NSW Research Memo(5):エンタープライズソリューションと、エンベデッドソリューションが好調
■業績動向
2. セグメント別概況
(1) エンタープライズソリューション
売上高は16,701百万円(前期比13.0%増)、営業利益は2,438百万円(同16.2%増)、営業利益率は14.6%(同0.4ポイント上昇)となり、NSW<9739>の好業績をけん引した。売上高については、小売業向け開発とシステム機器販売の増加に加え、金融業向けのシステム開発も好調推移したことで増収となった。営業利益については、増収に伴う売上総利益の増加に加え、販管費の低減を進め、収益性の高い案件の貢献により増益となった。計画比では、売上高は5.0%上回り、営業利益は21.3%と大きく上回った。また、受注高は16,745百万円(同3.4%増)と堅調であった。
売上高の内訳を見ると、ビジネスソリューションの売上高は5,959百万円(前期比11.8%増)であった。製造業・物流業向けの自社パッケージの提供により堅調に推移し、小売業向けもPOSシステムなど、既存の大手流通顧客向けの新店対応やインフラ案件の着手などにより大幅に伸長した。また、金融・公共ソリューションの売上高は7,857百万円(同6.6%増)となった。金融・保険業向けはカード決済分野の業務が大きく伸長し、官公庁・団体向けは、公共・社会保障領域の関連システムなどを取り込み堅調だった。さらに、システム機器販売の売上高は2,884百万円(同39.0%増)の大幅増収であった。特に小売業向け顧客の新店対応などに伴う機器販売が大幅に増加した。
(2) サービスソリューション
売上高は13,985百万円(前期比7.6%増)、営業利益は425百万円(同16.5%減)、営業利益率は3.0%(同0.9ポイント低下)となった。売上高については、Web開発分野の大型案件獲得により増収となった。営業利益については、一部大型プロジェクトの不採算化により減益となった。計画比では、売上高は案件を着実に積み上げて4.4%上回った。ただ、営業利益は不採算案件の影響により45.5%下回った。同セグメントは2020年3月期より独立したセグメントであり、事業拡大に向けた体制強化、新サービス展開のための先行投資などが影響し、他セグメントと比較し営業利益率が相対的に低い。事業が軌道に乗り同社全体の業績に貢献するには、もう少し時間がかかりそうだ。一方、受注高は14,103百万円(同2.1%増)となった。
売上高の内訳を見ると、クラウド・インフラサービスの売上高は9,947百万円(前期比0.9%増)となった。クラウドは、堅調なクラウド利用の需要に伴いパブリッククラウドを中心とした構築関連が増加した。インフラ・その他サービスは、データマネジメント分野が好調に推移し拡大傾向が続いている。デジタルソリューションの売上高は4,038百万円(同28.8%増)となった。IoT・AIは、IoT分野の顧客深耕により堅調に推移したことで事業の安定化に注力した。さらに、Web・ECは既存顧客案件の一部不採算化によりセグメント利益が減少した。
(3) エンベデッドソリューション
売上高は10,650百万円(前期比8.7%増)、営業利益は1,598百万円(同13.8%増)、営業利益率は15.0%(同0.7ポイント上昇)となった。売上高は100億円台に乗り、利益率も高水準を維持した。売上高については、オートモーティブ、モバイル、設備機器の各分野とも好調に推移した。また、利益については、増収に伴う売上総利益の増加により増益となった。計画比では売上高が5.5%、営業利益は11.8%それぞれ上回った。既存顧客の深耕により生産性が向上し、引き続き高い利益率を維持しているが、これは既述のとおり技術的な参入障壁が高く、独立系の同社規模で同事業を手掛ける企業が少ないためと考えられる。なお、受注高については10,894百万円(同11.6%増)と堅調である。
売上高の内訳を見ると、同社の得意分野であるオートモーティブは、SDV※の需要増により案件増加と対応領域の拡大に取り組み、増収に貢献した。モバイルは、キャリア向け開発や金融関連アプリ開発などが増加した。設備機器は、放送設備関連やエネルギー分野などが好調を維持した。通信ではネットワーク機器開発関連が好調ながら、5G開発の収束に伴い横ばいに留まった。
※Software Defined Vehicleの略で、ソフトウェアを変更することで価値や機能を増やしたり性能を高められる自動車のこと。
(4) デバイスソリューション
売上高は8,961百万円(前期比3.9%増)、営業利益は1,400百万円(同1.9%増)、営業利益率は15.6%(同0.3ポイント低下)となった。売上高は、半導体における設計・開発・評価分野が堅調に推移し増収となった。利益については、増収に伴う売上総利益の増加により、リソースの海外活用に伴うコストアップを吸収して増益となった。計画比では売上高が1.5%下回ったが、営業利益が1.5%上回り、利益率は15.6%(計画比0.5ポイント上昇)となった。エンベデッドソリューション同様、既存顧客の深耕により生産性が向上して営業利益率が上昇したほか、技術的な参入障壁が高く、独立系の同社規模で同事業を手掛ける企業が少ないこともあり、引き続き高い利益率を維持している。同社は汎用的な分野ではなく個別分野で強いが、取引先が固まっている分野であるため、主要顧客との関係を深掘りして業績を伸ばしている。受注高は9,040百万円(同0.2%増)と横ばいに留まり、今後の半導体関連の動向を注視する考えだ。
売上高の内訳を見ると、一部既存顧客の案件谷間などが影響したものの、半導体設計開発評価を中心とする主要事業は堅調に増加した。ただ、半導体分野は特に専門性が高く、業界全体の慢性的な人材不足もあり、同社では、ベトナムをはじめ東南アジア中心に海外活用やパートナー連携を本格化している。また、台湾でもアライアンスを組み、海外企業からの案件獲得も目指し、新規開拓を進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《SO》
提供:フィスコ