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【特集】笹木和弘氏【新年度入りの東京市場、一段の上値は期待できるか】(2) <相場観特集>

笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)

―週明けは朝高後に軟化、足もと不安定な地合いで思惑錯綜―

 2024年度入りとなった1日の東京株式市場は日経平均株価が朝方買い優勢で始まったものの、その後は値を消す展開となり、4万円大台を割り込んだ。前週末は欧米株市場がグッドフライデーに伴う休場だったことで手掛かり材料に事欠く展開だったが、きょうの東京市場では目先機関投資家の益出し売りが観測されたほか、利益確定を優先する動きが目立った。外国為替市場では1ドル=151円台前半と円安水準での推移が続いているが、ドル・円相場の動きも横にらみに新年度入りした株式市場の値動きにマーケットの思惑が錯綜している。ここからの展望について、先読みに定評のある市場関係者2人に聞いた。

●「高値横ばい圏もやや弱含み推移か、「資産持ち会社」などに注目」

笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)

 この日の日経平均株価の下落要因には、国内機関投資家は期初の益出しで売りから入ったことがあるだろう。海外投資家もイースター休暇明けと四半期初が重なって利益確定売りから入りやすい局面かもしれない。

 海外では、先週末にはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が「利下げを急ぐ必要はない」と発言したほか、イスラエルが親イラン組織を標的としてシリアを空爆するなど地政学リスクが高まった。米国市場では、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)をS&P500株価指数で割った数値がITバブル時を上回るなど、特定少数銘柄の株価上昇の行き過ぎが意識されやすい状況となっている。更に、地政学リスクの上昇で金や原油などに投資資金が向かいやすい状態だ。

 その一方、日本国内では地価が上昇し、不動産を担保とした銀行融資の余力が高まり、おカネが回りやすい状況にある。不動産や銀行株だけではなく、賃金上昇で小売りや消費関連などに見直し余地が出ている。特に不動産や株価の上昇は、これまで有効活用せずに不動産や株式を保有し低PBRで放置されていた「資産持ち会社」を再評価する動きにつながる可能性もあるだろう。内需の回復も期待されるなか、日経平均株価に比べTOPIX優位の展開が予想される。

 こうしたなか、4月相場の日経平均株価のレンジは下値が3万7500円、上値が4万500円前後を予想している。3万9000円ラインを中心とする高値圏での横ばい相場が見込まれるが、どちらかというと月末に向けレンジの下値水準で滞留する時間が長くなるかもしれない。

 個別銘柄では、先に発表された公示地価で福岡県は沖縄県とともに高い上昇率を記録しており、この追い風を享受する福岡リート投資法人 <8968> [東証R]に期待している。また、賃上げはクレジットカード会社にとってもプラス要因となるだけに、オリエントコーポレーション <8585> [東証P]も再評価されそうだ。実物資産の見直しで高級ブランドバッグなどの人気が高まることも期待され、訪日外国人のインバウンド消費でも人気の中古品に強いコメ兵ホールディングス <2780> [東証S]にも注目したい。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ささき・かずひろ)
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家の傍ら投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・香港・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。

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