窪田朋一郎氏【再び遠ざかる4万円大台、強気相場は甦るのか】 <相場観特集>
―欧米株高でも上値の重さ目立つ、ここからの展望と戦略―
週明け13日の東京市場は日経平均株価が前週末終値を挟み方向感なくもみ合う展開となった。前週末の欧州株市場はドイツや英国の主要株価指数が連日最高値を更新したのをはじめ全面高に買われ、米国株市場でもNYダウが8連騰と上げ足が止まらず最高値が視界に入ってきた。対して日経平均はどうにも上値が重い状況が続いている。何が日本株の上値を押さえているのか、相場の分析と先読みに定評のある松井証券の窪田氏に話を聞いた。
●「当面は下値リスクに備える局面」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
東京市場は日経平均の戻りが鈍い状況が続いている。これは年初から3月にかけて急速に上値を追った反動が出ていることに加え、日銀の引き締め政策への方向転換を警戒するムードが拭えないためだ。政府・日銀当局はこれ以上の円安進行に強い懸念を抱いており、そのために植田和男日銀総裁は早晩追加利上げに踏み切る公算が大きいとマーケットはみている。実際、きょうは日銀の国債買いオペで、長期債の購入予定額を500億円減額したことが日銀のスタンス変化を示唆するものとして、買い手控え要因となった。早ければ次回6月中旬に行われる日銀金融政策決定会合で、先のマイナス金利解除に続いて追加利上げが行われる可能性も否定できず、その思惑が相場にネガティブに作用している。
また、金融政策に対する思惑とは別に企業のファンダメンタルズも現在の株式市場にとって重荷となっている。足もと佳境を迎えている決算発表だが、ある程度予測されたとはいえ今期については保守的な予想が相次いでいる。株価形成の要素となっている企業の一株利益(日経225ベース)は新年度入りとなった4月1日時点で2352円だったが、直近5月10日時点では2224円まで水準を切り下げた。この結果、4月1日時点と現在の日経平均を比較して株価水準は大きく切り下がっているにもかかわらず、PERはむしろ上昇している状態にある。これが、値ごろ感はあっても実需買いニーズが高まらない背景だ。
頼みの綱となっている米株市場の堅調も、足もとで強い米経済の先行き不透明感が生じており一筋縄ではいきそうもない。米国ではクレジットカードのローン残高が増加する一方で延滞率が高水準となっており、個人消費が今後落ち込む可能性は否定できず、そうなれば株式市場にも影響を与えるだろう。米株高によっていずれ東京市場も引っ張り上げられるという構図も、そうたやすく実現する話ではない。日経平均は米国株や日米の金利、あるいは為替動向に左右されるが、総合的にみて下値リスクを意識せざるを得ない。向こう1ヵ月のレンジは下値が3万6000円前後で上値は3万9000円程度を想定している。
物色対象としては金利上昇局面で買える銘柄として三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]などのメガバンクや第一生命ホールディングス <8750> [東証P]などの大手生保株。また、依然としてくすぶる中東リスクを背景に原油価格が再上昇するようなら、INPEX <1605> [東証P]のような資源エネルギー関連株にも目を配っておきたい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「グロース市場信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」など、これまでにない独自の投資指標を開発。また、投資メディア部長としてYouTubeチャンネルやオウンドメディア「マネーサテライト」を運営。
株探ニュース