富士ソフト Research Memo(1):2023年12月期も増収増益
■要約
富士ソフト<9749>は、独立系大手IT(information technology)ソリューションベンダーである。報告セグメントは、SIシステムインテグレーション事業(システム構築とプロダクト・サービス)、ファシリティ事業、その他の3つからなる。主力のSI事業では組込系/制御系及び業務系ソフトウェア開発を軸に多彩なソリューションメニューを提供し、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコールセンター等を行っている。このほか、セグメントを横断する技術戦略として、2017年12月期から「AIS-CRM(アイスクリーム)※」領域での取り組みを推進している。
※ AI、IoT、Security、Cloud computing、Robot、Mobile&AutoMotiveのこと(頭文字を並べた同社の造語)。
1. 2023年12月期の業績概要
2023年12月期の連結業績は、売上高で前期比7.2%増の298,855百万円、営業利益で同13.2%増の20,684百万円、経常利益で同2.4%増の19,675百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同4.1%増の11,849百万円の増収増益となった。売上高は主力のシステム構築分野において、業務系ソフトウェアの開発案件、特に製造業・金融業を中心にインフラ構築・基幹系開発案件の受注が好調であったことに加え、組込/制御系システムウェアの半導体製造装置関連やデジタル家電機器関連、自動車関連におけるEV・先進分野が好調に推移した。アウトソーシング分野は前期比減収となったものの、プロダクト・サービスは他社ライセンス販売、自社プロダクトともに堅調で増収となった。経常利益は上場子会社4社の株式公開買付けに係るアドバイザリー費用の影響等で前期比微増に留まったものの、営業利益は増収及び業務系ソフトウェアの生産性改善により2ケタ増益を確保した。
2. 2024年12月期の業績見通し
2024年12月期の連結業績予想は、売上高が前期比5.4%増の315,000百万円、営業利益が同6.4%増の22,000百万円、経常利益が同10.8%増の21,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同77.2%増の21,000百万円と、2013年に12月期決算へ移行してから実質的に11期連続での増収及び営業増益を見込んでいる。事業拡大や競争力強化を目的とする顧客のDXに対する取り組みの広がりやシステム投資意欲は旺盛で、同社のIoTや「AIS-CRM」を核とする事業サービスの提供力は高いことから、主力のシステム構築分野での受注獲得は引き続き順調に推移するものと見ている。なお、本予想には同社が不動産流動化の対象レベル「A判定」(流動化にあたっての障害がなく、最速での対応が可能なもの)物件8件の売却益59億円(税後)を含んでいるが、それ以外の売却については期初時点では含めていない。
3. 新中期経営計画
同社は前中期経営計画を1年前倒しで達成したことから、2024年2月に、新たな中期経営計画「中期経営計画 2028」を公表した。将来ビジョン「IT×OT分野のシステム/ソフト&サービスを提供するリーディングカンパニー」となるべく、2024年12月期から2028年12月期までを成長継続と収益力重視による企業価値向上を目指す期間と位置付けている。企業価値向上に向けての具体策は、前中期経営計画期間に設置された「企業価値向上委員会」で議論され、検証された対策案を継続する形で立案された。
経営数値目標値としては、2028年12月期に、売上高4,350億円、営業利益450億円、親会社株主に帰属する当期純利益320億円、ROE20.0%以上、1株当たり営業キャッシュ・フロー600円以上としている。
■Key Points
・リーマン・ショック後の業績低迷期を経て、財務体質の強化と成長ポテンシャルの増強を両立
・2023年12月期も増収増益、2024年12月期は売上高3,150億円、営業利益220億円を計画
・新たに「中期経営計画 2028」を公表、2028年12月期に売上高4,350億円、営業利益450億円を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 村瀬智一)
《SO》
提供:フィスコ