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【特集】「業務スーパー」に次ぐ事業の柱は何か? 神戸物産・沼田博和社長に聞く <トップインタビュー>

沼田博和氏(神戸物産 代表取締役社長)

─「製販一体」のビジネスモデルで食品スーパー業界では異例の急成長を実現─

「一般のお客様大歓迎」─こんな不思議なコピーが書かれた看板とともに、2000年代に入って突如、私たちの前に姿を現し、瞬く間に全国区の知名度を獲得した「業務スーパー」。この異色スーパーを運営する神戸物産 <3038> [東証P]は、直近10年で純利益が10倍近くに成長、株価も40倍化するなど、わずかな期間でわが国の小売りセクターの代表的な企業へと成長した。さらに現在は「業務スーパー」店舗網のさらなる拡大と、PB(プライベート・ブランド)商品比率40%超、営業利益率10%超の達成という、スーパー業界の常識から考えれば“異次元”と言える高い目標を掲げ、新たな成長ステージへと歩みを進めている。同社の沼田博和社長に目標達成への道筋と、その先にある同社の将来像について話を聞いた。(聞き手・樫原史朗:2024年5月8日取材)

※なお、本インタビュー記事はプレミアム会員コンテンツの抜粋版です。文末に全編へのご案内がありますので、ぜひ、ご参照ください。

●メディアを動かしたどこにもない“オンリーワン”商品の魅力

──社長に就任されて12年が経ちました。創業者であるお父様(沼田昭二氏)が退社し、沼田社長が単独で指揮するようになった2017年以降、株式市場での注目が急激に高まりました。

 17年以降、当社の知名度が急激に上がったのは、やはりPB商品の強化が実を結んだのだろうなと思っています。PB商品の強化は、私が社長に就任して間もない13年から始めました。日欧EPA(日本と欧州連合の経済連携協定)の交渉が始まった頃で、当時はまだ、中国製が輸入食品の9割ぐらいを占めていました。私自身、もっと輸入元を拡大する必要があると感じていたのですが、ヨーロッパの展示会に行ったときに、日本でも人気が高いベルギーワッフルが目に留まったのです。これを直輸入ができれば面白いのではないかとひらめき、商品化したのがきっかけです。

──その後、タピオカ・ブームが訪れ、「業務スーパー」がメディアで紹介される機会が急激に増えましたね。

 一つのきっかけとなったのは、TBSの人気番組「坂上&指原のつぶれない店」(19年2月17日放送)で特集していただいたことです。この番組の取材班には、それ以前の取材でもお世話になっていて、当社のビジネスモデルを十分に理解していただいていたことが大きかった。結果としてIRだけでは伝えきれなかった当社のビジネスモデルの特徴を、テレビというメディアを通して広く伝えることができたのです。

 併せてその頃はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)がすごい勢いで伸びていて、そこで当社の商品が取り上げられることが増えていきました。私たちはどこにもない"オンリーワン"の商品を扱っています。だから、インフルエンサーの皆さんからするとネタには困らず、発信のしがいがあったようです。その後もこういったインフルエンサーを刺激するようなプロモーションには力を入れて取り組んでいます。

●自由度の高いFC展開、だが核心部分はしっかり指導

──なるほど。ところで、「業務スーパー」の特徴の一つに、各店舗やフランチャイジーにとって自由度の高い、"緩い"FC展開が挙げられていますね。

 コンビニエンスストアとよく比較されますが、コンビニは本部が細かいところまできっちりと決めて、その通りに各店舗は運営しています。ですが、私たちは極力、フランチャイジーの特徴を生かそうというスタンスで運営しています。例えばフランチャイジーの母体が酒屋なら、お酒を目立つところに陳列してもらってもいいですし、肉屋なら精肉売り場を魅力的に仕上げていただいてもいい。

 もちろん、私たちが守ってきている店舗運営の核心的な部分についてはしっかり指導して守ってもらうようにしています。ですが、それ以外の部分は、各店舗ならではの魅力を出してもらいたいのです。では核心とは何かというと、一つは販売管理費のコントロールの部分です。店舗のオペレーションであったり、什器の選び方であったり、販売管理費に直結する部分については、徹底的に当社の基準を守っていただくようにしています。

 もう一つはやはりPB商品ですね。PB商品は「業務スーパー」の最大の特徴ですが、私が入社した当時は、それを理解していただいていないフランチャイジーも少なくなかったのです。中には売れ筋のNB(ナショナル・ブランド)商品ばかりを優先的に陳列していた店舗もありました。つまりFC本部として最も重要な部分を伝える努力が不足していたのです。

●PB商品拡充の両輪はM&Aと国内工場の増強

──中期経営計画でもPB商品の拡充を打ち出していますね。御社はこれまで、国内工場の再生M&Aで大きな成果を上げてきましたが、こうしたM&Aをこれからも進めていくということですか。

 国内工場のM&Aについては常に考えています。買収後の工場再生の手法は、当社のグループ工場でも、それぞれのステージによって事業の考え方が異なっていて、グループ入りしたばかりのステージでは、まず生産する商品を徹底的に絞り、商品の値付けも、「限界を超えるのではないか」と思えるような低価格に設定し、「少品種大量生産」の体制を構築していきます。この段階では、生産する商品を一人でも多くのお客様に買っていただく、ということを最優先の目的としています。

 こうして軌道に乗って工場の生産力を上げていくと、ある時点で成長スピードが鈍化する局面が訪れます。この局面になると、生産品目を増やしたり、より効率的な生産ができるように設備を入れ替えたりして食品工場としての機能を拡充し、事業をステップアップさせていくのです。

 いまの当社では常に投資対効果が重要なキーワードになっていて、どの事業もこれを意識して進めています。ですから工場のM&Aもやみくもに進めるわけではなく、投資に見合う事業に成長させることができるかを精査し、買収した後もさらに利益を拡大するにはどうすればいいのかを検討しながら、事業をステップアップしていくための最善の方策を採るようにしているのです。

──PB商品拡充に向けては、M&Aとともにグループ内の工場の増強を進めるということですね。

 その通りです。コロナ禍以降この数年間は店舗や物流の改善にも取り組んできたのですが、今後は国内工場の増強にも改めて力を入れていきたいと考えています。いま、PB商品の構成比率は、国内工場が3分の1ぐらいで、海外からの輸入が3分の2ぐらい。そのうちの過半数は中国が占めている、という状況です。

 カントリーリスクを考えれば、中国での生産比率はもう少し下げたいとは思っているのですが、それはあくまでも他国生産の食品の品質が上がってくれば、という前提です。「よいものを安く販売する」という当社の大方針に当てはめて考えれば、現状では明らかに中国製食品のほうが優れているものが多いからです。というのも、中国では食品の輸出を国策として取り組んでいて、国の威信が掛かっていますから、国の厳しい基準をクリアしなければ輸出することができません。ですから正直なところ、中国製PB商品の品質レベルは日本よりも高いぐらいなのです。かつてのイメージとは大違いです。

●スーパーでは異次元、営業利益率10%は十分、達成可能

──では次に株式市場の御社に対する評価について伺います。2017年から21年まで株価は4年で約9倍になるほどの上昇を見せました。ですが現在はやや上値が重い状態が続いています。

 当社の現状、業績やビジネスモデルの特徴、事業の成長性などを現在の株価と照らし合わせてみると、決して低い株価水準ではないと考えています。つまり、これから株価を上げて、上場来高値を更新していくためには、私たちが再度、事業成長のスピードを上げていかなければならない、ということです。

 それには「業務スーパー」事業をさらに成長させていくことはもちろんですが、「プレミアムカルビ」「神戸クック・ワールドビュッフェ」「馳走菜」など外食・中食事業もしっかりと"収益の柱"に育てていかなければならない。幸いなことに、それぞれに事業が順調に成長し、軌道に乗り出していますので、今後の成長には大いに期待ができるのではないかと考えています。

──昨年12月に発表された中期経営計画について伺います。長期ビジョンとして国内1500店舗以上の達成や営業利益率を10%以上にすること、PB商品比率を40%以上に高めることなどを目標として打ち出されていますね。
 
長期ビジョンで打ち出した営業利益率10%という数字は、「とても無理だろう」という市場関係者の声も聞こえるくらい高い目標です。スーパー業界ではよくても5%ぐらいですからね。でも私たちとしては高い確率で達成できるだろうと考えています。

 なぜなら、いま、国内のグループ工場は、私が社長に就任した頃に比べてかなりの利益体質になっています。「業務スーパー」のFC店舗も、以前の「よい商品をつくれば勝手に売れる」という考え方から、「よい商品をより多く売るためにはどうすればいいか」という考え方に変わってきています。組織全体として「製販一体」を実現する強固な体制が整ってきているのです。

 あと取り組まなければならないのは、サプライチェーンの改善です。この部分は物流拠点の増設や入れ替えなどで、まだまだ改善余地があると考えています。店舗網は順調に拡大中なので、規模に応じた効率化を図るということです。こうした施策を一つ一つ積み重ねていけば、十分に営業利益率10%は達成可能だと考えています。

●「業務スーパー」以外の事業でも大きな夢を追う

──最後に全国の株式投資家に向けて、今後の成長へ向けてのビジョンをお話しください。

 市場関係者からよく、「神戸物産という社名は事業の実態を反映していないから名前を変えたらどうですか」と言われます。知名度が高い「業務スーパー」が社名でもいいじゃないか、と(笑)。それに対する答えは、「私たちは『業務スーパー』だけの会社ではない」ということなんです。

 もちろん、「業務スーパー」は今後も当社の中核事業であり続けます。ですがそれだけでなく、私たちは、食にかかわる事業の中で、人々の生活に「なくてはならない」存在になるためにはどうすればいいか、ということを常に考え続けています。この「なくてはならない」という意味は、当社でしか提供できないもの、ということです。

 例えばレストランなら、他の店にはないような商品やサービスをいかに生み出すことができるか。ご存じの通り、外食産業は参入障壁が低いこともあって、小売り業以上に競争の激しいマーケットです。だから10年残るブランドはほとんどないのが実情なのですが、それでも他店との差別化が成功した店は、長く残るブランドに育っています。当社の事業では、「神戸クック・ワールドビュッフェ」が10年以上続いており、利用者の満足度も高く、十分に他店と差別化できているのではないかと考えています。

 いまの神戸物産という会社が誕生して25年近く経ちます。創業期は過ぎ、「業務スーパー」事業は成熟期に差し掛かったと言えるかもしれません。ですが、以前と違うのは、組織として圧倒的に骨太になっているということです。足もとの急速な円安などの逆風もありますが、そんな中でも組織がしっかりと機能し、いまはどんな状況になろうと、確実に収益を上げるようにコントロールする体制ができています。

 だから私としては神戸物産グループの事業全体で見ればまだまだ大きな夢を追うことはできると考えていますし、事業を大きく成長させていくことも十分可能だと確信しています。投資家の皆さんにはぜひ、長期的な視点で当社への投資を検討していただきたいと思います。

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上記記事は、株探プレミアム特集『Buy&Hold STORIES』神戸物産篇・沼田博和社長特別インタビューの抜粋版です。

「社長就任後に訪れた最大の試練とは?」「創業者との経営スタンスの違いは?」「これから有望なPB商品の輸入国とは?」「今後のFC展開の可能性は?」「10年後の成長へ向けての秘策とは?」……

本インタビューの全編は、株探プレミアムにご登録のうえ、下記ページよりご覧ください。

⇒ 【特集】神戸物産 沼田博和社長・特別インタビュー(前編)
⇒ 【特集】『Buy&Hold STORIES』神戸物産篇・全話公開中

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