リソー教育 Research Memo(5):株式上場を維持しながらヒューリックグループとして事業拡大を目指す
■ヒューリックとの関係強化
1. ヒューリックによる公開買い付けと第三者割当増資の概要
リソー教育<4714>は2024年4月8日付で、資本業務提携先であったヒューリックによる公開買い付けに賛同する意見表明と、ヒューリックを割当予定先とする第三者割当増資を発表した。公開買付株数は39,447千株(1株当たり320円)、買付期間は同年4月9日~5月22日までを予定しており、その後に第三者割当増資(15,596千株、1株当たり218円)を実施する。最終的にヒューリックの持株比率は2024年2月期末の20.6%から51.0%に上昇し同社の親会社となり、同社は株式上場を維持しながら、ヒューリックグループとしてさらなる事業拡大を目指す。不動産事業を展開するヒューリックは成長戦略として新規事業領域の育成を掲げており、同社を中核会社として教育サービス事業を拡大していくことになる。
今回、完全子会社化しなかった理由としては、同社事業が子どもを有する世帯を顧客ターゲットとしており、認知獲得に対して株式上場を維持するメリットが大きいことや、人材採用の観点からも上場企業としての知名度や信用力を活用することで優秀な人材採用が可能となり、株式上場を維持することが企業価値向上に寄与すると判断したためだ。
ヒューリックとは2020年9月に資本業務提携を発表し、ヒューリックが所有・開発する不動産への新規出校や、ヒューリック及びコナミスポーツとの共同プロジェクトとなる教育特化ビル「こどもでぱーと」の展開を推進してきたが、今回の資本強化によって、既存事業拡大のための設備投資やDX投資、M&Aなどを積極的に行うことでさらなる成長を目指す。
増資により調達した資金は「こどもでぱーと」等の設備投資やDX投資、M&A資金等に活用
2. 調達資金の使途について
今回、第三者割当増資によって調達する資金(手取り額で3,323百万円)の主な使途は大きく5項目に分けられる。主には、新規事業となる「こどもでぱーと」の開設に伴う設備投資(新規教室開設に伴う敷金、教室設備・備品取得費、初期投資費用)で1,291百万円、2026年にヒューリックグループが開業する「MITAKE Link Park(渋谷)※」内に設立される創造文化教育施設(美術館、図書館等)の設備投資資金(敷金、内装工事、デザイン料、初期費用等)で710百万円、DX戦略推進費用(各グループの顧客データベース統合費用、顧客との接点となるアプリケーション開発、教室ネットワーク整備費用等)で697百万円、グループ各社における防犯カメラ設置工事費用(全教室)で200百万円、既存事業の強化・拡大に資する事業会社との戦略的M&A資金として425百万円を充当する予定となっている。なお、「こどもでぱーと」の設備投資資金については、2028年春までに開業が見込まれる10棟分(検討中含む)についての設備投資総額2,291百万円のうち、既に調達済みの1,000百万円を差し引いた額となっている。
※東京都と渋谷区が実施する「都市再生ステップアップ・プロジェクト(渋谷地区)渋谷一丁目地区共同開発事業」の開発事業者としてヒューリックが選定され、地下2階、地上14階建ての複合ビルの開発を進めている(敷地面積9,670平方メートル、延床面積50,000平方メートル)。事務所、店舗、賃貸住宅、創造文化教育施設、多目的ホール等が入る予定。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《AS》
提供:フィスコ