明日の株式相場に向けて=アドテストと東電の下げが暗示するもの
きょう(30日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比502円安の3万8054円と大幅安で3日続落。一時900円超の急落に見舞われる場面もあった。その後は先物にアンワインドの動きが生じ下げ渋る展開とはなったが、気が付けば日経平均は3万8000円台を巡る攻防にあり、4万円大台の“岸”からは大分沖に流されてしまった感がある。値ごろ感から買い向かいたいのはヤマヤマながら、今の相場が引き潮にあるという疑念が拭い切れなくなっているのも事実だ。相場は静観する勇気が必要な時もある。
前日を振り返るとアジア時間からリスクオフの流れが形成されており、中国・上海株市場を除き総じて下値を探る展開となっていたが、それを引き継いだ欧州株市場も全面安、更に米国株市場ではNYダウが400ドルあまりの下げに見舞われ、頼みの綱のナスダック総合株価指数もさすがに抗(あらが)えず反落を余儀なくされた。少し前の世界同時株高局面では東京市場はその波に乗ることができず悶々としたムードが漂ったが、皮肉にも世界同時株安となると、今度は他国市場に輪をかけて売り込まれる格好となってしまう。今の日本株の需給関係の悪さを物語っている。
これまでと何が変わったかといえば、明確なのは国内外で再び金利上昇圧力が高まっていること。これまでは米長期金利ばかり俎上に載せられていたが、欧州や日本でも金利上昇が株式市場の“目に見える敵”として意識され始めた。日本では10年債利回りがきょうは一時1.100%をつけた。もちろん欧米と比べれば別次元で、たかが1%強に過ぎないが、ついこの間まで世界で唯一のマイナス金利国であった日本にとってはそれなりに重い。
長期金利の1.1%台乗せは2011年7月以来約13年ぶりという。これについて市場では「12年の年末からスタートしたアベノミクス相場以前の段階まで時計の針が戻った」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。11年7月当時の日経平均は1万円近辺で菅直人政権から野田政権に移行する直前のタイミングだった。金利と株価は別モノで、当時の長期金利に日経平均が歩調を合わせて1万円まで下げると考えるのはさすがにナンセンスだが、実は旧マザーズ指数であるグロース250指数をみるとあながち一笑に付すこともできない。きょうは取引時間中にフシ目の600を下回り594まで下げる場面があった。今から13年前のマザーズ指数(グロース250)は450~480で推移していた。つまり、あと100ポイント下げれば、ほぼ同水準といってよい。追い証があまり発生していない中でのこの状況は、戦慄に近いものを覚える。
今の相場のタチの悪さは、逆説的になるが売り方が暗躍した形跡が薄いこと。「直近の空売り比率は40%強に過ぎず仕掛け的な売りが乗せられている感じではない。昨年9月後半から10月初旬にかけて日経平均が3000円あまりの急落をみせたときの空売り比率は48%近くに達していた」(中堅証券ストラテジスト)という。空売りが積み上がっていれば、その買い戻しが下げに対するブレーキの役割を果たし、ともすれば踏み上げ相場の糧ともなるが、ショート筋不在の実需主体の下げは復活にも時間がかかる。
一方、光明がないわけではない。きょうは大嵐に見舞われたようだが、プライム市場の値上がり銘柄数は982で全体の6割を占めた。MSCIの構成銘柄見直しに絡む先回り的な売りが乗せられている可能性があり、実際きょうの下げも先物が絡む主力大型株に偏っていた。現時点で相場が引き潮にあると判断するのは早計かもしれない。ただ、6月相場が仮に戻りに入っても、メインストリートを走る銘柄が入れ替わるケースも念頭に置きたい。個別では半導体関連でアドバンテスト<6857>、電力株では東京電力ホールディングス<9501>の下げが苛烈であり、これが何を意味しているのか読み解く時間も必要だ。
あすのスケジュールでは、4月の失業率、4月の有効求人倍率、4月の鉱工業生産指数(速報値)、4月の商業動態統計のほか、5月の都区部消費者物価指数(CPI)にマーケットの関心が高い。また、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札が予定。午後に4月の自動車輸出実績、4月の住宅着工統計が発表され、夜には5月の為替介入実績が財務省から開示される。海外では5月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)、5月の中国非製造業PMI、インドの1~3月期国内総生産(GDP)、5月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)のほか、4月の米個人所得・個人消費支出・PCEデフレータが注目されている。(銀)
出所:MINKABU PRESS
前日を振り返るとアジア時間からリスクオフの流れが形成されており、中国・上海株市場を除き総じて下値を探る展開となっていたが、それを引き継いだ欧州株市場も全面安、更に米国株市場ではNYダウが400ドルあまりの下げに見舞われ、頼みの綱のナスダック総合株価指数もさすがに抗(あらが)えず反落を余儀なくされた。少し前の世界同時株高局面では東京市場はその波に乗ることができず悶々としたムードが漂ったが、皮肉にも世界同時株安となると、今度は他国市場に輪をかけて売り込まれる格好となってしまう。今の日本株の需給関係の悪さを物語っている。
これまでと何が変わったかといえば、明確なのは国内外で再び金利上昇圧力が高まっていること。これまでは米長期金利ばかり俎上に載せられていたが、欧州や日本でも金利上昇が株式市場の“目に見える敵”として意識され始めた。日本では10年債利回りがきょうは一時1.100%をつけた。もちろん欧米と比べれば別次元で、たかが1%強に過ぎないが、ついこの間まで世界で唯一のマイナス金利国であった日本にとってはそれなりに重い。
長期金利の1.1%台乗せは2011年7月以来約13年ぶりという。これについて市場では「12年の年末からスタートしたアベノミクス相場以前の段階まで時計の針が戻った」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。11年7月当時の日経平均は1万円近辺で菅直人政権から野田政権に移行する直前のタイミングだった。金利と株価は別モノで、当時の長期金利に日経平均が歩調を合わせて1万円まで下げると考えるのはさすがにナンセンスだが、実は旧マザーズ指数であるグロース250指数をみるとあながち一笑に付すこともできない。きょうは取引時間中にフシ目の600を下回り594まで下げる場面があった。今から13年前のマザーズ指数(グロース250)は450~480で推移していた。つまり、あと100ポイント下げれば、ほぼ同水準といってよい。追い証があまり発生していない中でのこの状況は、戦慄に近いものを覚える。
今の相場のタチの悪さは、逆説的になるが売り方が暗躍した形跡が薄いこと。「直近の空売り比率は40%強に過ぎず仕掛け的な売りが乗せられている感じではない。昨年9月後半から10月初旬にかけて日経平均が3000円あまりの急落をみせたときの空売り比率は48%近くに達していた」(中堅証券ストラテジスト)という。空売りが積み上がっていれば、その買い戻しが下げに対するブレーキの役割を果たし、ともすれば踏み上げ相場の糧ともなるが、ショート筋不在の実需主体の下げは復活にも時間がかかる。
一方、光明がないわけではない。きょうは大嵐に見舞われたようだが、プライム市場の値上がり銘柄数は982で全体の6割を占めた。MSCIの構成銘柄見直しに絡む先回り的な売りが乗せられている可能性があり、実際きょうの下げも先物が絡む主力大型株に偏っていた。現時点で相場が引き潮にあると判断するのは早計かもしれない。ただ、6月相場が仮に戻りに入っても、メインストリートを走る銘柄が入れ替わるケースも念頭に置きたい。個別では半導体関連でアドバンテスト<6857>、電力株では東京電力ホールディングス<9501>の下げが苛烈であり、これが何を意味しているのか読み解く時間も必要だ。
あすのスケジュールでは、4月の失業率、4月の有効求人倍率、4月の鉱工業生産指数(速報値)、4月の商業動態統計のほか、5月の都区部消費者物価指数(CPI)にマーケットの関心が高い。また、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札が予定。午後に4月の自動車輸出実績、4月の住宅着工統計が発表され、夜には5月の為替介入実績が財務省から開示される。海外では5月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)、5月の中国非製造業PMI、インドの1~3月期国内総生産(GDP)、5月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)のほか、4月の米個人所得・個人消費支出・PCEデフレータが注目されている。(銀)
出所:MINKABU PRESS