのアシスタントとしてエース証券に入社。その後、エース経済研究所に異動し、2001年より電子部品、運輸、ゲーム業界担当アナリストとして、物流や民生機器を含む幅広い分野を担当。24年5月に東洋証券に移籍し、同社アナリストとなる。忖度のないオピニオンで、個人投資家にも人気が高い。現在、人気Vチューバーとの掛け合いによるYouTube動画「ゲーム業界WEBセミナー」を随時、公開中。

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