エフ・コード Research Memo(2):CX向上SaaSとデジタルマーケティングで顧客のDXを推進
■会社概要
エフ・コード<9211>は「マーケティングテクノロジーで世界を豊かに」することをミッションに掲げ、デジタル上での「生活者」(世の中一般の不特定多数の人々を指す言葉として同社では同表現を用いている)の利便性を高めるCX※1(顧客体験)向上SaaS※2及び伴走型コンサルティングによるデジタルマーケティングサービスを提供する。単なるWebコンサルティングではなく、同社が保有する生活者目線に立った豊富なCXデータ基盤とSaaSツールを活用して、生活者が快適かつ効率的に商品・サービスと出会い、利用できるように事業者のDX※3戦略の設計・実行を支援することで差別化を図っている。
※1 CX:Customer Experienceの略。Webサイトや店舗体験など、企業から生活者が受け取る製品にまつわるすべての体験。
※2 SaaS:Software as a Serviceの略。「サース」または「サーズ」と呼び、ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インター ネット経由してユーザーが利用できるサービス。
※3 DX:Digital Transformationの略。企業のビジネスモデルや業務フローをデジタル化し非連続的な成長を図ること。
同社は、2006年にWebコンサルティング事業を提供する会社として創業し、デジタルコンサルティング、デジタル広告運用などの実績、経験を積み重ねながら、そこから得た知見やノウハウをSaaS型ソフトウェアとして昇華してきた。2013年以降は、エントリーフォーム最適化ツール「f-tra EFO※1」、Web接客ツール「f-tra CTA」、ブラウザプッシュ通知ツール「f-tra Push」など、エントリーフォーム入力事項やサイト内のチャットなどの反応といったユーザーとのコミュニケーション領域におけるマーケティングツールの開発に取り組んでいる。2018年に、それまで各ツールが提供してきたサービスを統合・強化したWeb接客ツール「CODE Marketing Cloud」を主力商品としてリリースした。また、これらのサービスから、EFOデータ、VOC※2データ、Web接客データ、サイト行動データなどユーザーの生の声であるCX領域のデータを蓄積し、業界別・課題別の知見・ノウハウとして参照可能なCXデータ基盤を構築してきた。さらに、同社のクライアントに対するソリューションを新たなフィードバックデータとして加え、累計では1,000社、アカウント数は3,000件を超えるユニークなCXデータ基盤として進化させてきた。このCXデータ基盤を活用し、生活者の目線をCXデータ解析により理解し、CXデータに基づいた実証ベースによって、業界別・課題別に事業者にとって“デジタル上での生活者との接点がどうあるべきか”というあるべきCXの全体観を整理・設計した上で、DXによって解決すべき課題とその優先順位を明確化し、個々のデジタル施策が戦略上一体となって効果を発揮するDX推進サービスを展開している。
※1 EFO:Entry Form Optimizationの略。Webサイトの申込サイトの入力フォームの入力完了率を高めるために、フォームを改善する施策のことを意味する。
※2 VOC:Voice of Customerの略。顧客から実際に寄せられる商品サービスや企業に対するフィードバックをまとめたデータを意味する。
企業のDXが進み、Webサイト、Facebook、X、Instagram、LINE、YouTubeなどのSNSにおいて生活者との情報接点が氾濫している現状において、CRMなどによる顧客管理の自動化、デジタル広告の自動・最適化などの個別のシステムやサービス、デジタル施策は、それらが機能する領域のみでの部分最適に陥りがちである。最終的に情報を受け取る生活者にとっては、一方的かつランダムに情報を受け取ることになり、かえって望むタイミングで望む情報と出会うことが難しくなる側面が生じている。同社は、この状況を生活者目線に立って打開するサービスを提供できるユニークな企業である。
2021年12月東京証券取引所(以下、東証)マザーズ市場(現 グロース市場)に上場し、その後「CODE Marketing Cloud」を中心とした既存事業の拡大に加えて、2024年1月までの2年間で、同社とシナジーのあるマーケティングSaaS事業とのM&Aを10件成約させ、顧客数は約10倍の2,616社、売上収益は約4倍の2,482百万円、営業利益も約4倍の651百万円と急成長を実現している。
2022年2月に(株)コミクスの「EFO CUBE」などの事業、同年9月にブルースクレイ・ジャパン(株)の「GORILLA EFO」事業を、事業譲渡により取得した。さらに、同年11月にはメディアリンク(株)のSaaS型Webチャットシステム「sinclo」事業を、同年12月にhachidori(株)のLINE活用型マーケティング・チャットボット「hachidori」事業及びSaaS型動画メッセージツール「recit」事業を、それぞれ事業譲渡により取得した。2023年は、同年1月にサブスクリプションファクトリー(株)が提供するWeb接客ツール「KaiU」事業を新設分割した(株)KaiUに100%出資して子会社化した上で、同年3月に同社を吸収合併した。続いて、同年5月に(株)Radixが運営するInstagramマーケティングSaaS「SAKIYOMI」事業を新設分割した(株)SAKIYOMIに100%出資して子会社化。同年8月には、デジタルマーケティング事業を運営するCRAFT(株)に80%出資して子会社化、(株)TEORYが提供する中堅・中小企業向けデジタルマーケティング事業を新設分割した(株)JITTに100%出資して子会社化、さらに、(株)マイクロウェーブが提供する「デジタルマーケティング」事業を新設分割した(株)マイクロウェーブクリエイティブに100%出資して子会社化した。2024年は、同年1月に機械学習を用いた高度なデータ分析・運用力を軸として、Web広告やSNS・SEO・LINE・メルマガ等施策全般の運用を改善し、クライアントのLTV※の最大化を支援するBINKSに85%出資し子会社化した。
※LTV:Life Time Valueの略。顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益を指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
《SO》
提供:フィスコ