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小池百合子氏が都知事選制す、「東京大改革3.0」で関連有望株が躍動へ <株探トップ特集>


―現職不敗神話は揺らがず、公約“3本柱”は株式市場でまだまだ行けるか、行けないか? ―

 やはり“現職”は強かった。東京都知事選挙は小池百合子氏が制し、“現職不敗神話”は揺らぐことがなかった。今回の都知事選は過去最多の56人が立候補し、小池氏が前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏、前立憲民主党参院議員の蓮舫氏など有力候補を抑え当選した。株式市場では、その政策内容に沿う銘柄が「小池関連株」として注目度が高く、投資家の熱い視線が向けられてきた。ただ、最近では政策の実効性に懐疑的な見方も浮上しており、小池関連株については色あせた感も拭えない。とはいえ、71歳の小池氏にとっては、集大成になる可能性の高い3期目になるだけに、政策的レガシーを残すべくその老獪(ろうかい)な手腕に期待する声も少なくない。「小池関連株」を点検した。

●神通力は消えたか?

 マーケット関係者の相場的観点から見た反応は、いたって冷ややかだ。今回の選挙戦の最中、「過去2回の都知事選までは、彼女の政策に株式市場は敏感だったが、もはや神通力を失った」(証券ジャーナリスト)と言う声が聞こえていた。また中堅証券ストラテジストも「政策的には、これまでとあまり代わり映えがしない。マーケットで改めて小池関連が物色されるような展開は正直考えにくい」としている。前出の証券ジャーナリストは一夜明けたきょう、「当選したいま、石原慎太郎元知事がそうだったように、もしかしたら4期目も視野に入れているかも」と話す。兎にも角にも小池丸は3期目の船出を迎える。

 確かに、今回の公約は新味に欠けていたこともあり、かつて同氏の一挙手一投足に熱い視線を向けていた投資家の姿は少数となったというのが共通の印象だ。それでも、欧州の中堅国の経済規模を持つ首都東京の盟主が掲げる政策なだけに、まだまだ注目は怠れない。スローガンは「東京大改革3.0」、その中身に迫った。

●「セーフシティ」で日ヒュム、安藤ハザマ、古河電

 “当確”が出た直後の小池氏への報道各社のインタビューで、強く印象に残ったのが「首都防衛」という言葉を使い強調した 防災への備えだった。人命にかかわる過酷な暑さや、ゲリラ豪雨などが頻発化するなか、災害への対策強化に向けた姿勢をうかがわせた。

 今回の都知事選での同氏の公約は、「セーフシティ」「ダイバーシティ」「スマートシティ」の“3本の柱”からなり「東京大改革3.0」を推し進めるとしている。小池関連として、かつて株式市場で特に熱い視線が向かったのが「電線地中化(無電柱化)」関連だった。今回の選挙でも、「セーフシティ」の一つとして「災害時、道路を活かし命を守る『無電柱化』の推進」を公約に掲げている。

 「電線地中化」関連株としては、共同溝などコンクリート2次製品を手掛ける日本ヒューム <5262> [東証P]、イトーヨーギョー <5287> [東証S]、ベルテクスコーポレーション <5290> [東証S]や、電力鉄塔大手の那須電機鉄工 <5922> [東証S]、電線御三家と言われる古河電気工業 <5801> [東証P]、住友電気工業 <5802> [東証P]、フジクラ <5803> [東証P]などが挙げられる。また、電線地中化を推進する建設コンサルタントのオオバ <9765> [東証P]なども関連株の一角として関心が高い。このうち日ヒュムの25年3月期連結営業利益は、前期比23.0%増の17億円を予想。株価も上値指向は強く、きょうもザラ場に年初来高値を更新する場面があるなど、ここからの動きを注視しておきたい。

 首都直下型地震の発生が予測されるうえ、集中豪雨などによる自然災害が頻発化するなか、「セーフシティ」では、「地震・火災から命を守る木造住宅密集地域の解消促進」「新たな『調節池』の整備で水害に強いまちづくり」など、防災・減災に絡む政策を掲げる。こうしたなか興味深いのは「『シェルター整備』でミサイルの危機から都民を守る」「富士山噴火を想定した降灰対策の実施」といった公約で、新たな関連株を生む可能性もある。

 豪雨災害が頻発化するなか、一時的に河川への雨水の流出量を調節し洪水被害を抑える新たな調節池の整備を示唆。調節池整備に伴う工事や雨水貯留施設を手掛ける大豊建設 <1822> [東証S]や、調節池整備で実績のある安藤・間 <1719> [東証P]などには活躍の舞台が広がりそうだ。安藤ハザマの25年3月期の連結営業利益は前期比23.2%増の229億円を計画。株価は、6月17日に1088円まで売られ、年初来安値を更新した後は、急速に切り返している。

●「スマートシティ」ならセキュア、能美防災、世紀東急

 また、 「スマートシティ」では「防犯カメラの設置拡大や防犯機器助成拡充」が掲げられており、防犯カメラ(監視カメラ)関連株には需要拡大への思惑が漂う。凶悪な事件が多発するなか、折に触れて「監視カメラ」関連株に向けられる投資家の視線は熱い。防犯カメラシステムが主力のあい ホールディングス <3076> [東証P]、監視カメラ用レンズで飛躍するタムロン <7740> [東証P]、ファブレス半導体企業で監視カメラ向けIC製品を手掛け株価が上昇気流に乗るザインエレクトロニクス <6769> [東証S]に注目。加えて、エレクトロニクス商社で、商品監視システム機器や多くの監視カメラシステムを扱う高千穂交易 <2676> [東証P]、法人向け入退室管理や監視カメラシステムを提供するセキュア <4264> [東証G]などにも妙味がありそうだ。

 セキュアの24年12月期は、連結営業利益段階で前期比59.6%増の3億円を計画しており、過去最高益を更新する見通しだ。株価は、6月24日に直近安値となる1871円まで下押したが、ここを底値に調整一巡感が漂う。

 「 熱中症から命を守る、暑さ対策の推進」も掲げている。最近では、気温が40度を超す日もあり、熱中症による健康被害も増加の一途だ。都市化の進展が気温の上昇を招くヒートアイランド現象は、メガシティーである東京にとって喫緊の課題と言える。

 こうしたなか、設置周辺の気温を2~3度低下させる「ミスト(霧)発生装置」も熱中症対策として有効だ。かつて、小池氏も東京五輪での対策の一つとしてミストに言及していた。能美防災 <6744> [東証P] の「ドライミスト」は、極めて微細な粒子で蒸散作用に優れており人に触れてもほとんど濡れるという感触がない。また、上水道を直接使用し、ステンレス配管を採用するなど、衛生面にも十分配慮されている。ちなみに、なじみの深い「ドライミスト」という名称は能美防災の登録商標だ。また、屋外作業機械で国内トップクラスを走るやまびこ <6250> [東証P]も扇風機を上部につけた移動タイプ(水タンク一体型)と設置タイプ(ノズル・送風機組み合わせ)の「レインボーミスト」を擁し、暑さ対策で活躍期待が高まる。能美防災の株価は、直近安値の2188円を底に切り返し、現在は2500円近辺に位置する。また、やまびこは新値圏でもみ合っており、ここからの展開に注目が集まっている。

 夏の直射日光を浴びる道路は過酷な環境になるが、これもヒートアイランド現象を助長する。こうした路面の温度上昇を抑える「遮熱性舗装」を手掛ける世紀東急工業 <1898> [東証P]、東亜道路工業 <1882> [東証P]、三井住建道路 <1776> [東証S]などにも注目。また、「屋上緑化」はヒートアイランド対策に効果的と言われており、屋上緑化システムの三晃金属工業 <1972> [東証S]や、屋上緑化に欠かすことのできない防水シートを手掛けるロンシール工業 <4224> [東証S]にも目を配っておきたい。

●「ダイバーシティ」でJPHD、追加公約「ホームドア」は京三、信号

 「ダイバーシティ」では、「学童保育の待機児童ゼロと質の向上へ」「学童対策の抜本的充実」などを掲げており、関連株にも目を向けておく必要がある。首都圏を中心に保育所や学童クラブ・児童館を運営するグローバルキッズCOMPANY <6189> [東証S]、子育て支援最大手で認可保育所や学童クラブなどを運営するJPホールディングス <2749> [東証P]にも活躍場面が訪れる可能性がある。JPHDの株価は高値圏で頑強な展開をみせているが、ここからの動きに関心が向かう状況だ。同社の25年3月期の連結営業利益は、前期比3.6%増の47億5100万円と伸び率は鈍化するものの、営業最高益を更新する見込みだ。

 小池氏は選挙戦終盤、6月30日の中小企業の事業承継支援を皮切りに、7月に入ってからは ホームドアの整備加速、経済の動脈である物流支援策、スタートアップ支援などの追加公約を矢継ぎ早に公表した。このなか、ホームドアの整備加速に注目。都営地下鉄では今年2月に106駅の全てにホームドアの設置が完了したが、同氏は官民連携で設置を「もっと!加速」させることを表明している。

 東京都全域を見渡してみれば、未設置の駅は多いだけに、ナブテスコ <6268> [東証P]、高見沢サイバネティックス <6424> [東証S]、日本信号 <6741> [東証P]、京三製作所 <6742> [東証P]といったホームドア関連株への注目は怠れない。このなか京三は、25年3月期の連結営業利益で前期比2.3倍の57億円と、28年ぶりとなる過去最高益更新を見込む。株価は今月1日に年初来高値を更新。現在は上昇一服も、ここからの展開には注視しておきたい。また、信号の25年3月期の連結営業利益は前期比17.2%増の80億円を目指し、連続の2ケタ増益となる見通しだ。

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