窪田朋一郎氏【新年度入りの東京市場、一段の上値は期待できるか】(1) <相場観特集>
―週明けは朝高後に軟化、足もと不安定な地合いで思惑錯綜―
2024年度入りとなった1日の東京株式市場は日経平均株価が朝方買い優勢で始まったものの、その後は値を消す展開となり、4万円大台を割り込んだ。前週末は欧米株市場がグッドフライデーに伴う休場だったことで手掛かり材料に事欠く展開だったが、きょうの東京市場では目先機関投資家の益出し売りが観測されたほか、利益確定を優先する動きが目立った。外国為替市場では1ドル=151円台前半と円安水準での推移が続いているが、ドル・円相場の動きも横にらみに新年度入りした株式市場の値動きにマーケットの思惑が錯綜している。ここからの展望について、先読みに定評のある市場関係者2人に聞いた。
●「4月~5月は上値の重い展開を予想」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
きょうは朝方こそ高く始まったが、寄り天状態となりその後は大きく値を崩す展開となった。年金系資金など国内機関投資家とみられる益出し目的の売りが観測され、買い向かう動きは限定的で、一時日経平均は600円を超える下げで思いのほか深押しとなった。ただ、目先荒れた地合いとなっているが、今年1月の大発会もそうだったように、フシ目となる月替わりの初っ端に機関投資家が利益確定を優先させることで安く始まっても、そこが押し目提供場面となるケースは少なくない。今回の波乱含みの下げも、過度に心配する必要はないとみている。
もっとも、中期的な視点で4月、5月が漸次上値指向の相場となるとはみていない。米経済の強さに加え、原油市況や金市況などコモディティ価格が騰勢を強めるなか、米国では米連邦準備制度理事会(FRB)による年内利下げの回数が3回ではなく、2回となる可能性が意識され始めており、これが米株市場の上値を重くし、東京市場にも波及しそうだ。なお、米国で利下げ圧力が弱まれば、外国為替市場ではドル買い・円売りにつながり日本株にとってはポジティブだが、これも政府・日銀の介入思惑を背景に思うほど円安は進まないと考えている。したがって、向こう1ヵ月の日経平均のレンジは3万8000円~4万1000円のレンジでの弱含みもみ合いとみている。
ただし、こうした流れを変えるワイルドカードとなり得るのが、国内政局において足もとでにわかに浮上している6月解散説だ。定額減税の時期と合わせ6月に解散総選挙を行うことで、岸田文雄首相にすれば9月の自民党総裁選を前に地盤を固めるチャンスとなる。岸田政権の支持率は低いが、現在は野党が左前状態にあり、6月のタイミングであれば勝算があるとみているようだ。選挙モードとなれば、株式市場は上昇するパターンが多いことは過去の相場の歴史が証明している。
なお、物色対象としては、金市況の上昇を背景に住友金属鉱山 <5713> [東証P]や三菱マテリアル <5711> [東証P]に着目。また、原油市況高を追い風にENEOSホールディングス <5020> [東証P]などの石油株やINPEX <1605> [東証P]など資源開発関連株にも目を配りたい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「マザーズ信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」「アクティビスト追跡ツール」など、これまでにない独自の投資指標を開発。
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